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女性のメンタル不調に「鉄分の不足」が関係 「ゆううつ」「集中できない」の原因は鉄欠乏性貧血かも?
2023年03月13日

鉄分が不足している女性は、「メンタル不調」になりやすいことが、日本人を対象とした大規模研究で明らかになった。研究は、弘前大学・京都大学・大正製薬が共同で行ったもの。
「ゆううつだ」「仕事が手につかない」といったメンタル不調があらわれている女性では、赤血球の数が少ない傾向があることなども分かり、鉄分不足とメンタル不調の関係性が示唆された。
血液にある赤血球は、肺で酸素をとりこみ、全身へ送り届ける重要な役割を果たしている。赤血球の量と質が低下すると、貧血になりやすい。
「なんだか集中できない」といった心のもやもやを感じている女性は、鉄分を補給することで、メンタル不調を改善できる可能性がある。
鉄分不足による貧血にご注意
鉄分は、健康を維持するために欠かせないミネラルの一種。 血液のなかにある赤血球は、肺で酸素を取り込み、全身へ送り届ける重要な働きをしている。赤血球が酸素を取り込むために、ヘモグロビンというタンパク質が必要になる。 体内の鉄が不足すると、そのヘモグロビンがうまく作られなくなる。そうなると、赤血球もうまく作られなくなる。その結果、全身に十分な酸素を送り届けることができなくなってしまう。これが、「鉄欠乏性貧血」だ。 「鉄欠乏性貧血」は、とくに女性に多い。月経のある女性では、定期的に経血とともに鉄分が体外に排出されるため、鉄分不足になりやすい。 貧血と診断されない場合でも、体内の「貯蔵鉄(フェリチン)」の減少による潜在的な鉄分の欠乏、すなわち"隠れ貧血"になるおそれがある。
「鉄欠乏性貧血」は女性に多い
体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンがうまく作られなくなり、赤血球もうまく作られなくなる
体内の鉄が不足すると、ヘモグロビンがうまく作られなくなり、赤血球もうまく作られなくなる

出典:大正製薬、2023年
鉄欠乏による貧血を予防する食生活は?
厚生労働省の2009年国民健康・栄養調査では、20~40代の女性の65%以上が、鉄欠乏による貧血、もしくは隠れ貧血である可能性が指摘されている。 欧米諸国と比べても、日本人女性の貧血の割合は高く、女性にとって重要な健康課題のひとつになっている。 体内の鉄分が不足すると、「疲れやすい」「めまいがする」「頭痛がする」など、貧血の諸症状があらわれやすくなり、日常生活での生活の質(QOL)や、働く女性の生産性にも影響をおよぼすと考えられる。 鉄欠乏による貧血を予防するために、食生活を改善することが大切だ。 具体的には、レバー、赤身の肉、赤身の魚、小松菜・ブロッコリー・ホウレンソウなどの緑黄色野菜、ひじき、納豆や豆腐などの大豆食品、豆類、干しエビ、ゴマなどを食べるようにすると効果的だ。 鉄は、植物性食品にも含まれているが、肉や魚などの動物性食品は、とくに吸収の良いヘム鉄を多く含むものがある。また、ビタミンCをいっしょに摂ると、鉄は吸収されやすくなる。 1日3食で、鉄分を含む栄養のバランスの良い食事をするのが望ましいが、食事だけで鉄分を補えない場合は、 サプリメントを上手に活用する方法もある。女性のメンタル不調と鉄分の関連を調査
メンタル不調と鉄分不足について、海外では関連を示した報告がある。日本では小規模の報告はあるものの、大規模な疫学研究はされていなかった。 そこで、弘前大学、京都大学、大正製薬の研究グループは今回、「岩木健康増進プロジェクト」でえられた健康ビッグデータを活用し、"女性のメンタル不調"と"血中の鉄関連成分"の関連について調査した。 同社は、鉄分が女性の健康にとって重要な働きを持つ成分と位置づけ、鉄分の機能に関するさまざまな研究を長年進めているという。 「岩木健康増進プロジェクト」は、弘前大学・弘前市・青森県総合健診センターが主導し、弘前市岩木地区で2005年より実施している、地域住民を対象とした住民合同健診・健康指導などの大規模な健康増進活動。「ゆううつだ」「仕事が手につかない」の原因は鉄分不足かも?
その結果、「ゆううつだ」「仕事が手につかない」といったメンタル不調があらわれている女性では、赤血球の数の平均値が低値であり、鉄分不足とメンタル不調の関係性が示唆された。 血液にある赤血球は、肺で酸素をとりこみ、全身へ送り届ける重要な役割を果たしている。赤血球の量や質が低下していると、体にうまく酸素が行き届かず、「酸素不足」の状態になる。 さらに、「物事に集中できない」「仕事が手につかない」といったメンタル不調があらわれている女性では、血清フェリチン(体内の貯蔵鉄)も低値だった。 うつ傾向の程度を判定するために用いられている調査票である「CES-D」でみたところ、うつ傾向のある女性では、血清フェリチンやヘモグロビンが低値であることも示された。フェムケアとフェムテックを通じた女性の課題解決
研究成果は、3月にオンラインで開催された「日本農芸化学会2023年度大会」で発表された。 「今回の健康ビッグデータの解析により、国内の50歳未満の女性のメンタル不調と、血中鉄関連成分との関係が明らかになりました」と、研究グループでは述べている。 「鉄分不足がメンタル不調の要因のひとつである可能性が示唆されました。気分がゆううつ、なんだか集中できない・・・といった心のもやもやを感じる方は、鉄分を補給することで、メンタル不調のサポートになると期待されます」。 「"フェムケア"や"フェムテック"を通じた、女性の健康課題の解決が期待されています」としている。
「ゆううつだ」「仕事が手につかない」といったメンタル不調が表れているグループの方が、赤血球数の平均値が有意に低値であり、鉄分不足とメンタル不調の関係性が示唆された。

「物事に集中できない」「仕事が手につかない」といったメンタル不調が表れているグループでは、血清フェリチンが有意に低値だった。さらに、メンタル不調があらわれているグループでは、血清フェリチンの平均値が25ng/mL未満であり、「鉄分不足」が認められた。

CES-Dが26点以上の抑うつ傾向グループでは、血清フェリチン、ヘモグロビンがともに低値であり、血清フェリチンは鉄分不足の水準以下(25ng/mL未満)、ヘモグロビンは貧血の水準以下(12g/dL未満)だった。

出典:大正製薬、2023年
平成21年国民健康・栄養調査報告 (厚生労働省)健康ビッグデータから「女性のメンタル不調」に「鉄分不足」が関係していることを明らかにしました (弘前大学健康未来イノベーション研究機構)
鉄分不足度チェック (大正製薬)
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