ニュース

高齢者の心疾患患者の腎機能を維持するために 身体活動量を高めて心不全悪化による再入院を予防

 東北大学は、外来通院型の包括的な心臓リハビリテーションプログラムに参加することや、身体活動量を高く保つことが、75歳以上の後期高齢心疾患患者の腎機能維持に寄与する可能性があることを発表した。
 外来心臓リハビリテーションは、腎機能を保護するためにも、臨床的に有効な1つの治療介入となりうる。心不全による再入院の予防や治療経過の改善に寄与する可能性があるとしている。
心疾患患者が慢性腎臓病を合併すると心血管病が重症化
 75歳以上の後期高齢者は併存疾患をもつものが多く、中でも心疾患に慢性腎臓病(CKD)を合併する患者の増大は医療現場で大きな問題となっている。

 心臓と腎臓は相互に関連しあい、一方の障害が他の障害を引き起こすため、心疾患患者で、腎機能の低下を早期から抑制するための治療法の確立は重要な課題となっている。

 東北大学は、外来通院型の包括的な心臓リハビリテーションプログラムに参加することや、身体活動量を高く保つことが、75歳以上の後期高齢心疾患患者の腎機能維持に寄与する可能性があると発表した。

 後期高齢心疾患患者の腎機能保護の方策として、外来心臓リハビリテーションは臨床的に有効な1つの治療介入となり得、再入院予防や治療後経過の改善に寄与すると期待されるとしている。

 研究は、同大大学院医学系研究科内部障害学分野の笹本雄一朗氏、上月正博教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Circulation Journal」電子版に掲載された。

外来心臓リハビリテーションへの参加は後期高齢心疾患患者の腎機能維持に寄与する可能性がある
出典:東北大学、2021年
心臓と腎臓の双方の機能低下に運動療法で早期から治療介入
 日本における75歳以上の後期高齢者の人口割合は今後さらに拡大していき、後期高齢心疾患患者が慢性腎臓病(CKD)を合併すると、心血管病が重症化しやすくなり、とくに心不全が悪化し入退院を繰り返すことが問題となっている。

 そのため、心臓と腎臓の双方の機能低下が引き起こす悪循環に対して、早期から治療介入を行なうことが重要な課題となっている。

 近年、外来の心臓リハビリテーションプログラムに参加した心疾患患者で、自転車エルゴメーターなどを用いた運動療法を実施することで、心臓機能のみならず腎機能が維持・改善することが報告された。さらに、急性心筋梗塞患者で、退院後の身体活動量を高く保つと、腎機能の低下が抑制されることも報告されている。

 運動療法や身体活動量を高めることに、腎機能に対する保護効果があると注目されている。しかし、これまでに75歳以上の後期高齢心疾患患者に着目した検証はなく、運動療法や身体活動量に関連する効果は不明だった。

関連情報
外来心臓リハビリ実施で腎機能維持すると、心不全増悪にともなう再入院が減少
 そこで研究グループは、心疾患で入院し、入院中の心臓リハビリテーションを実施した75歳以上の後期高齢心疾患患者を対象に調査を行った。

 外来心臓リハビリテーション(監視型運動療法、在宅運動指導、栄養指導、疾病管理指導)に参加したグループ(介入群)と参加しなかったグループ(コントロール群)に分け、退院時と退院後3か月時の心臓機能および腎機能を含む血液・尿検査、身体・精神機能検査を行った。

 退院後3か月間の身体活動量を評価し、外来心臓リハビリテーションの効果を検証した。また、腎機能の指標には食事や筋肉量などの影響を受けにくい血清のシスタチンCから算出した推定糸球体濾過量(eGFR)を評価し、身体活動量の指標には、3軸加速度計内蔵の歩数計により記録した1日歩数を評価した。

 その結果、介入群では身体活動量が高く保たれ、腎機能は維持されていることが分かった。また、心不全増悪にともなう再入院が少なくなるという結果になった。

 今回の研究で、75歳以上の後期高齢心疾患患者が外来心臓リハビリテーションに参加することや、身体活動量を高く保つことが、腎機能の維持に寄与する可能性が示された。

 「腎機能を保護するために外来心臓リハビリテーションが臨床的に有効な1つの治療介入となりえ、心不全による再入院の予防や治療経過の改善に寄与する可能性があると期待されます」と、研究グループは述べている。

東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
Outpatient Cardiac Rehabilitation Suppresses Deterioration Of Renal Function In Patients ≥ 75 Years Old With Heart Disease(Circulation Journal 2021年2月4日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月18日
人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月18日
健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月09日
子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
2024年04月08日
【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
2024年03月18日
メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
2024年03月11日
肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
2024年03月05日
【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
2024年02月26日
近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶