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「受動喫煙」の対策強化は十分に知られていない 非喫煙者の7割は「知らない」 国立がん研究センターが意識調査

 国立がん研究センターは、世界禁煙デーに合わせ、受動喫煙対策についての世論調査を実施した。

 法律が変わり、受動喫煙の対策が強化されているのにもかかわらず、喫煙者の39.2%、非喫煙者の70.3%が「十分には知らない」ことが示され、改正法の施行から3年が経過した現状で、なお普及啓発に課題があることが分かった。

 受動喫煙を不快と感じている人は、非喫煙者では77.2%、喫煙者でも36.2%に上り、とくに不快に感じる場所は「路上」が多かった。屋外での受動喫煙対策に対して課題がある。

 非喫煙者は、屋外や自宅などでの配慮義務として、喫煙者に対して「周囲に人がいる場所では喫煙しない」という配慮を求めている。

 店舗の入口の喫煙環境を示す標識について、「見たことがある」という人は、喫煙者の62.4%、非喫煙者の28.3%に上り、喫煙環境に対する意識が、タバコを吸うひとと吸わない人では大きく異なることも示された。

受動喫煙対策の強化 非喫煙者の7割は「知らない」

 タバコによる健康への悪影響は科学的に明白で、タバコは本人の健康を損なうだけでなく、家族など周りの人の健康にも悪影響を及ぼす。

 そのため、2020年の改正健康増進法の施行にともない、多数の人が利用する施設については原則として屋内禁煙となり、違反者への罰則も設けられた。

 また、喫煙専用室などを設置する施設の入り口には、喫煙環境を示す標識の掲示が求められ、標識を確認することでタバコの煙を避けることができるようになった。望まない受動喫煙が生じないよう配慮義務も求められている。

 しかし、国立がん研究センターの調査では、法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことについて、喫煙者は60.7%が知っていたが、非喫煙者は29.6%にとどまり、非喫煙者では知らない人が多いことが示された。

受動喫煙対策が強化されたことを知っている人は、とくに非喫煙者で少ない

「煙を避けるための喫煙環境を示す標識」を見たことのある人は34%にとどまる
「喫煙環境標識」は、受動喫煙対策の強化のポイントだったが、3年が経過した現状も、普及啓発に課題がある

出典:国立がん研究センター、2023年

タバコを吸う人でも36%が「他人のタバコの煙は不快」

 他人のタバコの煙にさらされることを不快と感じている人は、非喫煙者では77.2%、喫煙者でも36.2%に上り、受動喫煙で不快な思いをした場所としては、▼路上(64.1%)、▼屋外喫煙所の近く(34.3%)、▼食堂・レストラン・フードコートなどの主に食事を提供する店舗(31.2%)が多かった。

 店舗入り口の喫煙環境を示す標識について、「見たことがある」と回答した人は、喫煙者は62.4%、非喫煙者は28.3%と、喫煙環境に対する意識が大きく異なることも分かった。喫煙環境を示す標識を飲食店などで「見たことがある」という人も34.0%で、半数に満たない結果になった。

 調査は、法改正後3年が経過した現時点での、受動喫煙対策についての改正内容や標識の認知度、他人の煙に対する意識、屋内喫煙室や屋外喫煙所についての意識を把握することを目的に実施したもの。

 成人2,000人が回答し、うち喫煙者(毎日吸っている、または時々吸う日がある)は1,000人、非喫煙者(吸わない)は1,000人と18歳・19歳29人の計2,029人。

タバコの煙を「不快に思う」という人は70%超
喫煙者でもタバコの煙はやはり不快

出典:国立がん研究センター、2023年

4割以上が「タバコ税の引き上げ」を望んでいる

 法律が変わり受動喫煙対策が強化された内容のうち、知っていることとして、▼多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙になった(53.4%)、▼病院・学校・行政機関などの施設は、他の施設より規制が厳しく、屋内に喫煙室が設置できない(51.5%)、▼小規模飲食店では店によって喫煙できる店とできない店がある(51.2%)が多く挙げられた。

 法律では、屋外や自宅などでも、望まない受動喫煙を防ぐための配慮義務を求めている。良いと思う配慮としては、▼周囲に人がいる場所では喫煙しない(62.5%)、▼子供が同乗する自家用車内では喫煙しない(57.4%)、▼子供や患者などのとくに配慮が必要な人が集まる場所や近くにいる場所などでは喫煙しない(56.0%)が多く挙げられた。

 タバコ対策について、政府として力を入れて欲しいこととしては、▼タバコ税の引き上げ(41.9%)、▼受動喫煙対策の強化(41.5%)が多かった。

 「法律が変わり、受動喫煙対策が強化されたことについての認知・理解度は全体で3割台と低く、普及啓発に重要な課題があることが分かりました。一方、他人の煙を不快と感じる人の割合は高く、周囲に人がいる場所では喫煙しない配慮を求める意見が強いという結果が示されました」と、研究グループでは述べている。

 「他人の煙を不快に感じた場所としては路上が多く、屋内での受動喫煙対策は進んでいる者の、屋外での喫煙に対して課題がある傾向が示されました」。

 「具体的なタバコ対策の検討や実施にあたっては、国民世論の動向だけでなく、代替案やコスト、政策効果などを、政策の特性に応じて比較衡量する必要があります。今回の調査結果は、あくまで政策検討のための参考のひとつとしての位置づけになります」。

 「今後、さらにこの調査を発展させ、以下のような調査研究を行うことで、国民の健康づくりを促進し、喫煙率を下げるための具体的な政策提言へつなげることができると考えます」としている。

力を入れて欲しい「タバコ対策」

出典:国立がん研究センター、2023年

受動喫煙対策について法改正3年後の意識や課題を調査 受動喫煙対策強化について周知が不十分であり、普及啓発に課題 (国立がん研究センター 2023年5月31日)
禁煙支援担当看護職向け講習会プログラムの開発と実践 (国立がん研究センター)
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