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【特定健診】健診の無償化に受診促進の効果が 「若年層や低所得層への受診促進策も必要」
2022年09月26日

特定健診の受診率の低迷の課題を解決するため、自己負担額をゼロにする「無償化施策」を進めている保険者は多い。
東京都健康長寿医療センターの調査で、特定健診の無償化は、受診行動を促進する一定の効果があることが示された。
一方で、もともと受診率が高い高齢層ほど、無償化による受診促進の効果が大きいことも明らかになった。もともと受診率の高い、所得が一定水準以上の課税者も、無償化による受診促進の効果が大きかった。
これは、無償化によって、健康格差をかえって助長してしまっているとも解釈できる。「若年層や低所得層への受診促進策は、別途の検討が必要です」と、研究者は述べている。
特定健診の受診率の低迷が課題に
生活習慣病予防策として、40~74歳を対象に地域や職域で特定健康診査(特定健診)が実施されている。しかし、とくに市区町村の国民健康保険(国保)では、全国の受診率は2019年度が38.0%、2020年度が33.7%となっており、受診率の低迷が課題になっている。 受診率向上のために、特定健診にかかる自己負担額をゼロにする「無償化施策」をとる保険者は多いものの、その受診行動への影響は学術的に明らかになっていない。 そこで、東京都健康長寿医療センターは、神奈川県横浜市の国保受給者のデータを用い、特定健診の無償化の効果を検証した。 横浜市では、2018年度から特定健診の無償化を実施している。実施前(2017年度)の自己負担額は、課税者(前年度の合計所得金額が一定水準以上の者)で1,200円、非課税者(同一定水準以下の者)で400円だった。 横浜市内18区のうち、2018年度の平均所得順位が高位、中位、低位の3区を抽出し、この3区に居住する2015~2018年度の国保特定健診対象者(40-74歳)を分析対象とした(男性44.8%、平均年齢61.2±10.4歳、非課税者49.6%)。 関連情報無償化により16.7%の受診行動を促進 しかし健康格差も助長
4年間分のデータのべ37万7,660件を解析した結果、無償化実施前年度の2017年度に比べ、2015、2016年度の受診行動の違いはわずかだったが、無償化を行った2018年度は、受診確率が1.167倍に高まり、16.7%の受診行動が促進されていた(オッズ比[95%信頼区間]=1.167[1.149-1.185])。 しかし、年代別の推移をみると、もともと受診率が高い高齢層ほど、無償化による受診促進の効果が大きいことも明らかになった。課税区分でも同様の傾向があり、もともと受診率が高い課税者(つまり所得が一定水準以上の者)ほど、無償化による受診促進の効果が大きいという結果になった。 これは、無償化によって、健康格差をかえって助長してしまっているとも解釈できる。
年代別の特定健診受診率の推移
もともと受診率が高い高齢層ほど無償化による受診促進の効果が大きい
40歳などの若い層との受診格差が拡大してしまっている
もともと受診率が高い高齢層ほど無償化による受診促進の効果が大きい
40歳などの若い層との受診格差が拡大してしまっている

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2022年
若年層や低所得層への受診促進策も必要
なお、解析では、特定健診受診の有無をアウトカムとし、性別、年齢、課税区分(所得の代理変数)、居住区を調整した一般化推定方程式を用いた。2015~2018年度の横浜市国保の特定健診の受診率は、21.2%、20.2%、21.1%、24.0%だった。 研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の村山洋史研究副部長をはじめとする研究グループによるもので、研究成果は、国際誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載された。 「特定健診無償化は、一定の受診行動促進効果があることが示されました。しかし、無償化によって健康格差を助長してしまう可能性も明らかになりました。若年層や低所得層への受診促進策は別途検討が必要といえます」と、研究グループでは述べている。 東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チームEffectiveness of an out-of-pocket cost removal intervention on health check attendance in Japan (International Journal of Environmental Research and Public Health 2021年5月24日)
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