「住環境」は健康増進にも影響 「断熱と暖房」が血圧や住宅内での活動量に寄与 足元が暖かいことも大切
「断熱 × 床暖房」の暖かい住まいでは、高血圧での通院率が低め、推定血圧も低め
研究は、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の伊香賀俊治研究室、積水ハウス、日本ガス協会によるもの。 研究グループは、現行の省エネ基準の断熱性能に満たない住宅と、断熱性能を満たす住宅で、主にエアコンを使う居住者と、主に温水床暖房を使う居住者を対象に、測定とアンケート調査を行った。 調査では、温度・湿度(居間1mおよび床付近、寝室、脱衣所をはじめとした住宅各部)、血圧(朝2回、夜2回/日の測定)、身体活動量(装着型活動量計による測定)、測定期間中の被験者の行動(行動日誌による記録)などを測定した。 さらに、健康に関わる症状、疾病の有無、冬季での暖房の使用状況、日常の生活行動、住宅の建築情報などをアンケート調査した。 その結果、高血圧で通院している割合は、居間の床付近の室温が14℃未満の場合に比べ、21℃以上の場合は50%低かった。 実験データをもとにした推定血圧値は、省エネ基準の断熱性能を満たした住宅で床暖房使用の場合、省エネ基準未満の断熱性能の住宅の場合より、 30歳男性で平均2.1mmHg、80歳男性で3.4mmHg、それぞれ低い値となった。「断熱 × 床暖房」の暖かい住まいでは活動量が多め
また、省エネ基準の断熱性能を満たす住宅では、部屋間の室温差が小さい方が、またエアコン使用の場合に比べて床暖房使用の場合の方が、座り続ける時間が短く活動量が多いことが分かった。 温度差が1℃小さいと、座り続ける時間は1日あたり27.1分短くなった。さらに、床暖房を使用した場合は、エアコンを使用した場合に比べ、座り続ける時間が1日あたり32.5分短かった。 「足腰の衰えなどの身体機能の低下による事故を予防するためにも、自宅での座りっぱなしには注意です」と、研究者は指摘している。 居間と脱衣所の温度差の小ささや、居間の床付近の暖かさにより、住宅内での活動量が増えると、高齢者の活動量減少による足腰の衰えから生じるさまざまな健康リスクや事故リスクの低減に寄与する可能性がある。 関連情報子供のアトピー性皮膚炎の割合も低め
子供がアトピー性皮膚炎である割合は、省エネ基準の断熱性能を満たす住宅で、居間が暖かい方が、またエアコン使用の場合に比べて床暖房使用の場合の方が低かった。 アトピー性皮膚炎の割合は、居間が暖かい住まい(20℃以上)の子供では、居間が寒い住まい(20℃未満)の子供より70%低かった。また、その割合は、床暖房の住まいの子供では、エアコンの住まいの子供より60%低かった。 「暖かいことで厚着による摩擦や汗蒸れが抑えられたことが一因と推察されます。さらに、床暖房はホコリが舞いにくく、アレルゲンが抑制されたことが一因と推察されます」と、研究者は述べている。 中耳炎である割合は、省エネ基準の断熱性能を満たす住宅で、エアコン使用の場合に比べの、床暖房使用の場合の方が50%低かった。 喘息である割合も、省エネ基準を満たしているかどうかを問わず、居間の床付近と脱衣所両方が寒い場合に比べ、両方が暖かい場合の方が60%低かった。 「床暖房だと、子供に多い急性中耳炎の原因となるウイルスや細菌が好む乾燥した環境になりにくいためと推察されます。さらに、断熱が不十分だと、結露が生じやすく、カビ・ダニを繁殖させ、ぜんそく発症の原因となるおそれがあるうえ、寒さによる肺機能低下や気管支収縮で症状が悪化することがあります」と指摘している。 居間の暖かさや居間の床付近の暖かさ、脱衣所の暖かさにより子供の疾病が抑制されると、継続的な通院による親子の身体的・精神的負担の回避に寄与する可能性があるとしている。
今回の研究は、健康・快適な暖房利用方法の追求をテーマとする「暖房の健康影響研究部会」で実施したもので、断熱性能や床暖房の健康への効能を調査した。
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