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血液数滴でアルツハイマー型認知症を早期発見 ノーベル賞技術を応用した世界初の検査機 患者負担が小さくコストも安い
2021年07月06日

島津製作所は、わずかな血液からアルツハイマー病変(アミロイド蓄積)を検出し、アルツハイマー型認知症の進行度を判定できる検査機を完成させ、販売を開始した。
血液に含まれるバイオマーカーでアルツハイマー病の進行度を測れる装置は世界初という。数滴の血液で済むため、患者の負担が小さく、コストも安く済む。
2002年にノーベル化学賞を受賞した同社の田中耕一エグゼクティブ・リサーチフェローも研究に参加し、同賞の受賞理由となった技術が応用されている。
血液に含まれるバイオマーカーでアルツハイマー病の進行度を測れる装置は世界初という。数滴の血液で済むため、患者の負担が小さく、コストも安く済む。
2002年にノーベル化学賞を受賞した同社の田中耕一エグゼクティブ・リサーチフェローも研究に参加し、同賞の受賞理由となった技術が応用されている。
微量のアミロイドβに相関するペプチドを検出する技術を開発
数滴の血液でアルツハイマー型認知症
の進行度を判定する検査機
の進行度を判定する検査機

提供:島津製作所、2021年
ノーベル賞受賞の分析手法と高性能な質量分析技術を導入
研究グループは実用化に向けた研究を重ねて、検査装置「血中アミロイドペプチド測定システム Amyloid MS CL」(アミロイドMS CL)を完成させ、昨年12月に医療機器の承認を受け、今年6月に販売開始した。
この装置には、2002年にノーベル化学賞を受賞した同社の田中耕一氏が開発した技術が応用されている。
この「MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)」は、試料のタンパク質にコバルトとグリセリンの混合物を混ぜ、そこにレーザーを当ててイオン化させると、高分子のタンパク質も質量分析できるというもの。
従来は、タンパク質などを高温で熱すると分解してしまうので、レーザー光を効率良く吸収する化合物のみにしか適用できなかった。この手法により、このレーザー光を吸収しやすい化合物(マトリックス)の中に微量の他の化合物(試料)を加え、試料の気化が効率良く起こるようになり、質量分析により測定できるようになる。
このMALDIをイオン源とする高性能な質量分析技術により、22種類のアミロイドβ関連ペプチドを分離して、測定することができるようになった。22種類には、これまで血液中で確認されなかった新たな8種類のペプチドも含まれる。
血液採取から解析までのフロー

提供:島津製作所、2021年
早期のアミロイド陽性者のスクリーニングに有用
アルツハイマー病は、現状では進行を遅らせたり、症状進行にともなう不安などを抑えたりする対症療法が中心で、早期発見して治療をすることが重要と考えられている。
この検出法は、アルツハイマー型認知症の治療薬や予防法の開発に必要な早期のアミロイド陽性者のスクリーニングに有用で、将来的には治療方針の決定のための疾患の鑑別、高齢者検診に役立てることが期待されている。
なお、アミロイド陽性者のスクリーニングは、血中アミロイドβの相対値と、PETや脳脊髄液検出法でとらえた脳内アミロイドβ蓄積状態とのあいだに相関関係があることにもとづいた血液バイオマーカーを利用した評価手段だが、現状ではアルツハイマー病などの認知症の診断目的には使用できないとしている。
アミロイドMS―血液検査によるアルツハイマー病早期検出を目指した分析法―(島津製作所)
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