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睡眠を改善するとメンタルヘルスが改善 認知症を予防するのにも有用 【睡眠を改善する7つの方法】

 日本人を含むアジア人は、全体に就寝時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっているという国際調査の結果が発表された。

 とくに日本人の睡眠のとり方は、35ヵ国で最低であることも示された。

 良い睡眠をとれていると、ネガティブな経験やストレスの多い環境に対処しやすくなり、気持ちがポジティブになり、メンタルヘルスを改善するのにつながることが示されている。

 睡眠を改善することは、認知症を予防するのに有用という研究も発表された。

 睡眠を改善するために、毎日のルーティンを見直して、最適化することが大切だ。

 専門家は、睡眠を改善するための7つの方法を紹介している。

日本人の睡眠のとり方は35ヵ国で最低

 日本人を含むアジア人は、全体に就寝時間が遅くなり、睡眠時間が短くなっているという国際調査の結果が発表された。睡眠の質も低下しているという。

 とくに日本人の睡眠のとり方は、35ヵ国で最低であることも示された。日本では、平日と休日の睡眠時間に大きな差があり、平日に十分な睡眠をとれないので、休日に「寝だめ」する人が多い傾向があるという。

 研究は、シンガポール国立大学などによるもの。研究グループは、腕に巻くタイプのヘルストラッカーにより収集された、35ヵ国の30~55歳の成人22万人超の睡眠データを解析した。

 「アジアに住む人々は、世界の他の地域に比べて、睡眠時間が短い傾向があることが分かりました。睡眠は重要な健康問題であり、睡眠を改善することで、健康や幸福度、日中の仕事のパフォーマンスも向上できます」と、同大学睡眠認知センターの所長であるマイケル チー教授は言う。

質の良い睡眠でメンタルヘルス対策

 質の良い睡眠をとれていると、ネガティブな経験やストレスの多い環境に対処しやすくなり、気持ちがポジティブになり、メンタルヘルスを改善するのにつながることが、英ヨーク大学の研究で明らかになった。

 研究グループが、2020年の新型コロナのパンデミック中に、600人以上の参加者から得た睡眠と健康に関するデータを調査した結果、質の良い睡眠をとれている人は、うつ病や不安症の症状が少ないことが示された。

 「新型コロナのパンデミックは、世界中の人々に長期的なストレスをもたらしましたが、睡眠を改善することが効果的な対処法となる可能性が示されました」と、同大学心理学部のエマ サリバン氏は言う。

 「慢性的なストレスを経験していると、うつ病や不安症のリスクが高まりますが、良い睡眠をとれていると、回復力を高められると考えられます」としている。

睡眠を改善すると認知症を予防できる可能性も

 睡眠を改善することは、認知症を予防するのに有用だという研究も発表された。

 睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠に分類されるが、ノンレム睡眠のうちとくに深い睡眠は「徐波睡眠」と呼ばれており、熟睡感などと関連があるとされている。

 この深い睡眠である徐波睡眠が、年間にわずか1%減少しただけで、認知症のリスクは27%上昇することが、オーストラリアのモナッシュ大学の研究で明らかになった。

 「徐波睡眠は、さまざまな面で脳の老化をサポートしており、アルツハイマー病の原因になるタンパク質が脳内から除去されるのを促すなど、脳の代謝老廃物を除去するのに役立っていると考えられます」と、同大学脳・メンタルヘルス研究所のマシュー ペイス氏は言う。

 「睡眠を改善することが、認知症の予防や改善につながる可能性があります」としている。

 研究グループは、60歳以上の高齢者346人を対象に、1995年~1998年と2001年~2003年に睡眠について測定し、その後の認知症の発症について17年間追跡して調査した。

睡眠を改善するための7つの方法

 十分な睡眠をとることは、体と心を健康にするために不可欠だが、多くの人が、良い睡眠をとるのを困難に感じている。

 良質な睡眠とさわやかな目覚めは、いきいきとした毎日の生活リズムをつくり出し、ホルモン分泌の調整や、免疫機能の向上にもつながる。

 「睡眠について悩みがあるのなら、毎日のルーティンを見直して、良い睡眠をとるために最適化することをお勧めします」と、米ミシガン大学睡眠障害センターのロナルド チャービン氏は言う。

 チャービン氏は、睡眠を改善するための7つの方法を紹介している。

睡眠を改善する7つの方法

1快眠は規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。
 体内時計を整え、体を睡眠に導くために、朝食をしっかりとり、夜食は控えめにするなど、健康的な食事スタイルが大切。適度な運動をする習慣も、睡眠の質を高めるのに役立つ。

2眠れないときもくよくよ考えない

 適切な睡眠時間には個人差があり、季節や年齢によっても変動する。良く眠れない夜があっても、時計をみつめたり、くよくよと考えることをしないで、リラックスして過ごすようにする。
 睡眠が足りているかは、日中の活動状態を目安にして判断する。日中にしっかり目覚めて活発に過ごせていれば睡眠は足りている。

3睡眠前のカフェインやアルコールの摂取は避ける

 就寝前にカフェインを摂取すると、入眠が妨げられる。就寝の3〜4時間前には、コーヒーなどカフェインを含む飲料を飲まないようにする。
 また、睡眠薬の代わりにアルコールを飲むと、夜中に目が覚めてしまう「リバウンド効果」が起こり、かえって睡眠の質を悪くする。就寝の2~3時間前には、アルコールを飲まないようにする。

4入浴して深部体温を上げる

 入浴には加温効果がある。就寝1~2時間前に入浴すると、体の奥の体温である「深部体温」が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
 寝る少し前に深部体温をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。

5リラックスできる方法を取り入れる

 眠る前に、軽い読書、音楽、軽いストレッチなど、自分に合ったリラックスできる方法をみつけて取り入れる。
 眠ろうとする意気込みはかえって逆効果になることがあるので、眠れないときは無理に眠ろうとせず、リラックスできる方法を試しみて、眠くなるのを待つ。

6朝は日光を浴びて体内時計のスイッチを入れる

 朝に太陽光を浴びると、体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。
 週末などの休みの日も、なるべく平日と同じ時刻で起床するよう心がける。

7「睡眠アプリ」を活用する

 睡眠を記録し、傾向を分析することで、睡眠の習慣を振り返ることのできる、さまざまな「睡眠アプリ」やウェアラブルデバイスが出ている。
 睡眠の量・質・リズムなど、計測した自分の睡眠データをチェックすることが、睡眠の質を改善するきっかけを作ることがある。

 「睡眠障害は、体や心の病気のサインである場合もあります。なかなか寝付けない、熟睡できない、十分に寝ているはずなのに日中に眠気が強い、睡眠中にいびきや歯ぎしりがある、足にむずむず感があるといった場合は、専門家に相談することをお勧めします」と、チャービン氏はアドバイスしている。

Sleep data from over 220,000 people reveal global differences in weekly sleep variability and sleep extension (シンガポール国立大学 2023年8月29日)
Country differences in nocturnal sleep variability: Observations from a large-scale, long-term sleep wearable study (Sleep Medicine 2023年10月)
High-quality sleep promotes resilience to depression and anxiety (ヨーク大学 2023年7月13日)
The influence of emotion regulation strategies and sleep quality on depression and anxiety (Cortex 2023年9月)
Improving deep sleep may prevent dementia, study finds (モナッシュ大学 2023年10月31日)
Association Between Slow-Wave Sleep Loss and Incident Dementia (JAMA Neurology 2023年10月30日)
How to fall asleep faster: A step-by-step guide with advice from experts (ミシガン大学睡眠障害センター 2023年3月9日)
Choose Sleep (米国睡眠医学会)
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