令和3年の労働災害発生状況は死亡・死傷者共に増加 中期計画での目標達成は困難に

死亡者数、死傷者数ともに前年より増加しており、令和4年度までの労働災害防止に関する中期計画での目標達成は困難な状況となっている。背景には職場における新型コロナウイルス感染症罹患者数の増加がある。
厚生労働省は労働災害を減らして安心・健康に働ける職場の実現に向け、重点的に取り組む中期計画「第13次労働災害防止計画」を策定。平成30年度から令和4年度までを計画期間とし、「死亡災害15%以上減少」と「死傷災害(休業4日以上の労働災害)5%以上減少」を全体目標としている。背景には、過労死やメンタルヘルス不調の対策強化、働き方の多様化などがある。
令和3年の労働災害による死亡者数は867人で、前年比65人の増加。第13次労働災害防止計画で目標としている平成29年比「15%以上減少」に対しては、11.3%減少にとどまった。平成30年から令和2年までは目標の達成が見込めるペースで減少していたものの、令和3年は増加に転じたことから、最終年度の令和4年はより一層の努力が求められる。
また死傷者数は149,918人で前年比18,762人の増加。平成10年以降、最多の人数で、第13次労働災害防止計画で目標としている平成29年比「5%以上減少」に対しては、24.5%も増加している。第13次労働災害防止計画の目標達成は困難な状況になっている。
死傷災害では陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店を重点業種としているが、平成29年比また前年比ともに全業種で増加。特に社会福祉施設で平成29年比・9,683人の増加となり、増減率110.8%と大幅に増えた。
新型コロナ感染症への罹患による労働災害を除くと、死亡者数が最も多かったのは「墜落・転落」で全体の25%を占める。第13次労働災害防止計画で重点業種になっている建設業の死亡者数は減少傾向にあったが、前年比30人増と大きく増えた。
同様に死傷者数で最も多かったのは「転倒」で33,672人(全体の23%)。次いで腰痛など「動作の反動、無理な動作」、「墜落・転落」と続く。年齢別では60歳以上が全死傷者数の約4分の1を占めた。
厚生労働省では、最終年度の令和4年も、引き続き職場における新型コロナ感染症拡大防止を徹底しつつ、建設現場等の足場など高所からの墜落・転落災害▽陸上貨物運送事業で多発している荷役作業中の災害▽小売業及び社会福祉施設で多発している転倒や腰痛による労働災害、などを防止するため啓発活動の強化、自主的な安全衛生活動の普及・定着などを図っていきたい考え。


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