ニュース
【新型コロナ】肥満が感染リスクを1.5倍に上昇 死亡リスクも1.5倍 肥満でワクチンが効かない場合も?
2020年09月15日

肥満は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクを高めるだけでなく、ワクチンの効果も低減させる可能性があるという報告が発表された。
肥満症の人は、COVID-19による入院のリスクが2倍以上に、死亡リスクが1.5倍に上昇するという。
肥満症の人は、COVID-19による入院のリスクが2倍以上に、死亡リスクが1.5倍に上昇するという。
肥満がコロナの感染と重症化のリスクを上昇
米国のノースカロライナ大学の研究グループは、今年1~6月に実施された75件の研究データを検証。関連した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者は合わせて約40万人となっている。
その結果、BMI(体格数)が30以上の肥満の人は、そうでない人に比べ、COVID-19の罹患リスクが46%高いことが判明した。
さらに、入院が必要となるリスクは113%、集中治療室(ICU)で治療を受けるリスクは74%、ウイルスによる死亡リスクは48%、それぞれ上昇した。
なぜ肥満が感染症を悪化させるのか?
「肥満はCOVID-19が重症化するリスク要因であることが明らかになりました」と、米ノースカロライナ大学栄養学部のバリー ポプキン教授は言う。
「2型糖尿病や高血圧、心臓病、慢性腎臓病(CKD)、肝臓病といった基礎疾患は肥満と関連が深く、それぞれがCOVID-19を悪化させる要因と考えられます」としている。
肥満の人の多くで、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性がみられる。インスリン抵抗性や炎症などの代謝性の疾患は、感染症への耐性を低下させ、体がウイルスと戦うのを難しくしてしまう。
また、肥満の人では血糖値が慢性的に高くなっていることも多く、これが免疫細胞の機能を損なうことがある。さらに、肥満は心臓や呼吸器、腎臓などの臓器への負担も重くする。
「肥満のある人は、食事や運動などの生活スタイルを見直し、医師や栄養士とも相談し、肥満の改善に取り組むべきです」と、ポプキン教授は強調する。
肥満によりワクチン接種の効果が薄れるおそれが
「肥満のある人が、睡眠時無呼吸による肺高血圧を起こしたり、病院で気道管理のために気管挿管を行う必要がある場合がありますが、肥満の人ではこれが難しくなるケースもあります」と、ノースカロライナ公衆衛生大学院栄養学部のメリンダ ベック教授は言う。
さらにベック教授は、肥満症の人はワクチンを接種を受けても、その予防効果が薄れる可能性があると懸念している。
ベック教授のこれまでの研究で、インフルエンザワクチンは、BMIが30以上の人では効果が減少することが示された。新型コロナウイルスのワクチンでも同じことが起こるおそれがある。
「肥満によりワクチンがまったく効かなくなることはなく、ある程度の免疫力は期待できますが、ワクチン検査では肥満を重要な因子として考慮する必要があります」と、ベック教授は指摘する。
ロックダウンや外出自粛により不健康な食事が増えた

いまこそ食事指導が求められている
また、感染対策のために身体的距離(フィジカル ディスタンス)を確保し、人々は社会的な相互作用の能力に制限をかけることを強いられている。リモートワークが増えたことで運動不足になった人も少なくない。
これが不安を増長させ、孤独と孤立を増やす。「こうした負の感情は、外出自粛と合わさって、私たちの食事行動に影響し、食べ過ぎに追い込みやすいのです。これに運動不足が組み合わさることで、さらに肥満になりやすくなります」と、ポプキン教授は言う。
肥満症は世界中で患者が増えており、世界の人口の20%が過体重あるいは肥満症と推定されている。米疾病対策センター(CDC)は、2017~18年に米国の成人の42%が肥満に相当すると報告している。
「COVID-19の世界的な拡大に対策するために、健康的な食事を推進するために、健康的な食品の流通を増やし、高カロリーであったり栄養バランの良くない不健康な食品に課税するなどの対策が必要です」と、ポプキン教授は言う。
「COVID-19の罹患と死亡のリスクを抑制するためにも、国民が健康的な食事を摂り、運動不足にならないようにする政策が、重要な役割を果たすことになるでしょう」としている。
Obesity linked with higher risk for COVID-19 complications(ノースカロライナ大学 2020年8月26日)Individuals with obesity and COVID‐19: A global perspective on the epidemiology and biological relationships(Obesity Reviews 2020年8月26日)
Global Food Research Program(ノースカロライナ大学)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ