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日本人は「睡眠不足」 良い睡眠はメンタルヘルスも高める 快眠に必要な2つのこととは?

 心身の健康を保つために、質の高い十分な睡眠をとることが必要だ。

 日本は先進国のなかで、睡眠時間がもっとも少ない。「日中に眠気を感じる」「睡眠全体の質に満足できない」「睡眠時間が足りない」と感じている人も多い。

 質の高い十分な睡眠をとると、うつ病や不安に対する回復力を高まり、メンタルヘルスが高まることが分かった。

 睡眠を改善する2つの方法も明らかになっている。

日本人の睡眠時間は足りていない 睡眠の質にも不満が

 心身の健康を保つために、質の高い十分な睡眠をとることが必要だ。健康日本21でも目標項目のひとつに、睡眠による休養が十分とれていない人の割合を減らすことがあげられている。

 しかし、経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査では、日本は先進国のなかで、睡眠時間が7時間22分ともっとも少ない。

 対象となった33ヵ国の睡眠時間の平均は8時間28分で、日本の睡眠時間の短さは際立っている。

 国民健康・栄養調査でも、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性が37.5%、女性は40.6%と多いことが示されている。

 自分の睡眠の質についても、「日中に眠気を感じる」「睡眠全体の質に満足できない」「睡眠時間が足りない」と感じている人が多い。

質の良い睡眠はうつ病や不安に対する回復力を高める

 質の高い十分な睡眠をとることは、なぜ必要なのか? 英国のヨーク大学の研究によると、質の高い睡眠は、うつ病や不安に対する回復力を高めるのに役立つ。

 慢性的なストレスはメンタルヘルス不調の原因になるが、質の高い睡眠をとることで、ネガティブな経験やストレスの多い場面に直面しても、状況のポジティブな面を捉えられるようになり、メンタルヘルス不調を防げるようになるという。

 とくに新型コロナのパンデミックの時期は、多くの人が長期のストレスにさらされたが、質の高い睡眠をとれている人は、メンタルヘルス不調が少ないことが示された。

 研究は、米ボストン大学が実施したコロナ禍での睡眠と健康との関連を調べた研究に参加した600人以上のデータを解析したもの。

 「睡眠の質が良い人ほど、コロナ禍の時期も、うつ病と不安の両方の症状が少なかったことが分かりました」と、同大学心理学部のエマ サリバン氏は言う。

 「睡眠は慢性ストレスの管理で非常に重要な役割を果たしています。ストレスに苦しむ人をサポートするうえで、前向きに対処できるようなるよう支援するとともに、睡眠を改善することが重要です」としている。

ウォーキングなどの運動を行うと睡眠の質は改善

 それでは、睡眠を改善するために、どんな方法が役立つのか? 米国のオレゴン州立大学の別の研究によると、ウォーキングなどの活発な運動を、週に150分以上行うと、睡眠の質は大幅に向上し、日中の注意力も高められる。

 「運動を習慣として行うことは、薬などに頼らずに睡眠を改善できる、効果的な手段となることが示されました」と、同大学の運動科学部のブラッド カーディナル教授は言う。

 研究グループは、18歳~85歳の3,081人の男女を対象としたデータから、運動ガイドラインに定められた週に150分間の中強度から高強度の運動を実行している人は、睡眠の質が高いことを明らかにした。

 運動をしている人は、運動をしていない人に比べて、日中に過度に眠気を感じることが35%少なく、疲れたときに集中するのが困難になることも45%少ないことも分かった。

 運動や身体活動に参加し、睡眠を改善し、日中の眠気を減らすことで、個人の仕事の生産性にプラスの影響があらわれ、学生の場合は学習能力を高める効果も期待できるという。

 「米国成人の35%~40%が、入眠や日中の眠気の問題を抱えています。運動を行うことは、心臓血管の健康などを高められるだけでなく、睡眠などの精神面にも波及効果をもたらす可能性があります」と、カーディナル教授は述べている。

食事で睡眠を改善 ジャンクフードは睡眠を妨げる

 睡眠を改善する効果の高い方法はもうひとつある。それは食事スタイルを改善することだ。

 スウェーデンのウプサラ大学の別の研究によると、高カロリーで栄養価の低いジャンクフードを食べるのを止めると、睡眠の質を高められる可能性がある。

 「食事は健康を維持するためにとても重要です。不健康な食事と睡眠不足は、ともに公衆衛生上のリスクを高めています。食事による健康への影響は、睡眠にもあらわれると考えられます」と、同大学の内科および医学細胞生物学のジョナサン セデルネス氏は言う。

 研究グループは、15人の健康な男性を対象に、ランダムに健康的な食事をする期間と不健康な食事をする期間に、それぞれ1週間の期間を設けて振り分けて、食事が睡眠にどのように影響するかを調べた。

 2つの食事はカロリーが同じで、1日の必要量に合わせて調整してあったが、不健康な食事は加工食品が多く、糖質や飽和脂肪酸が多く含まれ、食物繊維は少なかった。

 その結果、参加者の睡眠の質は、不健康な食事をとった後では低下し、健康的な食事をとった後では改善することが明らかになった。

 「食事で何を食べるかは、健康にとって大変に重要です。これまでの研究でも、食事で糖質をとりすぎると、睡眠不足につながりすいことなどが示されています」と、セデルネス氏は指摘する。

 「睡眠は、私たちが食べるものによって影響を受けている可能性があります。もしも質の良い睡眠をとれていなかったり、十分な睡眠をとれていないという人は、ご自分の食事スタイルを見直すことをお勧めします」としている。

良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと (厚生労働省 2023年3月)
国民健康・栄養調査 (厚生労働省)
High-quality sleep promotes resilience to depression and anxiety (ヨーク大学 2023年7月13日)
The influence of emotion regulation strategies and sleep quality on depression and anxiety (Cortex 2023年9月)
Physical activity impacts overall quality of sleep (オレゴン州立大学 2011年11月22日)
Association between objectively-measured physical activity and sleep, NHANES 2005-2006 (Mental Health and Physical Activity 2011年11月)
Junk food may impair our deep sleep (ウプサラ大学 2023年5月31日)
Exposure to a more unhealthy diet impacts sleep microstructure during normal sleep and recovery sleep: A randomized trial (Obesity 2023年5月28日)
[Terahata]
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