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職場のストレスを早期発見 従業員のキーボードやマウスの操作からストレスを判定 職場の環境改善につなげる
2023年06月26日

企業などの従業員が、パソコンのキーボードやマウスのどう操作しているかをみるだけで、職場のストレスを判定できるという研究を、スイスのチューリッヒ工科大学が発表した。
慢性的なストレスを早期に発見し、職場の環境改善などの対策につなげられるようにすれば、働く人のウェルビーイングの向上につながるとしている。
職場のストレスを簡単に判定して適切な対策につなげる
パソコンのキーボードやマウスをどう操作しているかをみるだけで、職場のストレスを判定できるという研究を、スイスのチューリッヒ工科大学が発表した。 スイスの調査では、働いている人の3人に1人は、職場でのストレスに苦しんでいることが示されている。ストレスの影響を大きく受けている従業員は、自分の体や心のリソースが目減りしていることに気付きにくく、健康へのダメージが慢性化し、気付いたときには手遅れになっていたということも少なくないという。 「仕事関連のストレスが発生しやすい職場で、何がストレスの原因になっているかを早く特定し、適切な対策をすることが、働いている人のウェルビーイングを改善するために重要です。これは同時に、企業などの生産性を高めることもつながります」と、同大学でマーケティング技術を研究しているマラ ネーゲリン氏は言う。 そこで研究グループは、データ解析と機械学習の技術を応用して、パソコンのキーボードやマウスの操作をみるだけで、従業員がどれだけストレスを感じているかを知ることのできるプログラムを開発した。ストレスを感じている人は入力方法とクリック方法が異なる
研究グループは、ストレスを感じている人は、リラックスしている人に比べ、キーボードやマウスの動かし方が異なることを実験で証明。 たとえば、ストレスを感じている人は、マウスのポインタをより頻繁に動かすが、その動きは正確さを欠き、画面上でより長い距離を移動させる傾向があるという。 一方、リラックスしている人は、目的地に到達するために、より短くて直接的なルートを選択する。そうすると疲労が少なくなり、集中できる時間はより長くなる。 さらに、オフィスでストレスを感じている人は、キーボードのタイプミスが多い。多くの人は、突発的にキーボードを操作し、短い休止を何度も挟む傾向がみられる。 一方、リラックスしている人は、キーボードをタイプするときに、一時停止する時間が少なく、作業を行っている時間は長い。職場で働く人のストレスを早期に発見し適切な対策を実施
「キーボードの入力方法やマウスの動かし方が、オフィス環境でどの程度ストレスを感じているかを予測するのに適していることを明らかにしました。その精度は、心拍数の測定よりも高いとみられます」と、ネーゲリン氏は言う。 「こうした発見や技術を適切に実用化につなげれば、将来、職場で働く人のストレスを早期に発見し、適切な対策を実施できるようになる可能性があります」としている。 ストレスとキーボードやマウスの操作との関連は、いわゆる神経運動ノイズ理論で説明できるという。 「ストレスレベルの上昇は、脳の情報処理能力に悪影響をもたらし、これは運動能力にも影響します」と、同大学で心理学を研究しているジャスミン カー氏は説明する。 このストレスモデルを開発するために、研究グループは90人の参加者を対象に、できるだけ現実に近い職場環境で事務作業を行ってもらい、仕事の計画やデータを観察・記録し分析した。 参加者のマウスとキーボードの操作、心拍数などを記録し、参加者がどの程度ストレスを感じているかをテストした。ストレスレベルを簡単に予測できるアプリの開発へ
研究グループは現在、スイスの企業の従業員を対象に、職場でのマウスやキーボードの操作と心臓のデータを直接記録し、ストレスレベルを予測するアプリの開発につなげる研究に取り組んでいる。 一方、職場でのストレス検知では、データをどのように匿名化し、個人情報を保護するかという、やっかいな課題があることにもふれている。 「テクノロジーの進歩により、労働者のストレスを早期に特定することを支援するのは重要ですが、職場の監視体制を強めることが目的ではありません」と、カー氏は指摘する。 研究では、企業などの従業員とともに、倫理学者などにも参加してもらい、個人のデータを責任をもって取り扱うことを保証するために、アプリにどのような機能をもたせる必要であるかについても検討している。 Detecting stress in the office from how people type and click (チューリッヒ工科大学 2023年4月11日)An interpretable machine learning approach to multimodal stress detection in a simulated office environment (Journal of Biomedical Informatics 2023年3月)
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