ニュース
高齢者の脳の老化予防に効果的なのはウォーキングなど「有酸素運動」 記憶力が低下する前に運動を始めることが大切
2021年06月28日

名古屋大学は、高齢者の認知機能の低下を予防するために、どのような運動が効果的かを明らかにしたと発表した。
さまざまな運動の要素のうち、高齢者の記憶力の向上に有効だったのは、ウォーキングなどの有酸素運動だった。
研究成果は、認知症を予防するための効果的な運動介入プログラムの作成に役立つものだ。
さまざまな運動の要素のうち、高齢者の記憶力の向上に有効だったのは、ウォーキングなどの有酸素運動だった。
研究成果は、認知症を予防するための効果的な運動介入プログラムの作成に役立つものだ。
脳の老化を防ぐためにどんな運動が効果的か?
運動や身体活動を習慣的に行うことが、認知症や認知機能の低下の予防に効果的であることが、多くの研究で分かっている。
高齢者の認知機能と身体機能を向上するのに有効な運動として、ウォーキングなどの「有酸素運動」と、筋トレなどの「レジスタンストレーニング」が挙げられることが多い。
しかし、どのような運動をすると、認知症や認知機能の低下を防ぐ効果を多く得られるかは十分には分かっていない。
そこで研究グループは、地域に在住する高齢者を対象にランダム化比較試験を行い、有酸素運動・レジスタンストレーニング・両方を組み合わせたプログラムを実施し、認知機能の向上効果を比較した。
その結果、有酸素運動を行った群で、記憶力を反映する「遅延再生課題成績」が上昇することが分かった。レジスタンストレーニングを行った群・両方を組み合わせたプログラムを行った群では、こうした効果はみられなかった。また、この効果は、もともと記憶力が低下していた群ではみられなかった。
研究は、名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学分野の葛谷雅文教授(未来社会創造機構併任)、梅垣宏行准教授、未来社会創造機構の牧野多恵子招へい教員(現・星城大学准教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Alzheimer's Disease」に掲載された。
研究は、名古屋大学COI「人がつながる"移動"イノベーション拠点~高齢者が元気になるモビリティ社会~」の一部として実施されたもの。
愛知県豊田市に住む高齢者415人を対象に試験を実施
高齢化の進展にともない、認知症有病者のさらなる増加が予想されており、認知症予防の戦略を確立することが喫緊の課題となっている。
現状では、認知症の原因疾患であるアルツハイマー病や脳血管疾患に対する根治療法は確立されていない。そのため、認知症発症を抑制あるいは遅延させるために、薬物療法以外の方法も開発することが重要になっている。
運動や身体活動に、認知症や認知機能の低下を予防する効果があることが分かっているが、その効果を運動要素によって比較した研究はほとんどなく、どのような種類・内容の運動プログラムが有効であるかは明らかになっていない。
そこで研究グループは、これまでに研究報告の多かった「有酸素運動」と「レジスタンストレーニング」に着目。有酸素運動、レジスタンストレーニング、両者を組み合わせたプログラムの効果の違いについてランダム化比較試験により検証した。
対象となったのは、愛知県豊田市に住む65~85歳の高齢者。認知症予防のための介入の必要性が高い集団として「認知機能低下に関して主観的な訴えがある高齢者」を対象とするため、自記式アンケートに答えてもらい、「基本チェックリスト」を作成した。
介入対象とした高齢者415人を、(1)有酸素運動群、(2)レジスタンストレーニング群、(3)有酸素+レジスタンス群、(4)コントロール群にランダムに割り付けた。
(1)~(3)の対象者には、1回60分/週2回の別プログラムの運動教室に半年間(26週間)通ってもらった。認知機能や身体機能などについて、教室開始前の事前調査、教室終了後(6ヵ月後)の事後調査、さらに6ヵ月の観察期間後のフォローアップ調査で、運動の効果を測定した。
1回60分・週2回の有酸素運動を行うと記憶力は向上
その結果、有酸素運動を行った群で、コントロール群と比べて、記憶力を反映する「遅延再生課題成績」の有意な上昇を認めた。
レジスタンストレーニングを行った群、両方を組み合わせたプログラムを行った群では、こうした効果はみられなかった。また、この効果はもともと記憶力低下を有していた群ではみられなかった。
これらの結果から、認知機能の低下を予防するために、有酸素運動が効果的であり、また、認知機能が低下しはじめる前から有酸素運動に取り組むことが重要であることが示された。
「研究結果をもとに、認知症予防に効果的な運動介入プログラムを提案し、介護予防における運動指導の指針を作成することを目指しています」と、研究グループは述べている。

出典:名古屋大学、2021年
人がつながる"移動"イノベーション拠点~高齢者が元気になるモビリティ社会~(名古屋大学)名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学分野
名古屋大学未来社会創造機構
Effects of aerobic, resistance, or combined exercise training among older adults with subjective memory complaints: a randomized controlled trial(Journal of Alzheimer's Disease 2021年5月29日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」