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日本人は食事や栄養の情報をどこから得ているか? テレビしか見ない人はフードリテラシーが低い? 東大調査

 東京大学は、20~79歳の日本人5,998人を対象にオンライン調査を実施。日本人が食事や栄養についての情報を得ているメディアは、「テレビ」(32.9%)、「ウェブ検索」(22.2%)、「特定のウェブサイト」(16.6%)、「新聞」(15.0%)、「本や雑誌」(11.6%)、「動画サイト」(10.6%)と幅広いことを明らかにした。

 一方、フードリテラシーと情報源との関連は、情報源によってさまざまで、テレビの利用はフードリテラシーが低いことと関連している一方、特定のウェブサイト、本や雑誌、動画サイトの利用はフードリテラシーが高いことと関連していた。

日本人は食事や栄養についての情報を幅広いメディアから得ている

 研究は、東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎教授、同研究科栄養疫学・行動栄養学講座の篠崎奈々特任助教、同研究科医療コミュニケーション学分野の奥原剛准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR Public Health and Surveillance」に掲載された。

 食事や栄養に関する情報は、インターネットを含めて、さまざまなメディアを通じて容易に入手できるが、一般の人々がどのような情報源から入手しているかはよく分かっていない。

 そこで研究グループは、20~79歳の日本人成人を対象に、さまざまなメディア情報源からの食事・栄養に関する情報の探索行動を網羅的に調査した。2023年2~3月にオンライン調査に参加した20~79歳の日本人成人5,998人を対象に、横断研究を実施。

 その結果、使用している情報源で多いのは、「テレビ」(32.9%)、「ウェブ検索」(22.2%)、「政府や医療メーカーなどの特定のウェブサイト」(16.6%)、「新聞」(15.0%)、「本や雑誌」(11.6%)、「YouTubeなどの動画サイト」(10.6%)であることが明らかになった。

日本人は食事や栄養についての情報を幅広いメディアから得ている

出典:東京大学、2024年

テレビしか見ていない人はフードリテラシーが低い?

 さらに、健康や医療に関する正しい情報を入手し、活用する能力などを示す「ヘルスリテラシー」と、食に対する理解や食品選び、食事ガイドラインに適合した食事をする能力などを示す「フードリテラシー」について、10%以上の人々に使用されていた6つの情報源を対象に、多変量ロジスティック回帰分析を用いて調べた。

 その結果、一貫した関連を示したのはヘルスリテラシーのみで、ヘルスリテラシーが高いほど、個々の情報源すべてで利用する確率が高いことが分かった。

 一方、フードリテラシーと情報源との関連は、情報源によってさまざまであり、テレビの利用はフードリテラシーが低いことと関連している一方、管理栄養士や保健師などによる特定のウェブサイト、本や雑誌、動画サイトの利用は、フードリテラシーが高いことと関連していた。

 さらに、健康食インデックス(Healthy Eating Index)を用いて調べたところ、食事内容の質が高いことは、新聞および本や雑誌の利用と関連していた。

 その他の特性としては、過体重・肥満の人は本や雑誌から、普通体重の人は新聞から、低体重の人はウェブ検索から、それぞれ情報を得ている傾向がみられた。

 女性はテレビと本・雑誌の利用、男性は特定のウェブサイト・新聞・動画サイトの利用が多いことも示された。

 年齢は新聞の利用と正の関連があり、特定のウェブサイトや動画サイトの利用とは負の関連があった。高学歴者は、特定のウェブサイトや新聞を利用する傾向があることや、管理栄養士は、特定のウェブサイト、本や雑誌を利用する傾向がある一方で、テレビや動画サイトを利用しない傾向もみられた。

食事や栄養の信頼できる情報を社会に発信する必要が

 「今回の研究は、一般の人々が食事や栄養に関する情報を、さまざまなメディアから得ていることを明らかにした世界ではじめての研究です。研究成果は、食事や栄養についての信頼できる情報を、社会に向けどのように発信・普及すればよいかを議論・検討するための科学的根拠となることが期待されます」と、研究者は述べている。

 「それぞれの情報源を使用するかどうかには、ヘルスリテラシーを除けば、異なる要因が関連しており、潜在的なユーザー、トピック、最適な情報普及戦略が、それぞれの情報源によって大きく異なることが示唆されました」としている。

 今回の研究でもっとも懸念される知見として、「2つの主要な情報源(テレビとウェブ検索)の利用と、フードリテラシーおよび食事内容の質との間に正の関連が観察されなかったこと」、望ましい知見として、「特定のウェブサイト、新聞、本や雑誌、動画サイトの利用が、フードリテラシーや食事内容の質と正の関連を示したこと」を挙げている。

東京大学大学院医学系研究科 社会予防疫学分野
東京大学大学院医学系研究科 栄養疫学・行動栄養学講座
Prevalence and Correlates of Dietary and Nutrition Information Seeking Through Various Web-Based and Offline Media Sources Among Japanese Adults: Web-Based Cross-Sectional Study (JMIR Public Health and Surveillance 2023年11月22日)
[Terahata]
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