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仕事と育児の両立支援制度 半数近くが「利用したことがない」―日本労働組合総連合会

 日本労働組合総連合会(連合、芳野友子会長)は2023年9月に、インターネットによる「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」の結果を取りまとめ、公表した。

 育児休業や短時間勤務制度、産後パパ育休などの制度がどの程度、利用されているか調査したものだが、「利用したことはない」とする回答が半数近くに上っており、より一層、両立支援制度を利用しやすい環境づくりが求められている。

「利用したことのある制度がない」男性は約6割

 仕事と育児の両立支援制度に対する意識や実態を把握するのが目的。インターネットで2023年8月、小学生以下の子どもがいる20〜59歳の働く男女1,000人から回答を得た。正社員のみならず、派遣や契約社員、嘱託職員やパート、アルバイトなども含まれている。

 調査の結果、仕事と育児の両立のために利用したことがある両立支援制度について尋ねた設問では、「育児休業」が41.9%で最多。一方で、「利用したことのある制度はない」と答えた人は47.8%と半数に近い。

 特に男性で「利用したことのある制度はない」と答えた人の割合が58.4%と高く、「育児休業」は25.4%、「短時間勤務制度」は6.8%、「産後パパ育休」を利用した人は11.0%にとどまった。

出典:日本労働組合総連合会「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」

 「産後パパ育休」は男性のみを対象とした出生時育児休業で、子どもの出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できる。既婚または事実婚の女性に、パートナーが産後パパ育休を取得したか聞いたところ、「取得した」は15.2%しかいなかった。

 仕事と育児の両立のための両立支援制度を利用しなかった人について、その理由を尋ねると、「利用できる職場環境ではなかった」が42.3%と突出して多かった。次いで多かったのは「所得が下がる」(19.7%)、「制度があるのを知らなかった」(17.4%)など。

 雇用形態別に見ると、「取得できる職場環境ではなかった」と答えた非正規雇用者の割合は、正規雇用者に比べて5.4ポイント高かった。一方、「所得が下がる」と答えたのは正規雇用者の方が非正規雇用者の割合より7.5ポイント高かった。また「休業・休暇以外の制度で仕事と育児の両立をはかった」と答えた正規雇用者の割合は11.2%で、非正規雇用者の1.3%に比べて高い割合を示した。

 「利用できる職場環境ではなかった」と回答した人に理由を尋ねたところ、「代替要員がいなかった」(39.6%)、「職場の理解が低かった」(33.7%)、「言い出しにくかった」(26.2%)などが多かった。さらに正規雇用者だけで見ると「代替要員がいなかった」は44.6%、「自分にしかできない業務を担っていた」が26.9%と、非正規雇用者よりそれぞれ10ポイント以上高く、連合では「正規雇用者では、業務が属人化しているために制度の利用がしづらくなっているケースが多いのでは」と分析している。

女性のキャリアのフォローについても検討が必要

 両立支援制度を利用する女性のキャリアを阻む要因として考えられることは何か、を聞いた設問では「保育所・学童保育の整備不足」が33.6%で最多。続いて「職場復帰後のフォローがない」(28.5%)、「育児を理由として重要な仕事が与えられない」(24.7%)、「育児休業中に職場の情報提供が行われていない」(23.6%)といった回答が続き、育児との両立を目指す女性のキャリアを会社側がどうフォローするかが問われている。

出典:日本労働組合総連合会「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」

 厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」における男性の育休取得率は17.13%で過去最高だったが、政府が25年までの目標として掲げる50%には開きがある。

 一方、育児・介護休業法が改正され、従業員1,000人超の企業に年1回、男性労働者の育児休業取得状況について公表が義務化された。7月末に発表された3月末決算企業の男性育休取得率は46.2%となっている。

 今回の調査では、ほかに政府が推奨する"共働き・共育て"を実現するために効果的だと思うことや、育児・介護休業法に基づく各制度に対する意識や実感についても聞いている。

「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」について(日本労働組合総連合会/2023年9月14日)
[yoshioka]
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