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【新型コロナ】感染が拡大しやすいのは今でも「夜間営業の飲食店」 保健所の調査から明らかに 東京都
2023年03月06日
「夜間営業の飲食店」は、新型コロナのクラスターを生じやすく、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいため、感染拡大に関連している可能性が高いことが明らかになった。
東京都や東北大学などが、新型コロナ感染者について、保健所が実施した「積極的疫学調査」による情報を解析したもの。
夜間営業の飲食店での感染報告者は、家庭内と医療機関・福祉施設での感染報告者よりも早期に発生し、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいとしている。
研究は、2020年1月23日~2020年12月5日に、東京都に報告された調査結果を解析したもの。
保健所による「積極的疫学調査」の成果を活用
新型コロナの感染拡大を防ぐために、ワクチン接種のみでは困難で、感染拡大のハイリスク群に焦点を絞った介入が必要と考えられている。 これまで、人流の抑制や行動制限などの介入が世界的に実施されてきたが、それらは社会経済活動への影響が大きい。そのため、感染拡大のハイリスク群に的を絞った実施が効果的と考えられている。 新型コロナの感染拡大では、クラスターの形成と連鎖が重要な因子となる。しかし、どのような社会的場面が、クラスターを形成しやすく、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいかは、十分に解明されていない。 これまで、主に個別の流行事例の解析やモデリング研究が行われており、大規模疫学情報にもとづく研究は困難だった。 そこで東京都・東北大学大学院医学系研究科・国立感染症研究所の合同チームは、2020年1月23日~2020年12月5日に、東京都に報告された新型コロナ感染者4万4,054人を対象に、保健所による「積極的疫学調査」による情報を用いた後方視的解析を行った。 積極的疫学調査は、新型コロナ患者に対して、保健所によって実施される調査。感染症の発生の状況・動向・原因を明らかにし、感染を予防するため、感染患者の同定などが行われている。「夜間営業の飲食店」が新型コロナの感染拡大と関連
その結果、社会的場面ごとに感染伝播の特徴が異なり、「夜間営業の飲食店」が、新型コロナの感染拡大と関連している可能性が高いことが明らかになった。 感染した場面が特定可能だった1万3,122人のうち、夜間営業の飲食店での感染報告者は1,174人、家庭内での感染報告者は6,678人、医療機関・福祉施設での感染報告者は2,733人だった。 感染した場面6,624件を特定したところ、夜間営業の飲食店(18.9%)と、医療機関・福祉施設(36.2%)とで、クラスターが多く生じていた。 とくに、特定された夜間営業の飲食店380件のなかで、接待をともなう飲食店でクラスターが30.6%と多く、接待をともなわない飲食店でのクラスターは7.0%と少なかった。 夜間営業の飲食店での感染報告者は、家庭内と医療機関・福祉施設での感染報告者に先行して発生し、この傾向は異なる流行時期(第1・2波)で共通していた。
夜間営業の飲食店では、新型コロナのクラスターがより早期に発生し、他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすかった
夜間営業の飲食店および医療機関・福祉施設では、新型コロナのクラスターを生じる頻度が高い
夜間営業の飲食店および医療機関・福祉施設では、新型コロナのクラスターを生じる頻度が高い
出典:東北大学、2023年
家庭内と医療機関・福祉施設は、他の場面への感染拡大を生じにくい
さらに、感染した場面が特定可能だった1万3,122人のうち582人(4.4%)が、他の場面へのさらなる感染拡大を生じていた。 夜間営業の飲食店での感染報告者に比べ、家庭内と医療機関・福祉施設での感染報告者は、他の場面へのさらなる感染拡大を生じにくいことも明らかになった。 家族以外へのさらなる感染拡大に限定した解析では、夜間営業の飲食店に比べ、職場、家庭内、医療機関・福祉施設、その他では、さらなる感染拡大を生じにくいことが示された。 感染した場面が特定できなかった3万932人でも、同様の解析を行なった結果、夜間営業の飲食店を利用した記録がある感染報告者は、利用記録がない感染報告者に比べ、より早期に発生し、また他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいことが分かった。 家庭内では、同世代間と異なる世代間で感染が伝播していたのに対して、家庭外では、同世代間での感染の伝播が主だった。65歳以上への感染の伝播は家庭内で多く生じていた。
家庭内および医療機関・福祉施設での感染報告者は、夜間営業の飲食店での感染報告者に比べて、他の場面へのさらなる感染拡大を生じにくい
出典:東北大学、2023年
夜間営業の飲食店は、クラスターを生じやすく、他の場面への感染拡大を生じやすい
今回の研究で、新型コロナ感染報告者の疫学情報を用いた解析により、社会的場面ごとに異なる感染伝播上の特徴が明らかになった。 研究は、東京都、東北大学大学院医学系研究科微生物学分野の押谷仁教授、国立感染症研究所などの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open誌」にオンライン掲載された。 「夜間営業の飲食店は、クラスターを生じやすく、かつ他の場面へのさらなる感染拡大を生じやすいため、新型コロナの感染拡大に関連している可能性が高いことが示されました」と、研究グループは述べている。 現在、オミクロン株の流行により感染の場面はより多様化している。ワクチン接種による感染予防効果は短期間に限られるが、ワクチン接種の普及にともない、さまざまな場面で行動制限の緩和が進んでいる。 そのようななかで、夜間営業の飲食店でのオミクロン株由来のクラスターがさらなる市中感染につながった事例は、依然として報告されている。 「本研究では、ワクチン接種が普及する以前、かつオミクロン株流行以前のデータを用いましたが、ワクチン接種が普及しオミクロン株が流行している現在においても、依然として、夜間営業の飲食店は新型コロナの感染拡大での重要な場面であると推測されます」と、研究グループは述べている。 東北大学大学院医学系研究科 微生物学分野Transmission of COVID-19 in Nightlife, Household, and Health Care Settings in Tokyo, Japan, in 2020 (JAMA Network Open February 2023年2月24日)
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