コロナ禍1~2年目の日本人を調査 社会的孤立は改善傾向も孤独感は増悪 SNSが必ずしも孤独を回避できるわけではない
東京都健康長寿医療センターの研究グループはこのほど、日本人のコロナ禍1年目と2年目の社会的孤立と孤独感の変化について調査した結果をまとめ、公表した。
社会的孤立は「人との接触や交流が著しく少ない状態」、孤独感は「人との接触や交流の欠如や喪失によって生じる好ましからざる感情」とし、コロナ禍による社会状況の変化で年代別、男女別にどのように変化したかを定量的に検証。結果からは、社会的孤立は改善傾向にあるが、孤独感は増悪していることが分かった。
本調査は2020年8〜9月と21年9〜10月にインターネットで実施。対象は全国15〜79歳までの男女で、20年調査は25,482人、21年調査は28,175人のデータを使っている。
設問では「別居の家族や親戚」と「友人・知人」それぞれとの対面交流、メッセージのやりとり、音声通話、ビデオ通話の頻度を尋ね、これらの合計が週1回未満であった場合を「社会的孤立」であると定義。
2020年調査では、コロナ流行前の2020年1月時点で社会的孤立者の割合は21.2%だったものの、新型コロナが流行中の8月時点では27.9%で、6.7ポイント増加していた。年代と男女別に比較すると、70歳代・男性がコロナ前の23.5%から流行中は34.0%に10.5ポイント増加し、男性であるほど、また、高齢であるほど程度が大きいことが分かっていた。
コロナ禍2年目にあたる21年調査では、社会的孤立者の割合は22.7%で、コロナ禍1年目に比べて4.7ポイント減っていた。
一方、孤独感は「UCLA孤独感尺度(3項目版、得点範囲:3-12点、得点が高いほど孤独感が強い)」を用いて測定。コロナ禍1年目は5.03点だったが、2年目は5.86点で0.83点増加していた。
これらの結果から研究グループは「コロナ2年目にかけて社会的孤立は改善しているものの、孤独感は憎悪している」と説明。社会的孤立は外出や人との交流が戻って改善につながった一方、長期にわたるさまざまな制約で、いわゆる"コロナ疲れ"から孤独感が増しているのでは、としている。
年齢別に分析すると、10代・20代はコロナ禍1年目において「社会的孤立の割合は低いものの、孤独感が著しく高い」結果が顕著に出た。これはSNS等のオンラインで人とのつながりは比較的保たれたものの、「『友人、上司・同僚に深い相談ができない』『表面的なやりとりしかできない』等の弊害が生まれ、結果として孤独感が高かった」と研究グループは分析。
しかし2年目には孤独感も他の年代と同等に落ち着いており、徐々に日常生活が戻ったことが改善につながったと見ている。
研究グループは「SNS等によるつながりで孤立状態を回避できたとしても、必ずしも孤独を回避できるわけではない」ことが分かった、として、今回の結果・分析が将来の予期せぬパンデミック発生時や、今後の社会のデジタル化に向けて大切な知見になるとしている。
「コロナ禍による社会的孤立は改善傾向だが、孤独感は増悪:5万人への全国調査より判明」(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター/2023年3月14日)
「ロナ禍では男性・高齢であるほど社会的孤立に陥りやすく、 孤独感に深刻な影響:約 3 万人への全国調査にて判明」(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター/2021年8月19日)
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