ニュース

新しい高齢者就労の在り方や現状について報告―公衆衛生学会総会2020レポート⑴

 第79回日本公衆衛生学会総会が「健康・医療・介護の未来づくり:Social Joint Venture (社会的協働)」をテーマに10月20~22日、オンラインで開催された。
 このうち21日には「地域包括ケア時代における高齢者就労の現状と課題」と題したシンポジウムが開かれ、新しい高齢者就労の在り方や現状について事例報告や意見交換などが行われた。

「高齢期の就労」が広く受け入れられるモデルの確立が必要

 高齢者の就労的活動を支援する取り組みは、地域包括ケアシステム構築の一環として増加傾向にある。高齢者就労の機会提供もシルバー人材センターだけではなく、通いの場の応用など、さまざまな受け皿、担い手によって行われるようになってきた。

 そこで今回のシンポジウム「地域包括ケア時代における高齢者就労の現状と課題」では、さまざまな立場で高齢者就労の研究や支援を担う4人のシンポジストが登壇。座長は東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典さんと、(一財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構/東京都健康長寿医療センターの服部真治さんが務めた。

 まず、東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史さんが「高齢期の就労の効果」として、高齢者本人への健康影響と周囲への恩恵の好循環について報告。既存の研究結果から高齢期の就労は健康に有益との可能性が見受けられる、としながらも、さらに包括的なエビデンスを構築し、望ましい働き方の提案につなげていく必要性を説いた。

 加えて、「高齢期の就労が広く受け入れられるモデルが必要」として、福祉領域における介護助手を例に挙げ、その効果を説明した。
高齢期を豊かに過ごすには健康推進と社会参加・雇用の促進が不可欠

 続いて、京都橘大学健康科学部の小川敬之さんが「なにが高齢者を元気にするのか―ものづくりの取り組みから-」をテーマに解説。高齢化・過疎化が進む集落の公民館で、高齢者が取り組みやすい作業で有償の仕事ができる仕組みを構築し、健康維持や生きがいづくりにつながっている事例が紹介された。

 また京都市の高齢者福祉施設西院の河本歩美さんが、デイサービスにおける就労的活動「Sitteプロジェクト」について紹介。デイサービス利用者が「働く」意識をもってチームを組み、カッティングボードの製作に取り組んでいる様子などについて伝えた。

 その一方で、就労的活動がどこの施設や地域でも実施可能となる仕組みづくりや、地域住民の活動を有償化するための財源確保、障害者就労支援事業やシルバー人材センターとの連携や棲(す)み分けなどが課題であるとの提言も出された。

 最後に、行政の立場から高齢者就労をどう支援しているかについて、京都市保健福祉局健康長寿のまち・京都推進室の北川博巳さんが「高齢者就労を支援する政策的意義と課題」として話した。

 北川さんは、希望を持って高齢期を豊かに過ごすためには健康づくりの推進と社会参加・雇用の促進が不可欠であるとして、「高齢者が活躍できる場の創出に取り組みと人生100年時代にふさわしい新たな高齢者像発信に努めていく」と、京都市の取り組み姿勢を伝えた。

 質疑応答のあと、最後は「高齢者の就労支援についてはまだまだこれからで、今後も全国の関係者と議論を進めていきたい」と締めくくられた。

[yoshioka]
side_メルマガバナー

「産業保健」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶