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【新型コロナ】コロナ禍で5歳の子供に4ヵ月超の発達の遅れ 子供の健康な発達のために何が必要?
2023年07月18日

5歳時点でコロナ禍を経験した子供では、そうでない子供に比べて、平均して4ヵ月を超える発達の遅れがみられることを、京都大学が明らかにした。
質の高い保育を提供する保育園に通っていた子供は、コロナ禍でも3歳時点の発達が良い傾向がみられたが、保護者が精神的な不調を抱える家庭の子供は、発達の遅れが顕著だった。
子供の健康な発達のためには、3歳時点では大人とのコミュニケーションが重要で、5歳時点では保護者以外の大人や他の子供とのふれあいにより、社会性を身につけることも重要になると、研究者は指摘している。
コロナ禍を経験した子供は5歳の時点で発達の遅れが
京都大学は、コロナ禍を経験した子供とそうでない子供のあいだで、3歳または5歳時の発達を比べる調査を行い、5歳の時点で、コロナ禍を経験した子供はそうでない子供に比べて、平均して4ヵ月を超える発達の遅れがあることを確認した。 一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ発達が進んでいる子供もみられた。また、コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになった 研究グループは、首都圏のある自治体の全認可保育所に通う、1歳または3歳の乳幼児887人を調査した。1回目の調査は2017年~2019年に、2回目の調査はその2年後に行った。 これまでの研究で、コロナ禍は子供の生活や健康に負の影響をもたらしたことが示されており、具体的には、コロナ禍で子供たちのあいだでメンタルヘルスの問題が増え、睡眠の質が下がり、運動不足や体重が増加する子供が増えたことなどが報告されている。また、コロナ禍で学力が下がった就学児も報告されている。質の高い保育を受けている子供は発達が良い傾向
研究は、京都大学、筑波大学人文社会系の深井太洋助教、慶応義塾大学、東京財団が共同で行ったもの。研究成果は、米国医学会が刊行する小児科分野のトップジャーナルである「JAMA Pediatrics」にオンライン掲載された。 研究グループは今回、コロナ禍以前から実施していた首都圏のある自治体の保育園児に対する調査を分析し、コロナ禍と乳幼児の発達の関連を調べた。 乳幼児の発達は、「KIDS乳幼児発達スケール」を用いて、保育士が客観的に評価した。分析では、子供の月齢、性別、1回目調査時の発達、保育園の保育の質、保護者の精神状態、出生時体重、家族構成、世帯所得、登園日数などの影響を考慮した。 その結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39ヵ月の発達の遅れが確認された。一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ運動、手指の操作、抽象的な概念理解、対子供社会性、対成人社会性の領域では発達が進んでいた。 さらに、質の高い保育を提供する保育園に通っていた子は、コロナ禍でも3歳時点の発達が良い傾向がみられた。一方、保護者が精神的な不調を抱える家庭の子は、コロナ過で5歳時点の発達の遅れが顕著だった。
子供の発達の個人差が拡大
コロナ禍と子供の発達の関連


出典:京都大学、2023年
大人とのコミュニケーションが大切
3歳時点でいくつかの領域で発達が進んだ理由のひとつとして、コロナ禍で保護者の在宅勤務が増えたことが考えられるとしている。 「この年齢の子供は、大人とのやり取りを通して、さまざまなことを学ぶため、大人との1対1のコミュニケーションが発達では重要です」と、研究者は述べている。 「在宅勤務によって、保護者が子供と密に接する時間が増えたことで、コロナ禍が3歳児の発達にポジティブな影響を与えた可能性があります」としている。 一方、5歳児は発達段階で、社会性を身につける時期であり、他者との交流が重要となる。「コロナ禍により、保護者以外の大人や他の子どもとふれあう機会が制限されたことが、発達に負の影響を与えた可能性があると考えています」と、研究者は指摘している。子供の発達の遅れは一時的なもの? 長期的な調査が必要
今回の研究では、コロナ禍を経験した子供で、5歳時点で発達の遅れが生じていることが示唆された。また、3歳、5歳ともに、発達の個人差・施設差が拡大していることも明らかになった。 「今回の研究は、ある自治体のご協力をえて、コロナ禍以前から認可保育所の悉皆調査を行い、保育士の方々に子供の発達を継続して計測いただいていたことから実現できました」と、研究者は述べている。 「今回の知見はあくまで一自治体のデータから得られたものであるため、他の自治体や国にも当てはまるかどうかは分かりません。また、コロナ禍を経験した群とそうでない群を比較する際に、結果にバイアスが生じている可能性があります」としながらも、「それでもなお、世界ではじめてコロナ禍と乳幼児の発達の関連を定量的に明らかにした点で、本研究には大きな学術的価値があると考えています」としている。 「今回の研究でみられた発達の遅れはあくまで一時的なものであり、長期的な影響に関してはさらなる調査が必要です。また、コロナ禍で発達の遅れが生じた子供に対し、積極的な支援を行うことが求められます。また、今後の感染状況に留意しつつ、なるべく速やかにコロナ禍前の保育環境に戻していくことが、乳幼児の発達のうえで重要です」としている。 筑波大学人文社会系京都大学医学部・医学研究科
Association Between the COVID-19 Pandemic and Early Childhood Development (JAMA Pediatrics 2023年7月10日) https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2807128
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