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不妊治療を受ける女性へのメンタルヘルス支援が必要 54%に軽度以上の抑うつ症状が 成育医療センター
2021年04月19日
不妊治療を受ける女性の54%に軽度以上の抑うつ症状
とくに20歳代でメンタルヘルスの不調などが顕著
とくに20歳代でメンタルヘルスの不調などが顕著
出典:国立成育医療研究センター、2021年
初期の不妊治療を受けている女性の半数に、軽度以上の抑うつ症状がみられることが、国立成育医療研究センターなどの調査で明らかになった。
日本でも高度不妊治療を受ける女性の心の健康状態が悪化している可能性がある。
「不妊治療の保険適用など経済的側面についての議論が進んでいますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても支援が必要です」と、研究者は述べている。
日本でも高度不妊治療を受ける女性の心の健康状態が悪化している可能性がある。
「不妊治療の保険適用など経済的側面についての議論が進んでいますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても支援が必要です」と、研究者は述べている。
不妊治療をこれからはじめる・はじめた女性500人を追跡して調査
日本で少子化傾向が続いている一方で、子供を望んでいるにも関わらず、なかなか妊娠にいたらず不妊治療を受けるカップルが一定数いる。
日本産科婦人科学会によると、子供の16人に1人が高度不妊治療で生まれている。年間約45万件(周期)の治療が行われており、この数は世界一だ。つまり、日本は世界有数の不妊治療大国だといえる。
海外先進国では、不妊治療患者を対象とした調査が実施されており、不妊治療は、患者(主に女性)の心身に大きな負担をもたらすことが明らかになっている。しかし日本では、不妊治療が盛んに実施されているにも関わらず、大規模な調査が実施されていない。
そこで、国立成育医療研究センター社会医学研究部などでは、4つの医療機関およびインターネットを通じて、不妊治療をはじめる、もしくははじめた女性約500人をリクルートし、約1年間の追跡調査を実施した。
今回の研究では、この追跡調査の初回のデータを用いて、高度不妊治療開始初期の女性のメンタルヘルスの状況を明らかにした。
研究は、国立成育医療研究センター研究所社会医学研究部の加藤承彦室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。
不妊治療を受ける女性の54%に軽度以上の抑うつ症状が
研究グループは、体外受精などの高度不妊治療を受ける女性約500人を対象とした疫学調査のデータを用いて、治療開始初期(主にこれから治療を開始する女性、採卵2回までの女性)の調査参加者のメンタルヘルスやQOL(生活の質)の状況を分析した。
その結果、「軽度以上の抑うつ症状あり」と判定された参加者の割合は54%だった。また、不安が高まっている状況と判定された割合も39%と高い割合を示した。
とくに、20歳代の参加者で、メンタルヘルスの不調やQOL低下の傾向が顕著だった。抑うつ症状の分布では、「軽度以上の抑うつ症状あり」が78%で、参加者全員での割合の54%に比べても高かった。
健康関連QOL尺度(SF-12)を用いたQOLの評価でも、国民標準値である50と比較して、社会生活機能は41.7、日常役割機能(精神)は40.4、心の健康は42.6と低下している傾向がみられた。
「現在、不妊治療での経済的側面への支援(保険適用)に関する議論が進んでいますが、不妊治療を受ける女性のメンタルヘルスに関しても支援が必要であることが示唆されました」と、研究者は述べている。
研究グループは現在、初回調査の自由記載欄のコメントを用いて、どのような要因が不妊治療のストレスに寄与しているのかを分析している。
また、今回の調査は、治療開始初期の女性を対象としたものだが、今後の追跡調査では、治療期間が長期化した場合のメンタルヘルスやQOLの変化を分析する予定。
海外の研究では、メンタルヘルスの不調は不妊治療の中止や終了と関連するとの知見が示されている。追跡調査のデータの蓄積を待って、メンタルヘルスと妊娠成立や治療の中止などとの関連も分析していく予定としている。
国立成育医療研究センター研究所社会医学研究部Depressive symptoms, anxiety, and quality of life among Japanese women at initiation of Assisted Reproductive Technology treatment(Scientific Reports 2021年4月6日)
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