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新しい高齢者就労の在り方や現状について報告―公衆衛生学会総会2020レポート⑴
2020年10月27日

「高齢期の就労」が広く受け入れられるモデルの確立が必要
高齢者の就労的活動を支援する取り組みは、地域包括ケアシステム構築の一環として増加傾向にある。高齢者就労の機会提供もシルバー人材センターだけではなく、通いの場の応用など、さまざまな受け皿、担い手によって行われるようになってきた。
そこで今回のシンポジウム「地域包括ケア時代における高齢者就労の現状と課題」では、さまざまな立場で高齢者就労の研究や支援を担う4人のシンポジストが登壇。座長は東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典さんと、(一財)医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構/東京都健康長寿医療センターの服部真治さんが務めた。
まず、東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史さんが「高齢期の就労の効果」として、高齢者本人への健康影響と周囲への恩恵の好循環について報告。既存の研究結果から高齢期の就労は健康に有益との可能性が見受けられる、としながらも、さらに包括的なエビデンスを構築し、望ましい働き方の提案につなげていく必要性を説いた。
加えて、「高齢期の就労が広く受け入れられるモデルが必要」として、福祉領域における介護助手を例に挙げ、その効果を説明した。
高齢期を豊かに過ごすには健康推進と社会参加・雇用の促進が不可欠
続いて、京都橘大学健康科学部の小川敬之さんが「なにが高齢者を元気にするのか―ものづくりの取り組みから-」をテーマに解説。高齢化・過疎化が進む集落の公民館で、高齢者が取り組みやすい作業で有償の仕事ができる仕組みを構築し、健康維持や生きがいづくりにつながっている事例が紹介された。
また京都市の高齢者福祉施設西院の河本歩美さんが、デイサービスにおける就労的活動「Sitteプロジェクト」について紹介。デイサービス利用者が「働く」意識をもってチームを組み、カッティングボードの製作に取り組んでいる様子などについて伝えた。
その一方で、就労的活動がどこの施設や地域でも実施可能となる仕組みづくりや、地域住民の活動を有償化するための財源確保、障害者就労支援事業やシルバー人材センターとの連携や棲(す)み分けなどが課題であるとの提言も出された。

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