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人とのポジティブな関係が体と心の健康を改善 他人からのサポートがうつ病リスクを軽減 社会的サポートは重要

 他者との親密な関係を築き、ポジティブな体験を重ねることは、身体的健康を高めるためにも有用であることを、パーソナリティ社会心理学会(SPSP)が発表した。

 社会的関係は身体の健康にも影響をもたらすことが知られているが、新しい研究では、他者との親密な関係で感じていることが、身体の機能に大きく影響していることが示された。

 ストレスの多い時期に、他人からサポートを受けることで、うつ病のリスクを軽減できるという研究も発表されている。

 「ストレスにさらされている人に、手を差し伸べてサポートすることは、いつだって良い考えです。この研究では、うつ病を発症するリスクの高い人に、社会的サポートを提供することが重要であることが示されました」と、研究者は述べている。

ポジティブな対人関係は体も心も健康に

 他者との親密な関係を築き、ポジティブな体験を重ねることは、身体的健康を高めるためにも有用であることを、米国のワシントンD.C.に本部があるパーソナリティ社会心理学会(SPSP)が発表した。

 社会的関係は身体の健康にも影響をもたらすことが知られているが、新しい研究では、他者との親密な関係で感じていることが、身体の機能に大きく影響している可能性が示された。

 「社会心理学とパーソナリティ科学の新しい研究では、それぞれの人が親密な対人関係で感じていることが、体の機能にも影響をもたらすことが分かってきました」と、ニュージーランドのオークランド大学で社会保健心理学を研究しているブライアン ドン氏は言う。

 「私たちの人間関係でのポジティブな体験とネガティブな体験の両方が、日々のストレスや、その対処法、血圧値や心拍数の反応性などの生理機能に影響を及ぼしています」としている。

対人関係でポジティブな体験の多い人はストレスも血圧も低い

 研究グループは今回、18歳以上の4,005人の参加者を対象に、スマートフォンやスマートウォッチを用いて3週間にわたり、血圧数・心拍数・ストレス・その対処法などを毎日チェックしてもらい、3日ごとに自分たちのもっとも近い対人関係について振り返ってもらい、ポジティブな体験とネガティブな体験について詳しく記録してもらった。

 その結果、対人関係でポジティブな体験が多く、ネガティブな体験が少ない人は、ストレスレベルが低く、ストレスへの対処も上手くいっていて、収縮期(最高)血圧の反応性が低く、日常​​生活での生理学的機能が良好である傾向が示された。

 ただし、多くの人は対人関係でポジティブな体験とネガティブな体験の両方を体験していて、そのストレスが生理機能にもたらす影響は、毎日浮き沈みがあることも分かった。

 「新型コロナのパンデミックで、前例のない困難や混乱、変化を体験した人が多くいます。新型コロナの拡大は、多くの人に緊張を生み出し、それにともなう人間関係の混乱や変動により、日常生活でのストレス、対処法、生理機能が間接的に影響を受けたと考えられます」と、ドン氏は指摘する。

 「毎日のポジティブおよびネガティブな対人関係での体験は、身体の健康に重要な影響を及ぼします。今後、新型コロナのような新たな感染症や、地域の災害などに備えるためにも、対人関係やストレスが神経内分泌系や交感神経系にもたらす生理学的反応のパターンについて明らかにする必要があります」としている。

他人からのサポートがあるとうつ病のリスクを軽減できる

 ストレスの多い時期に、他人からサポートを受けることで、うつ病のリスクを軽減できることが、米ミシガン大学医学部による別の研究で示された。

 「ストレスにさらされている人に、手を差し伸べてサポートすることは、いつだって良い考えです。この研究では、うつ病を発症するリスクの高い人に、社会的サポートを提供することが重要であることが示されました」と、同大学心理学部のジェニファー クリアリー氏は言う。

 研究グループは今回、多くのストレスにさらされている2つの異なるグループに協力してもらい、多遺伝子リスクスコアと呼ばれる遺伝的リスクの尺度を使い、うつ病のリスクについて調査した。

 1つめのグループは、米国の全国の病院で研修を受けている新任の研修医1,011人で、2つめのグループは、配偶者や家族と死別したばかりの435人の男女で、うち71%が女性だった。

 うつ病の症状は、研修医ではもっとも多忙な時期などに26%、家族を亡くした人では34%、それぞれ増加した。

 しかし、うつ病のリスクスコアの高い研修医や未亡人などは、ストレスの多い時期に社会的サポートを受けられると、うつ病の発生率が低下した。

 たとえば、夫を亡くした女性のなかには、配偶者を亡くした後、友人や家族に助けを求めたり、話を聞いてもらったり、手を差し伸べてもらった体験があり、社会的支援が増加したと報告した人が多かった。

手を差し伸べて社会的なつながりを維持・強化することが重要

 うつ病の遺伝的リスクが高いと判定された人は、社会的支援を受けられると、うつ病の症状がはるかに低くなった。社会的支援をえられた人は、遺伝的リスクが低い同世代の人に比べても、うつ病のスコアは低かった。

 しかし、社会的サポートを失った後では、いずれもうつ病の発生率は高くなった。

 「今回の研究は、多くのストレスを経験している人や、友人や親戚がストレスの多い時期を経験しているという人に対する、手を差し伸べて社会的なつながりを維持・強化することが重要であることを示すメッセージになります」と、クリアリー氏は述べている。

 「とくにうつ病リスクが高いと判定された人では、それを予防・改善するために、社会的つながりを保つことが重要であることが明らかになりました」としている。

 「社会的なつながりやサポート、社会環境に対する個人の感受性が、幸福とうつ病の予防の要素として重要であることがあらためて示されました」と、同大学家族うつ病センターのスリジャン セン所長は述べている。

 「うつ病の遺伝的プロファイルをさらに理解することが、社会的支援を失ったり、睡眠障害を抱えていたり、仕事で過度のストレスのある人に提供する、うつ病予防のための個別の指導を開発するのに役立つ可能性があります」としている。

パーソナリティ社会心理学会(SPSP)
Positive Experiences in Close Relationships Are Associated With Better Physical Health (パーソナリティ社会心理学会 2023年5月27日)
The Good, the Bad, and the Variable: Examining Stress and Blood Pressure Responses to Close Relationships (Social Psychological and Personality Science 2023年3月27日)
Support from others in stressful times can ease impact of genetic depression risk (ミシガン大学医学部 2023年1月13日)
Polygenic Risk and Social Support in Predicting Depression Under Stress (American Journal of Psychiatry 2023年1月11日)
[Terahata]
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