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健康診断でメタボを指摘されたら迷わず生活改善を メタボを放置すると心臓病や脳卒中のリスクが上昇

9月は「職場の健康診断実施強化月間」
 ▼ウエスト周囲径がやや大きい、▼高血圧、▼脂質異常、▼高血糖のなかで、3つ以上の不健康な特徴があてはまる人は、心臓病や脳卒中のリスクが35%高く、死亡リスクも30%高いことが、3万人超の40代と50代の成人を27年追跡した調査で明らかになった。

 「メタボリックシンドロームを指摘されても、自分は全体的には健康だと思いこんでいて、アドバイスを求めることもしない人が多くみられます」と、研究者は指摘している。

 「保健指導を受けるチャンスがあったら、面倒がらずに参加することも大切です。医師や専門職によるアドバイスは、食事や運動などの生活スタイルを見直すうえでとても役に立ちます」としている。

健診でメタボを指摘されても「自分は健康」と思いこむ人が多い

 ▼ウエスト周囲径がやや大きい、▼高血圧、▼脂質異常、▼高血糖のなかで、3つ以上の不健康な特徴があてはまる中年成人は、心臓病や脳卒中の発症が2年早まるという調査結果が、欧州心臓病学会(ESC)の年次学術集会で発表された。

 「40代と50代の人は、腹部に脂肪がたまっていたり、血圧やコレステロール、血糖値が高くなっていることが多いのですが、そのいずれもが低レベルであると、健診で異常を指摘されても、健康リスクを意識できないことが多いのです」と、スウェーデンのヴェストマンランド郡病院のプライマリケア医であるレナ レンバーグ氏は言う。

 「そういう人は、自分は全体的には健康だと思いこんでいて、医師などにアドバイスを求めることもしない傾向がみられます」としている。

 メタボリックシンドローム(メタボ)は、内臓脂肪が多く腹囲が太めであることに加え、血圧・血糖・血中脂質のいずれかがやや高い状態。

メタボと判定された人は心臓病・脳卒中・死亡のリスクが高い

 「メタボは、健康障害の危険因子が集まったもので、薬を使ってそれぞれの構成要素のレベルを大幅に下げる必要はありません。そのため異常を指摘されても、"たいしたことはない"と思い、何年ものあいだ放置してしまっている人が多くみられます」と、レンバーグ氏は指摘する。

 しかし、スウェーデンで1990年~1999年に40代と50代の成人3万4,269人(47%が女性)を対象に実施された心臓血管スクリーニングの調査では、メタボと判定された人はそうでない人に比べ、27年(中央値)の追跡調査中で心臓病や脳卒中のリスクが35%高く、死亡リスクも30%高いことが示された。

 メタボの中年成人はそうでない人に比べ、心筋梗塞や脳梗塞などを発症するのが、平均して2.3年早いことも分かった。男性だけでなく40代の女性でも、高血圧が大きなリスク因子となることが示された。

 メタボと判定された場合、動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなっているので、食事や運動などの生活スタイルを改善することが必要となる。

健診を受け異常を指摘されたら生活を見直すことが大切

 「メタボは、西欧諸国でも深刻化しており、将来の健康障害につながるリスクをためこんでいる人が多くいます。若いうちから食事や運動を改善していれば、年齢を重ねてから心臓病や脳卒中を発症するのを防ぐことができます」と、レンバーグ氏は言う。

 心臓病や脳卒中、早死のリスクを減らすために、健康診断の機会があれば、たとえ体調不良を感じていなくとも、必ず受けることが大切だという。

 健診で検査値の異常を指摘されたら、食事や運動などの生活スタイルを見直し、喫煙習慣のある人は禁煙し、受動喫煙も避け、さらには自分の体重や腹囲、血圧などに注意をはらうことが大切だとしている。

 「保健指導を受けるチャンスがあったら、面倒がらずに参加することも大切です。医師や専門職によるアドバイスは、食事や運動などの生活スタイルを見直すうえでとても役に立ちます」と、レンバーグ氏は指摘する。

 「何もしないでいるのは、大きな機会損失になります。年齢を重ねてから心臓病や脳卒中を発症する人が多いのですが、その多くは早くから対策をしていれば避けられたはずのものです」としている。

3万人超の40代と50代の成人を27年追跡して調査

 プログラムに参加した40代と50代の成人3万4,269人は、かかりつけの医療機関で、看護師による臨床検査を受けた。検査は、身長・体重・血圧・総コレステロール値、血糖値、ウエストとヒップの周囲径の測定が含まれていた。また、生活スタイル、心血管疾患や糖尿病の既往歴、教育などの社会経済的要因についてのアンケートにも回答した。

 研究グループは、以下のうち3つ以上を満たしている場合にメタボと判定した。(1) 腹囲が男性で102cm以上、女性で88cm以上、(2) 総コレステロール値が110mg/dL以上、(3) 収縮期(最高)血圧が130mmHg以上および/または拡張期(最低)血圧が85mmHg以上、(4) 空腹時血糖値が101mg/dL以上。

 参加者のうちメタボの基準を満たしていたのは15%(5,084人)だった。メタボと判定されなかった19%(1,904人)を対照群として比較したところ、27年(中央値)の追跡調査中に、メタボの人は、心臓病と脳卒中のリスクが35%高く、死亡するリスクは30%高いことが明らかになった。

 心筋梗塞や脳卒中などの非致死性の心血管イベントを、メタボ群の32%が発症したのに対し、対照群では22%であり、メタボ群では心臓病や脳卒中のリスクが35%高いことが示された。

 最初の非致死性の心臓病や脳卒中までの期間の中央値は、メタボ群で16.8年、対照群で19.1年となり、2.3年の差があった。

Cluster of slightly unhealthy traits linked with earlier heart attack and stroke (欧州心臓病学会 2023年8月25日)
Risk factors and prevention: epidemiology (欧州心臓病学会2023年学術集会 2023年8月)
[Terahata]
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