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保健指導では規則正しい生活リズムを重視 活動的な高齢者は幸福を感じやすく認知能力も高い
2022年09月26日

高齢者にとって、規則正しい生活をおくり、活発な活動を毎日していることが、加齢とメンタルの健康にとって重要であることが、米国のピッツバーグ大学健康科学部などの研究で明らかになった。
1日を通して活動的な生活をしている高齢者は、幸福感を感じやすく、認知テストもより良い成績をおさめているという。身体活動の強度だけでなく、活動パターンも重要であることが示された。
規則的な生活リズムをもつ高齢者は認知能力が高い
「多くの高齢者で、日常での活動パターンは、老化にともない乱れていく傾向がみられます」と、ピッツバーグ大学で精神医学や老年医学を研究しているスティーブン スマグラ氏は言う。 「しかし、早起きをして、規則正しい生活をおくり、1日を通して活動的な生活をしている高齢者は、不規則な活動パターンをもち、不活発な高齢者に比べ、幸福感を感じやすく、認知テストもより良い成績をおさめていました」。 「調査結果で興味深いのは、多くの高齢者は活動パターンを自発的にコントロールしていたことです。つまり、意識的に日常生活を改善することで、健康とウェルネスを向上できる可能性があります」としている。生活が不規則で不活発な高齢者は認知能力の低下が2倍に
研究グループは、高齢者の24時間の活動パターンとメンタルヘルスの関連を調べるため、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した米国の65歳以上の高齢者1,800人を対象に、横断的研究を行った。 参加者に、活動量計を7日間装着してもらい、心と体の健康評価尺度である「PHQ-9」のテストを受けてもらい、うつ病や軽度認知障害などのメンタルヘルスについて評価した。 高齢者の毎日の活動パターンは、次の4つのグループに分けられた。(1) 朝早く起き、活動的なパターン(37.6%)、(2) 規則的だが活動時間が短いパターン(32.6%)、(3) 活動時間が短く、強度も弱いパターン(9.8%)、(4)活動が相殺され、活動が非常に弱いパターン(20.0%)。 解析した結果、朝早く起き、活動的な生活をしている高齢者に比べ、生活が不規則で、活動が弱い高齢者は、うつ病や認知能力の低下が2倍多くみられた。1日を通して活動的に過ごすことが大切
「高齢者の3人に1人以上は、しっかりとした生活パターンをもっていました。平均して朝の7時前に起き、運動や身体活動を習慣として続けている高齢者が多かったのです」と、スマグラ氏は言う。 「そうした高齢者は、日中に15時間ほど活動を続けていました。また、毎日規則正しい生活リズムに従っている傾向もみられました。驚くことに、そうした人は他の参加者に比べ、より幸福感を感じ、精神的に落ち込むことも少なく、認知機能も優れていました」。 高齢者の32.6%は、生活のパターンは規則的だったが、朝遅くに起きたり、夕方は早い時刻に活動をやめてしまい、1日の活動時間の平均は13.4時間と少なかった。そうした高齢者は、活動的で規則正しい生活をしている高齢者に比べ、うつ病の症状が多く、認知能力も低下していた。 「多くの人は、高齢者の健康にとっても活動強度が重要と考えがちですが、もっと重要なのは、活動を持続している時間である可能性があります。身体活動を行うときでも、ジョギングやマラソンなどの激しいものをする必要はなく、単に1日を通して活動的に過ごすことが必要かもしれません」と、スマグラ氏は指摘している。高齢者のメンタルヘルスと活動パターンは双方向に影響
一方、30%の高齢者は、生活が1日を通して不規則で、日によって一貫性がない傾向がみられた。そうした高齢者は、活動時間が短く、強度も弱かった。そうした高齢者は、うつ病の割合がもっとも高く、認知テストの成績ももつとも悪かった。 スマグラ氏によると、高齢者のメンタルヘルスと活動パターンは、双方向に影響しあっている可能性が高い。さらに、うつ病や認知障害により、規則的で一貫した生活パターンに従うのが難しくなり、活動リズムが乱れると、うつ病や認知能力の低下などの症状がさらに悪化するおそれがある。 「今回の調査結果は、活動パターンが乱れてしまう高齢者も多くみられ、それが高齢者の健康問題に関連していることを示唆しています。生活リズムや活動パターンと精神の健康は、双方向な関係にある可能性が高いのです」と、スマグラ氏は言う。 「良い知らせもあります。毎日の生活リズムや活動は、誰にとっても簡単に変更することが可能性であり、運動や身体活動を習慣として行い、活動パターンを回復すれば、健康を改善できる可能性があることです」。 スマグラ氏らの研究グループは現在、高齢者の行動を修正し、より一貫した日常生活を送るようにすると、認知力を向上し、メンタルヘルスを改善できるかを検証する介入研究の準備をしている。保健指導で高齢者の行動を修正できる
毎日規則正しい生活をおくり、一貫した日課や生活リズムをつくることが大切だ。たとえば、良い睡眠を得るための最初のステップとなるのは、毎日同じ時刻に起きることだとしている。 「もうひとつ重要なのは、1日を通してアクティブに過ごすために、現実的な計画を立てることです。とくにスランプに陥っていたり、ケガをして回復期間にある場合は、それが難しくなるので、ご自分でしっかりと対処することが必要になります」と、スマグラ氏は言う。 「計画には、ご自分が好きなことに取り組み、楽しめるアクティビティをリストに取り入れ、友人や隣人などと交流する時間をスケジュールに加えることもお勧めします」。意識して体内時計を整えることも必要
意識して体内時計を整えることも必要だという。体内時計と概日リズムを同期させる外的因子である「同調因子(ツァイトゲーバー)」には、毎日決まった時刻に起き、太陽の光を浴び、運動を習慣として続け、食事も一定の時間にとることが含まれる。 体内時計を整えるために、それぞれの生活スタイルに合わせて調整することが役立ちます。たとえば、ペットは毎日同じ時間に食事と散歩を要求することが多く、ペットを飼うことで生活が規則正しくなった高齢者の例もある。 「ほとんどの人は、睡眠の質を高めることや、運動をすることが重要だと理解していますが、体内時計と概日リズムを整えることはあまり考えていません」と、スマグラ氏は指摘している。 「必要なことは、活動的に毎日を過ごし、やりたいことに取り組み、規則正しい生活をおくり、目的ややりがいのある1日を過ごすことは、私たちが夜にぐっすりと眠り、より良く年齢を重ねるために重要なことかもしれません」としている。 Older Adults with Regular Activity Routines Are Happier and Do Better on Cognitive Tests, Study Finds (ピッツバーグ大学 2022年9月13日)Association of 24-Hour Activity Pattern Phenotypes With Depression Symptoms and Cognitive Performance in Aging (JAMA Psychiatry 2022年8月31日)
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