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【新型コロナ】マスク着用率の低下により社会全体の感染が収束しにくくなる 感染対策の緩和は逆効果?

 東北大学は、社会のマスク着用率が減るほど、集団免疫閾値は増加し、感染が収束しにくくなることや、社会全体でマスクが着用されている状況であれば感染を免れたはずの市民が、脱マスク下では感染症に少なからず罹患することなどを明らかにした。

社会のマスク着用率が減るほど新型コロナ感染は収束しにくくなる

 東北大学は、社会のマスク着用率が減るほど、集団免疫閾値は増加し、感染が収束しにくくなることや、社会全体でマスクが着用されている状況であれば感染を免れたはずの市民が、脱マスク下では感染症に少なからず罹患することなどを明らかにした。

 一般的に感染やワクチンなどにより、感染症に対して有効な免疫をもつ市民の割合が増えると、感染流行は止まりやすくなる。集団免疫閾値は、社会のなかでどの程度の割合の市民が有効な免疫をもつ状態に変われば、感染がピークアウトするかを示すもので、閾値が高くなるほど、その感染症は収束しにくくなる。

 研究グループは今回、理論疫学の一般性ある定理にもとづき、マスク着用が新型コロの(広義の)集団免疫に及ぼす影響を計算することで、社会的感染対策の強度が感染症の集団免疫閾値に及ぼす影響を明らかにした。

 理論疫学では、感染の波がはじまったときの実行再生産数(1人の患者が平均何人に感染させるかを示す数)と集団免疫閾値の関係がすでに得られている。

 感染対策を緩和すれば基本再生産数が増えるため、この関係を用いて、感染対策の緩和と集団免疫閾値の関係を理論的に導くことが可能になる。

 さらに、マスクの着用による感染抑制効果の疫学データを用いて、マスク着用状況と基本再生産数との関係を見積もることができる。

 そこで研究グループは、米国疾病予防管理センター(CDC)などが公表している最新の疫学研究論文のデータなどを参照することで、マスク着用と基本再生産数の関係を導き、基本再生産数と集団免疫閾値の関係式に加えることにより、マスク着用率などの感染対策強度と、集団免疫閾値の関係を求めた。ここでは、パンデミックで一度感染をした人は、その期間中は再感染しないと仮定した。

 その結果、以下の2つの結論が示された。

  1. 社会のマスク着用率が減るほど、(一時的)集団免疫閾値が増加する。すなわち、感染は収束しにくくなる。
  2. 社会全体でマスクが着用されている状況であれば、感染を免れたはずの市民が、脱マスク下では感染症に少なからず罹患する(本人がマスク着用時も含む)。

マスク着用率と感染ピークまでの感染率 (集団免疫閾値)
マスク着用率が減ると感染ピークに達するまでの閾値が上がるため、市民全員がマスクを着用している状況であればピークアウトする感染率に達しても、さらに感染が拡大することになる。

出典:東北大学、2024年

 研究は、東北大学大学院理学研究科の本堂毅准教授らによるもの。研究成果は、日本臨床環境医学会が刊行している「臨床環境医学」に掲載された。

 「特定条件での結果を導くシミュレーション研究とは異なり、本研究は一般性のある理論的解析で結果を導いているため、多様な条件下でも(程度の差はあるものの)同様の結論を与えることが確認できます。そのため、この結果は、新型コロナと同様の性質をもつ将来のパンデミックスでも成り立つ普遍的な知見です」と、研究者は述べている。

東北大学大学院理学研究科
感染防止対策緩和による集団免疫閾値の上昇:呼吸器ウイルス感染症での脱マスクを例に (臨床環境医学 2024年)

[Terahata]
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