ニュース
「乳がん」は早期発見すれば9割が治るがんに がん検診を受けることが大切 マンモグラフィ検査も進化
2023年09月04日
乳がんは、日本でも女性がかかるがんのなかでもっとも多く、患者数は年々増加している。
一方で、近年は乳がんの治療が年々進歩しており、早期発見して適切な治療をすれば、9割が治るがんになっている。
「乳がんの治療は進歩しており、発症した女性の予後は大きく改善されています。そのために、がん検診を定期的に受け、乳がんを早期発見することが重要です」と、専門家は話している。
早期発見のためにはマンモグラフィ検査や超音波検査などを受けることが大切だ。AI(人工知能)によるサポートを活用した、より負担の少ない、新しいマンモグラフィの開発も進められている。
乳がんを早期に発見すれば死亡リスクは大幅に低下
がん検診を受け、早期に乳がんが発見され、治療を受けた女性は、診断後5年以内に乳がんにより死亡する可能性が大幅に低下していることが、英オックスフォード大学の研究で明らかになった。 乳がんにより死亡するリスクは、20年前に比べて66%も減少しているという。調査は、1993年~2015年に乳がんと診断された51万2,447人の女性を対象に行われた。調査は2020年12月まで追跡して行われた。 その結果、現在、乳がんと診断されたほとんどの女性の場合、5年間に乳がんによる死亡リスクは3%未満、つまり100人に3人未満であることが示された。 乳がんは、その広がり具合によって、治癒率や治療法が異なってくる。乳がんを早期に発見して、治療を開始すれば、腫瘍が比較的小さいうちに治療できるので、乳房の温存も可能になる。 がんが乳管・小葉を越えて、乳管の外にまで広がっている「浸潤がん」であっても、まだ転移のない早期のうちに治療をはじめれば、治癒を目指すことができる。乳がんの治療は進歩 がん検診を受けることが大切
調査では、1990年代に早期浸潤性乳がんと診断された女性では、診断後5年以内の死亡リスクは平均14%だったが、2010年~2015年に診断された女性では、その割合は平均5%まで改善していることも示された。 「乳がんの治療は進歩しており、発症した女性の予後が大きく改善されていることが明らかになりました。このことは、多くの女性にとって朗報となります」と、同大学腫瘍学部のキャロリン テイラー教授は言う。 「同時に、がん検診を定期的に受け、乳がんを早期発見することの重要さも示されました。乳がんを早期のうちに診断できれば、予後は大きく異なっていきます」としている。マンモグラフィ検査の欠点を改善するために
このように、患者数が年々増加している乳がんは現在、早くみつけて適切な治療をすれば、治る可能性が高いがんになっている。 早期発見のためにはマンモグラフィ検査や超音波検査などの検査を受けることが大切だ。日本では、乳がんの検診は、40歳以上の女性であれば2年に1度、自治体などで受けることができる。 このうちマンモグラフィは、乳房のしこりのほか、カルシウムの沈着による石灰化がないかどうかも確認される。 しかし、この検査は痛みをともなうことがある。また、乳房のX線写真を撮影するため、検査されるのは乳房だけに限られ、放射線量はとても少ないものの、やはり被ばくのおそれがある。 さらには、乳腺密度が濃い女性などは、偽陽性となることもある。偽陽性は、実際にはがんではないのに、がんの疑いがあると診断されること。偽陽性だった場合、不必要な検査などが増えるおそれがある。AIを活用した新しいマンモグラフィを開発
そこで、AI(人工知能)によるサポートを活用した、より被ばくや偽陽性の少ない、新しいマンモグラフィの開発も進められている。 スウェーデンのルンド大学は、AIを使用したマンモグラフィ検査の臨床試験を実施した。試験には、8万33人の女性が参加し、AI支援によるマンモグラフィ検査を受ける群と、通常の検査を受ける群に分けられ比較された。 その結果、AI支援によるマンモグラフィ検査により、偽陽性に影響を与えることなく、乳がんの検出精度が20%改善することが分かった。放射線科医の作業負荷も44%低減された。 「スウェーデンでは毎年、約100万人の女性がマンモグラフィ検査を受けています。スクリーニング検査は、いわゆるダブルリーディングと呼ばれるやり方で行われ、高感度が保証されています。しかし、放射線科医の人手不足などもあり、より効率的で安全なマンモグラフィが求められています」と、同大学病院で放射線診断を研究しているクリスティーナ ラング氏は言う。 「マンモグラフィ検査には、メリットもデメリットもあります。望ましいのは、デメリットを減らしながら、メリットを改善することです。乳がんの早期治療を実現するために、臨床的に重要ながんを迅速に発見する方法をみつけることが重要です」としている。 Women diagnosed with early breast cancer today are much less likely to die from the disease than 20 years ago (オックスフォード大学 2023年6月13日)Risk of breast cancer death after a diagnosis of early invasive breast cancer (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2023年6月13日)
AI-supported mammography screening is found to be safe (ルンド大学 2023年8月2日)
Artificial intelligence-supported screen reading versus standard double reading in the Mammography Screening with Artificial Intelligence trial (MASAI): a clinical safety analysis of a randomised, controlled, non-inferiority, single-blinded, screening accuracy study (Lancet Oncology 2023年8月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要