ニュース
特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
2021年12月21日
特定健診・保健指導の効果を、厚生労働省が2018年までのおよそ10年間のデータベースを使い検証したところ、健診後の保健指導により体重や血糖値を減少させる効果がみられた一方、血圧やコレステロールを改善させる効果は確認されなかった。
ワーキンググループは制度の効果を検証するため、2018年までのおよそ10年間に、健診を2回以上受けた全国のおよそ4,400万人について健康状態を分析した。
「特定健診後の介入として、特定保健指導だけではなく、医療機関受診による服薬開始などの影響もふまえ、より多面的な評価を今後実施する必要がある」としている。
特定保健指導に一定の効果 体重や血糖値が減少 課題もあり
厚労省がまとめた「特定健診・保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究に係る報告書」で、健診後の保健指導により体重や血糖値を減少させた人が多く、男性の積極的支援対象者で有意なLDLコレステロール低下が認められたなど、一定の効果はみられるものの、全般に血圧やコレステロールを改善させる効果は確認されず、課題もあることが明らかになった。 特定健診・保健指導制度は、一般住民(40歳以上75歳未満)を対象に生活習慣病(肥満、高血圧、高血糖、脂質異常など)のスクリーニングを行い、生活指導介入(特定保健指導)により健康アウトカム改善を目指す事業。 一方、NDB(ナショナルデータベース)は、厚生労働省が構築したレセプト情報や特定健診などの情報のデータベース。ワーキンググループは、NDBに含まれる2008~2018年の特定健診・特定保健指導データを用いて、特定保健指導が健康アウトカムに与える影響を検討した。 対象となったのは、2008~2018年に2回以上の健診を受診した39~75歳の約4,400万人。初回健診受診時での、3年および5年後までの健診結果(体重、収縮期血圧、HbA1c、LDLコレステロール)に、特定保健指導が与える影響を、回帰不連続デザインで推定した。 【保健指導の割付効果 主な結果】割付効果 | |
体重 | 男性:-0.09kg (-0.10kg to -0.06kg) 女性:-0.14kg (-0.17kg to -0.09kg) |
HbA1c | 男性:-0.004% (-0.006% to -0.001%) 女性:-0.01% (-0.02% to -0.01%) |
実施効果 | |
体重 | 男性:-0.87kg (-0.96kg to -0.61kg) 女性:-1.04kg (-1.33 to -0.66) |
HbA1c | 男性:-0.03% (-0.06% to -0.01%) 女性:-0.07% (-0.12% to -0.04%) |
- 解析対象者の中で腹囲が基準値を超えたのは女性10.5%、男性42.0%だった。
- 腹囲基準周辺の対象者は、収縮期血圧の中央値は124mmHg(男女とも同値)、HbA1cの中央値は5.5%(男性)、5.6%(女性)、LDLコレステロールの中央値は128mg/dL(男性)、135mg/dL(女性)だった。
- 腹囲基準以上で、保健指導への割付割合、実施割合が高値だった。腹囲基準以上の者での保健指導実施割合は10~11%程度。保健指導実施者で、腹囲基準周辺(基準±5cm)に51.8%が分布していた。
- 性別・指導レベル別(動機づけ・積極的支援)のサブグループ解析では、積極的支援集団で体重減少の点推定値が大きい傾向があるが、サブグループ間で明らかな違いが認められなかった。男性の積極的支援対象者で、有意なLDLコレステロール低下が認められた。
回帰不連続デザインで推定された保健指導の効果(3年アウトカム)
特定保健指導への割付、あるいは実施が、3年健康アウトカム(体重変化、収縮期血圧(SBP)変化、HbA1c変化、LDLコレステロール変化)に与えた影響
回帰不連続デザインで推定された保健指導の効果(5年アウトカム)
特定保健指導への割付、あるいは実施が、5年健康アウトカム(体重変化、収縮期血圧(SBP)変化、HbA1c変化、LDLコレステロール変化)に与えた影響
出典:厚生労働省、2021年
特定健診・特定保健指導について(厚生労働省)保険者による健診・保健指導等に関する検討会(厚生労働省)
NDBオープンデータ 分析サイト(厚生労働省)
特定保健指導等の効果的な実施方法の検証のためのワーキンググループ(厚生労働省)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月18日
- 人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月18日
- 健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年04月08日
- 【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
- 2024年03月18日
- メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
- 2024年03月11日
- 肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年02月26日
- 近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も