ニュース

朝食を食べないとメタボやロコモのリスクが上昇 朝食欠食により体重が増え、筋肉は減る 体内時計に異常が

 朝食を食べないと、体重が増え、メタボになる危険性が大きくなることが、名古屋大学の研究で明らかになった。さらに、朝食欠食は、筋肉を萎縮させ、ロコモやサルコペニアの危険性も増大させるという。

 こうした障害は、朝食欠食により体内時計が異常になるために起こる。朝食を摂る習慣は、体内時計を正常化させ、太りにくい体質をつくり、メタボを予防するのに役立つと考えられる。

朝食欠食によりメタボ・ロコモ・サルコペニアの危険性が増大

 朝食を習慣的に食べない「朝食欠食」は、とくに若年の男性で多くみられ、ダイエットを目的に積極的に行っている人もいる。

 これまで、朝食を食べたほうが健康になるのか、食べないほうが良いのかという「朝食論争」が長年続いたが、多くの研究は、朝食をしっかり摂る習慣は健康に良いことを示しており、体重増加を抑える効果もあると考えられている。

 朝食欠食は、メタボになる危険性を高め、さらには筋肉も萎縮させ、ロコモやサルコペニアの危険性も増大させることが、名古屋大学の新しい研究で明らかになった。

 メタボ(メタボリックシンドローム)は、太っていることをさす言葉のように使われることがあるが、日本人の場合は、太っていない人でも、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性になる場合があることが知られている。そうした人は、痩せていても2型糖尿病を発症するリスクがある。

 また、ロコモ(ロコモティブシンドローム)は、運動器の障害が起こり、歩くのが遅くなるなど身体機能が低下した状態。筋肉や骨、関節、神経などの機能低下により起こる。加齢にともない筋力が低下したり筋肉が減少するサルコペニアによっても起こる。

 研究は、名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国の科学誌「British Journal of Nutrition」にオンライン掲載された。

朝食欠食によりメタボ・ロコモ・サルコペニアの危険性が増大
出典:名古屋大学、2022年

朝食欠食は体内時計の異常を引き起こす

 研究グループは2018年に、高脂肪食を食べさせたラットを使い、朝食欠食が、体内時計の異常を引き起こし、体重増加をもたらすことを遺伝子レベルで明らかにした。

 ほぼ24時間の周期で体のリズムを刻んでいる体内時計は、脳では光によって調整されていることが知られているが、最近の研究では、代謝に関わる内蔵や筋肉の体内時計は、食事のタイミングによって調整されていることが分かってきた。

 研究グループは今回、マウスに普通食を摂取させた場合でも、朝食欠食が体内時計の異常をもたらし、体重増加を引き起こすことを確かめた。さらには、朝食欠食は筋肉萎縮ももたらすことを新たに解明した。

 こうした障害は、朝食欠食により各臓器に関わる体内時計が異常になるために起こるという。朝食欠食の習慣は、メタボの危険性を増加させるだけでなく、ロコモやサルコペニアの危険性も高める。

 「朝食は、子供には十分な栄養素を供給する役割があり、成人ではメタボを抑える効果が期待され、さらに老年期には筋肉萎縮を抑制して、ロコモやサルコペニアの危険性を抑える作用があることが明らかになりました」と、研究者は述べている。

関連情報

朝食を食べると太りにくい体質になり、筋肉も維持できる

朝食欠食により体重が増加

出典:名古屋大学、2022年
 今回の研究は、朝食を食べる習慣が健康につながることを、遺伝子レベルで解明したもの。朝食をきちんと摂る習慣は、体内時計を正常化させ、太りにくい体質をつくるのに役立つことが明らかになった。

 研究グループは、マウスに普通食を与え、活動期の最初の4時間を食べさせないようにして朝食欠食にさせた。その結果、朝食欠食により脂肪組織の重量が増加して、体重が増加した。これは、体温や肝臓や脂肪組織に関わる体内時計に異常が生じたためだと分かった。

 さらに、朝食欠食によって筋肉重量の低下が起こることがはじめて分かり、これも筋肉に関わる体内時計の異常によるものと考えられるという。

 「朝食を摂る習慣は、体内時計を正常化させ、太りにくい体質をつくり、メタボを予防するのに役立つと考えられます。今回は新たに、朝食欠食が筋肉の萎縮をもたらすことも明らかにしました。朝食欠食は、筋肉に関わる体内時計も異常にします。朝食習慣は、筋肉を維持して、ロコモやサルコペニアの予防にも役立つとみられます」と、研究者は述べている。

 「日本をはじめとする先進国では、とくに若い人の3割ぐらいが朝食を食べていないようです。文部科学省などは、朝食を食べるための国民的な運動を行っています。朝食を食べたほうが健康になることは、多くの研究で解明されています」としている。

名古屋大学大学院生命農学研究科
Skipping breakfast regimen induces an increase in body weight and a decrease in muscle weight with a shifted circadian rhythm in peripheral tissues of mice (British Journal of Nutrition 2022年3月11日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶