フレイルとうつ症状を併存すると死亡リスクが上昇 地域住民を対象にした調査で明らかに

医療経済研究機構(東京都港区)と東京大学高齢社会総合研究機構(東京都文京区)はこのほど、フレイルとうつ病の併存と死亡リスクとの関連に関する研究結果を公表した。
「フレイルとうつ症状のいずれもない集団」に比べ、「うつ集団が併存したフレイルの集団」は死亡リスクが約4.3倍高いことなどが分かった。
研究は、フレイルとうつ病状の併存が、死亡リスクにどのような影響を及ぼすのかなどを明らかにするために行われた。
「フレイル」とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が進行し、生活機能障害や要介護状態、死亡などに陥りやすい状態を指す。健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態などとも言われる。
公衆衛生上の重要課題として認識され、身体的な疾患や機能に焦点をあてた研究は多くあるが、フレイルとメンタルヘルスとの関係については十分に明らかになっていなかった。
今回の研究では、東京大学高齢社会総合研究機構が、千葉県柏市の地域在住高齢者約2,000人を対象として2012年から実施している研究「柏スタディ」のデータを利用。このうち1,920人分を分類して解析し、その後の死亡リスクを比較した。
その結果、「フレイルとうつ症状がいずれもない集団」に比べ、「うつ症状の併存がないフレイルの集団」は約2.5倍、「うつ症状が併存したフレイルの集団」は約4.3倍、死亡リスクが高いことが分かった。
そのため研究チームは、死亡リスクの高い「うつ症状を併存したフレイルの集団」を特定することが特に重要だと説明。「健康診断や日常診療にフレイルやうつ症状のスクリーニングを取り入れる必要性がある」と示唆している。
介護予防やフレイル予防、認知症予防につなげようと、厚生労働省では「通いの場」の充実を目指している。「通いの場」とは地域住民が気軽に集い、生きがいや仲間づくりを進める場所のこと。介護予防に重要な「運動・栄養・社会参加」の3本柱を満たす場でもある。
これまでに高齢者が集まり交流する通いの場への参加が、フレイルの発症抑制につながるといった報告や、他者との交流など社会参加の機会が多い人は少ない人に比べて要介護認定に至りにくい、などの報告がある。
そのため厚生労働省ではWebサイト「集まろう 通いの場」やアプリ「オンライン通いの場」を公開し、健康維持に役立つコンテンツを提供。地域ごとの情報も伝え、より多くの高齢者に「通いの場」への参加を促している。
「フレイルとうつ症状の併存と死亡リスク」(医療経済研究機構/2024年1月5日) 「集まろう!通いの場」(厚生労働省) 「オンライン通いの場アプリ」(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)

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