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「ジェンダーギャップ」の解消に挑戦 男女の格差は誰にとってもメリットなし 働き方にも変化が

 男女平等や女性の社会進出が国際的にますます重要視されており、日本では女性の活躍を推進することが課題となり、働き方にも変化が求められている。

 日本でも、ジェンダー不平の解消のためにさまざまな施策が講じられているが、十分な効果を得られていない現状が浮き彫りになった。

ジェンダーギャップ 日本は先進国で最低の120位

出典:内閣府、2021年
 「ジェンダーギャップ」とは、男女の違いにより生じるさまざまな格差のこと。世界経済フォーラム(WEF)が発表した、世界各国の男女平等の度合いをランキングした「ジェンダーギャップ指数2021」によると、日本は156ヵ国中120位と、先進7ヵ国(G7)では最下位となり、依然として男女のあいだの格差が大きいことが示された。

 G7では、ドイツが11位でトップ。フランスは16位、英国は23位、カナダは24位、米国は30位、イタリアは63位と続き、100位圏内に食い込めなかったのは日本だけだった。

 日本は、とくに「経済」と「政治」での順位が低く、経済の順位は117位、政治の順位は147位となっている。各国がジェンダー平等に向けた努力を加速しているなかで、日本は遅れをとっている。

 経済分野では、管理職の女性の割合が低いこと、女性の72%が労働力になっている一方で、パートタイムの職に就いている女性の割合は男性のほぼ2倍であり、女性の平均所得は男性より44%低いことなどが指摘されている。

日本の女性はハラスメントを受けやすい環境に置かれている

 求人検索サイトなどを運営するIndeed Japanが、日本・フィンランド・米国で就業中の20~40代の男女計計900人を対象に行った調査によると、仕事を「安定して生活するための手段」として捉える割合は3ヵ国とも高いが、日本人女性がとくにその傾向が強かった。

 また男性では、仕事を「日常を豊かにする自己成長の機会」と捉える人の割合が非常に低かった。日本人は、仕事は生計を立てるための手段であると捉えている人が多く、その他の価値観を見出している人の割合が低いという特徴がみられるという。

 さらに、「働く際に自身の性別が不利だと感じた」という回答は、3ヵ国とも女性の方が男性よりも多く、日本人女性では具体的に、「給料が上がらない」(33%)、「セクハラを受けた」(30%)、「パワハラを受けた」(30%)という回答が上位に上がっており、他国よりも女性がハラスメントを受けやすい環境に置かれている可能性が示された。

 「日本ではセクハラ・パワハラを受けている女性が多いことが示されました。日本では職場のハラスメントを防止することが使用者の義務になっていますが、それが守られていない可能性が示唆され、その徹底が求められています」と、日本女子大学名誉教授の大沢真知子氏はコメントしている。

働くことを「安定して生活するための手段」と回答した割合

出典:Indeed Japan、2021年

ジェンダーギャップの解消はリアルな問題

 兵庫県豊岡市は、2015年の国勢調査によると、10代で市外へ転出した若者のうち20代で市に戻るのは、男性が2人に1人、女性が4人に1人だった。

 同市は、人口減少の歯止め策として、若い女性のUターン、Iターンを促進するため、「豊岡市ジェンダーギャップ解消戦略」を打ち出している。

 「気がつくと、若い女性たちが、街からす~っといなくなっていました。国勢調査の結果から突きつけられた、厳しい現実です。ジェンダーギャップの解消は、街の存続にかかわる極めてリアルな問題でもあります」と、中貝宗治市長は言う。

 ジェンダーギャップの実態や意識を確かめようと、市民を対象に行った調査では、働く子育て世代の家事・育児時間は、働く男性の1日2.1時間に対し、働く女性は6.3時間と約3倍の差があることが明らかになった。

固定的な性別役割分担を前提とした仕組みや慣習が見直す必要が

 同市の調査では、女性の比重が重くなっている家事・育児の分担状況を、「適当だと思う」と回答したのは、男性では4割以上だったが、女性では2割強にとどまった。男性は育児家事の多くを女性が担う現状を容認する傾向が根強いが、不満をもつ女性は多いことが示された。

 そのような分担となっている理由として、「とくに決めたわけではないがなんとなく」(男性47%、女性47%)という回答は男女と同じくらいあったが、「夫が忙しいから」(男性32%、女性40%)、「夫の家事スキルが低いから」(男性21%、女性28%)では男女で差が出た。家事・育児の分担を、夫婦の話し合いで決めていないという課題がある。

 また、地域の行事や会合については、男性の世帯主が担っている傾向が強いが、その原因として「社会的なしきたりや習わし」(男性59%、女性65%)、「性別によって役割が違うという思い込みがある」(男性46%、女性45%)が多く挙げられた。ここでも地域メンバー同士の話し合いよりも思い込みで言動している傾向が示された。

 一方、男性の家事・育児参画について、「まだまだ不十分でありもっと進めていく必要がある」と回答したのは、男性43%、女性60%。さらには「固定的な性別役割分担をなくす必要がある」と回答したのは、男性77%、女性83%に上り、8割が変化を求めている。

 「調査をきっかけに、市民・地域、行政、企業・団体がジェンダーギャップ解消に向けて対話を増やし、固定的な性別役割分担を前提とした仕組みや慣習が見直され、暮らしのなかで見える景色がより良いかたちに変わっていくことを期待したい」と、市では述べている。

豊岡市の調査「市での男性の家事・育児参画についてどう思いますか?」

出典:豊岡市、2021年

伝統的な性別役割意識をもっている男性が多い "意識"の変革が必要

 日本でも、ジェンダー不平の解消のためにさまざまな施策が講じられている。しかし、不平等の背景にある人々の意識についてはあまり明らかにされていない。

 そこで、九州大学とダートマス大学の研究グループは、人々のジェンダーに関する意識を解明するために、新しい測定尺度である「性別役割尺度(GRS)」を開発した。この尺度は、性別役割の意識についての8つの質問に対する回答結果から作成される。

 これまでの調査では明らかにされてこなかった、女性の就業選択と結婚選択のトレードオフについての質問も使用しているのが特徴だ。

 研究グループは、2,389人の日本人を対象としたサンプルから得たデータを用いて、この尺度の構成要素を可視化し、男女間の意識の違いを調べた。

 その結果、男性がより伝統的・保守的な性別役割意識をもっていることが明らかになった。

伝統的な性別役割意識をもっている男性が多い

紫の点が男性の回答結果、緑の点が女性の回答結果、太線が95%信頼区間をそれぞれあらわしている。
回答が左に位置するほど、伝統的な性別役割意識に強く賛成することを示しており、男性の方が伝統的な性別役割意識を持っていることが示されている。
出典:Crabtree and Muroga (2021)

 「女性の活躍推進が議論されていますが、これまでに形成されてきた制度・規範が変わらない限り、大きな変革は望めません。制度・規範を形成する"意識"に対する理解が進み、ジェンダー平等が達成されることを強く願います」と、九州大学大学院経済学研究院の室賀貴穂氏は述べている。

ジェンダー・ギャップ指数2021(内閣府男女共同参画局)
「仕事とジェンダー」に関する3ヵ国比較調査を実施(Indeed Japan 2021年11月18日)
ジェンダーギャップの解消(豊岡市)
九州大学大学院経済学研究院
Crabtree C, Muroga K. Measuring Gender Role Attitudes in Japan. Socius. January 2021 doi:10.1177/23780231211057719
[Terahata]
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