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月経痛は女性の重大な健康問題 月経痛が重いほど生活の質は低下 「月経をタブー視しない」
2023年04月10日

日本人女性を対象とした、月経痛と生活の質についての調査で、月経痛が重度な女性ほど、生活の質が低下していることが、広島大学の調査で明らかになった。
多くの女性が月経痛に悩まされており、重大な健康問題のひとつになっている。重度の月経痛は、身体的な側面のみならず、心理的・環境的な側面にも影響する。
月経痛の症状をやわらげる新しい治療法の確立、医療機関へのアクセスの容易化、女性の社会参加の促進など、社会的に取り組むことが求められている。
月経痛と生活の質の関係を明らかにする調査を実施
月経痛は、月経にともない経験する子宮由来の痛みのこと。多くの女性が月経痛に悩まされており、重大な健康問題のひとつになっている。 月経痛は近年、仕事の効率や学業成績などの低下に影響することが指摘されており、海外では月経痛と生活の質に関する調査が行われている。 これらの調査では、月経痛は、文化的・社会的背景が密接に関連しており、生活の質との関連については、国を超えて一般化することは難しいことが示されている。 日本でも、月経についてタブー視される傾向が強いことや、抑うつ症状を感じやすい女性が少なくないなど、月経痛に影響を及ぼしえる文化的・社会的背景が指摘されている。 日本では月経痛と生活の質の関係はいまだ明らかにされていない。こうしたギャップを埋めるために、広島大学の研究グループは、月経痛の重症度が日本人女性の生活の質にどう影響しているかを探るため、調査を実施した。 研究グループは今回、16~29歳の女性を対象に、オンラインでのアンケート調査を実施。主な内容は、月経痛と生活の質に関するものだった。有効回答495人のうち、471人が月経痛の有症者として判定された。月経痛が重度であるほど生活の質は低下
重度の月経痛は身体・心理・環境に影響
女性の軽度以上の月経痛の有症率は95.1%に上った。月経痛のある女性を、痛みの程度の評価にもとづき、軽度(156人)、中等度(249人)、重度(66人)に分類した。
月経痛の重症度別に、生活の質を比べたところ、月経痛が重度である女性ほど、生活の質が低下していることが明らかになった。
また、生活の質のスコアをさらに細かく分析したところ、月経痛が重度な女性は、身体的・心理的・環境的な生活の質をあらわす下位尺度のスコアが低下していることが示された。
これらから、重度の月経痛は、身体的な側面のみならず、心理的・環境的な側面も含み、全般的な生活の質を阻害することが示唆された。
重度の月経痛は、身体的な側面のみならず、心理的・環境的な側面も含む
月経痛の重症度ごとの生活の質の下位尺度の比較
重症の月経痛は女性の身体的・心理的・環境的な生活の質を低下させる

重症の月経痛は女性の身体的・心理的・環境的な生活の質を低下させる

出典:広島大学、2023年
新しい治療法・医療機関へのアクセスの容易化・女性の社会参加の促進が必要
今回の研究により、重度の月経困難症をもつ日本人女性は、生活の質が低い日常生活をおくっていることが浮き彫りとなった。 「この知見は、月経痛の症状を管理するための新しい治療法の確立、医療機関へのアクセスの容易化、女性の社会参加の促進など、制度の改善を設計するための基本情報として活用される予定です」と、研究グループでは述べている。 「今後は、月経痛を予防・軽減するための対応策の確立に向けて研究を続けていきます」としている。 研究は、広島大学大学院医系科学研究科スポーツリハビリテーション学の水田良実氏、前田慶明講師、田城翼氏、小田さくら氏、小宮諒氏、浦邉幸夫教授、九州栄養福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科の鈴木雄太氏の研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載された。 広島大学大学院医系科学研究科スポーツリハビリテーション学Quality of life by dysmenorrhea severity in young and adult Japanese females: A web-based cross-sectional study (PLOS ONE 2023年3月16日)
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