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加工食品の添加物が腸内細菌に悪い影響をもたらす? 食品保存料の使い方によって腸内フローラを乱すおそれが
2024年02月13日

加工食品の添加物として加えてある保存料などが、腸内の善玉菌に影響を及ぼし、腸内のマイクロバイオームの健康なバランスを乱しているおそれがあるという研究が発表された。
「今回の研究は、食品保存料の抗菌活性が、腸内細菌叢にも影響をもたらし、私たちの腸の健康にも関わる可能性があることを示した最初のものです」と、研究者は述べている。
「そうした抗菌活性の悪影響を取り除いたり、逆に腸の健康を高める方法を開発することが望まれます」としている。
加工食品の保存料が腸内環境に影響
加工食品の添加物として加えてある保存料などが、腸内の善玉菌に影響を及ぼし、腸内のマイクロバイオームの健康なバランスを乱しているおそれがあるという研究を、米シカゴ大学が発表した。 食品会社は、食品の鮮度を保つために、食品に保存料を添加することが多い。保存料を使う目的は、食品の腐敗や変敗の原因となる微生物が増えるのを抑え、保存性を高めること。 微生物の中には、食中毒の原因となるものもあり、これらが増殖した場合は、食中毒のリスクが高まる。保存料には殺菌効果はないが、食中毒の原因になる微生物を増えにくくする効果がある。 食品の保存性を高めることで、広範囲に輸送できるようになり、廃棄の低減にもつながる。加工食品に使われている保存料は、安全性に加え、食品の安全を守るという有用性が評価されている。 保存料のすべてが化学的に合成されたものとはかぎらず、塩・アルコール・酢・砂糖などの天然の調味料も、何世紀にもわたって保存料として利用されている。 関連情報食品保存料は使い方によっては腸内細菌に良くない?
しかし、「食品保存料は使い方によっては、腸内細菌叢に好ましくない影響をもたらす可能性があります」と、研究者は指摘している。 たとえばナイシンは、多くの国で保存料として、チーズ・乳製品・ハンバーグ・ハム・ソーセージ・卵加工品・菓子・缶詰などに広く使われている。 ナイシンは、熱処理された食品の抗菌性を高める保存料で、食品の風味にほとんど影響を与えることがなく、一般的に安全と認められているが、不適切な使用を長期間続けると、耐性菌が生じる可能性があると指摘している。 「ナイシンは長いあいだ、食品添加物として利用されているペプチドですが、長期間の摂取により、私たちの腸内細菌叢にどのような影響をもたらしているかは十分に分かっていません」と、同大学生物科学部でマイクロバイオームなどを研究しているジェンルン チャン氏は言う。保存料のナイシンが腸内細菌に大きく影響
体のなかには、約1,000種類の細菌が棲んでいて、食文化や疾患の有無、さらには個人ごとに異なることが分かってきた。こうした腸内細菌の個人に特有のパターンは、腸内細菌叢(腸内フローラ)として知られている。 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、消化吸収を助けたり、悪玉菌の増殖・定着を防いだり、免疫力を活性化し、健康維持や老化防止に役立つ働きをしている。 腸内菌が体に有益な代謝物を生み出すことも分かってきた。医療では、腸内細菌叢のバランスを健常者のものに近づけることで、腸などの疾患の改善を目指す研究も行われている。 乳酸菌はさまざまな抗菌物質を生産しており、そのなかにバクテリオシンと呼ばれる抗菌性ペプチドあり、ナイシンもそのひとつだ。 研究グループは今回、ナイシンには同種や類縁種に対する抗菌活性があり、腸内細菌に対して大きな影響をもたらしていることを突き止めた。腸内フローラは微妙なバランスによりできている
「腸内細菌叢は微妙なバランスによりできており、抗菌性のある食品保存料によって、善玉菌と悪玉菌のバランスが乱れたり、腸内の状態により無害であったり有益な働きをする日和見菌が悪い働きをするようになる可能性も考えられます」と、チャン氏は指摘している。 「今回の研究は、食品保存料の抗菌活性が、腸内細菌叢にも影響をもたらし、私たちの腸の健康にも関わる可能性があることを示した最初のものです。そうした抗菌活性の悪影響を取り除いたり、逆に腸の健康を高める方法を開発することが望まれます。食品保存料の1日許容摂取量についても見直す必要がある可能性もあります」としている。 食品添加物 (厚生労働省)食品安全委員会 添加物専門調査会 Common food preservative has unexpected effects on the gut microbiome (シカゴ大学学生物科学部 2024年2月2日)
Activity of Gut-Derived Nisin-like Lantibiotics against Human Gut Pathogens and Commensals (ACS Chemical Biology 2024年1月31日)
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