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睡眠が足りていないと「人生を楽しめなくなる」との研究結果 睡眠不足でストレス反応が悪化
2020年10月27日
睡眠不足はさまざまな健康問題を引き起こすほか、ストレス反応が悪化し、「人生で感じられる喜び」が損なわれることが、新たな研究で示された。
逆に、十分な睡眠をとれていると、ポジティブな出来事に、より良く反応できるようになる
睡眠不足によりストレスに対する反応が強くなる
カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究グループは、33歳~84歳の成人男女1,982人を対象に、睡眠時間が日中の行動にどのように影響するかを調査した。
その結果、睡眠時間が短いと、ストレスに対する反応が強くなり、ポジティブな感情が大きく失われることが明らかになった。
逆に、十分な睡眠をとれていると、ポジティブな出来事とネガティブな出来事に、より良く反応できるようになることも示された。
研究は、ブリティッシュコロンビア大学心理学部のナンシー シン氏らによるものだ。
睡眠が十分だとポジティブな出来事から受ける感情が増大
睡眠時間が長くなることで、ストレスの多い出来事によるネガティブな影響が軽減され、ポジティブな出来事から受ける感情が増大するという。
「ハグしあったり、自然の中で時間を過ごすなど、前向きなことを経験した人は、その日は幸福を感じることが多いです」と、シン氏は言う。
「しかし、睡眠時間が通常より少ない場合は、日中の出来事から前向きな感情を引き出すことは難しくなることが分かりました」。
日常生活では、社会的緊張、仕事や家族でのストレス、争い、差別など、ストレスをもたらす多くの出来事が起こる。いつもより睡眠時間が少ないときは、これらのストレスの多い出来事により過敏に反応し、ポジティブな感情を失いやすくなるという。
ストレスへの対処が上手くいかないと、健康面に重大な影響があらわれる。シン氏によると、ストレスに直面しポジティブな感情を維持できなくなると、体内の炎症反応やうつ病などが起こりやすくなる。
「糖尿病などの慢性的な疾患のある人は、睡眠からさらに大きな利益を得られる可能性があります。十分な睡眠をとることで、翌日のストレスの多い状況に直面したときの反応が良くなることが示されています」と、シンは言う。
睡眠不足は高血圧・肥満・糖尿病のリスクを高める
研究グループは、米国の日常生活と健康に関する全国調査(National Study of Daily Experiences II)に参加した1,982人(女性が57%)のデータから、自己申告の記録を解析した。
参加者の睡眠時間と、翌日のネガティブな出来事とポジティブな出来事に対する反応を調べた。8日間にわたる毎日の電話インタビューにより、日常の経験と前夜の睡眠時間について聞き出した。
「ガイドラインでは一晩に7時間以上の睡眠をとることが推奨されていますが、とくに先進国で多くの成人がこの基準を満たしていません。新型コロナウイルス感染症の拡大により、睡眠時間はさらに減少している傾向があります」、とシン氏は言う。
「多くの研究により、睡眠不足は精神障害、高血圧や肥満、2型糖尿病などの慢性的な疾患、心臓病、がん、早死のリスクを高めることが示されています」、とシン氏は強調する。
「私の研究では、睡眠時間の毎日のわずかな変動ですら、日中での出来事への反応に影響することが示されています。意識して睡眠を改善する対策をすることが必要です」。
睡眠を改善する5つの方法
ピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると睡眠を改善しやすい。
■ 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。
■ 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。
■ 適度な運動が良い睡眠をもたらす
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、肥満や2型糖尿病の予防にもつながる。
■ 入浴して深部体温を上げる
寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
■ 光で体内時計を整える
朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。
スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するのでとくに影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。 New research finds people react better to both negative and positive events with more sleep(ブリティッシュコロンビア大学 2020年9月15日)
Sleep duration and affective reactivity to stressors and positive events in daily life(Health Psychology 2020年9月7日)
The Social Jet Lag Study(ピッツバーグ大学)
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