ニュース
運動はどれくらいやると良い? 週1回だけの運動ではダメ? 加齢にともなう筋肉の減少を防ぐために
2022年08月22日
健康を維持するために、加齢にともない筋肉が減るのを防ぎ、筋肉を強く維持することは大切だ。筋肉量の減少は、心血管疾患、2型糖尿病、がん、認知症、骨粗鬆症、フレイルなど、多くの慢性疾患のリスクを高める。
1週間で、まとまった時間をつくり集中的に運動するよりも、少なめの量でも運動を毎日行った方が、より効果的とした研究が発表された。
「少量の運動でも週に分散して、できるだけ毎日行うようにし、蓄積していくことが重要です」と、研究者は述べている。
運動を毎日少しずつ行うのと、週に1回まとめて行うのとでは、どちらが良い?
1週間で、まとまった時間をつくり集中的に運動するよりも、少なめの量でも運動を毎日行った方が、より効果的であることが、オーストラリアのエディス コーワン大学などの研究で明らかになった。 健康増進のために運動に取り組んでいる人は多いが、運動は週に1回でも長時間行った方が良いのか、それとも短い時間でも良いので毎日行った方が良いのか、考え込んでしまう人は少なくない。 研究では、筋肉を増やして筋力を向上するには、少ない量でも毎日行った方が、より有益なアプローチになる可能性が示された。毎日たくさんの量の運動をしなければならないわけではなく、自分のペースに合わせて続けることが大切だという。 研究は、エディス コーワン大学の運動・スポーツ健康科学部の野坂和則教授や、西九州大学リハビリテーション学部の中村雅俊氏らが、新潟大学と共同で行ったもの。研究成果は、「Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports」に発表された。適度な運動をほぼ毎日行うと筋肉の厚さと筋力が増加
新潟大学と西九州大学と共同で、36人の健康な若年成人に参加してもらい、4週間の筋力トレーニングを中心としたトレーニングに取り組んでもらい、筋肉と筋力の変化を比べる実験を行った。 参加者を12人ずつ3つのグループ分け、1つめのグループには、6セットのトレーニングを週に1回行ってもらい(6×1群)、2つめのグループには、6セットのトレーニングを週5日行ってもらい(6×5群)、3つめのグループには、6セットのトレーニングを5回、週に1日行ってもらった(30×1群) 4週間のトレーニングにより、最大筋力発揮(MVC)や伸張性筋収縮(ECC)などにどのような変化が起こるかを調べた。 伸張性筋収縮(エキセントリック収縮)とは、本来の筋肉の動作方向とは逆方向に筋肉が引き伸ばされながら収縮するような筋収縮のことで、アームカールでウエイトを上げて、ゆっくりと下ろしたときの筋肉の収縮がこれにあたる。 その結果、30×1群では、筋肉の増加の指標となる筋肉の厚さは5.8%増加したが、筋力の増加は示されなかった。もっとも運動量の少ない6×1群では、筋肉の厚さと筋力に変化はみられなかった。 一方で、6セットのトレーニングをほぼ毎日行った6×5群は、30×1群と同じくらい筋肉の厚さが増加しただけでなく、筋力が10%以上大幅に増加した。 関連情報筋肉量の減少は糖尿病・がん・認知症・フレイルなどのリスクを高める
「筋力トレーニングを含む運動は、適度な量のものを毎日行うと、筋肉を増やし、強くするために、より効果的であることが示されました」と、研究者は述べている。 「運動ジムでの筋力トレは、頑張って長いセッションを行う必要があると考えている人がいますが、実際にはそんなことはありません。1日に1回~6回、ダンベルをゆっくりと上げ下げするといった、適度な運動をするだけで効果を期待できます。ただし、できるだけ毎日行うことが勧められます」としている。 今回の研究では、上腕二頭筋の筋トレのみを行ったが、体の他の部位の筋肉についても、同じような効果をえられると考えられるという。 「私たちの健康にとって、筋肉を強く維持し、加齢にともなう筋萎縮を防ぐことは大切です。筋肉量の減少は、心血管疾患、2型糖尿病、がん、認知症、骨粗鬆症、フレイルなど、多くの慢性疾患のリスクを高めます」としている。運動には休息を含めることも重要
運動や身体活動を毎日の生活に取り入れることが大切
オーストラリア政府の運動ガイドラインでは、成人は毎日活発に運動や身体活動を行い、週に2.5~5時間のウォーキングなどの中強度の運動を行うことを推奨している。 野坂教授は、毎週行った運動の合計時間を目標とするよりも、運動や身体活動を毎日の生活に取り入れる重要性をもっと強調する必要があると指摘している。 「週に1回、ジムに行って運動をするだけで、家や職場では毎日ほとんど運動していないといったやり方は、あまり効果的ではありません」としている。 「筋肉が減るのを防ぐために、筋肉に負荷をかけて行う運動が必要です。今回の研究は、私たちの以前の研究と合わせて、週に1度だけ運動するだけでなく、少量の運動でも週に分散して、できるだけ毎日行うようにし、蓄積していくことが重要だと示唆しています」と、野坂教授は述べている。 Exercise answer: Research shows it's how often you do it, not how much (エディス コーワン大学 2022年8月15日)Greater effects by performing a small number of eccentric contractions daily than a larger number of them once a week (Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 2022年7月31日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要