ニュース
アフターコロナでも「マスク着用」を続ける理由は「私がつけたいから!」 周囲からの同調圧力は強くない?
2024年05月13日

アフターコロナ期でもマスク着用を続けている人は、「政府の推奨」や「周囲からの同調圧力」の影響を受けているわけではなく、「私がしたいから」という個人の判断によるものが大きいことが、日本人を対象とした長期のパネル調査で明らかになった。
コロナ禍でのマスク着用は、少なくともその終期では、命令に従おうとする心理によって説明できるものではないことが示された。コロナ禍のいわゆる「同調圧力」は、声高に言われたほどのものではなかった可能性がある。
「マスク着用」を続けているのは「私がつけたいから」
アフターコロナ期でもマスク着用を続けている人は、「政府が推奨している」という命令的規範や、「周囲からの強い同調圧力」の影響を受けているわけではなく、「私がしたいから」という個人の判断によるものが大きいことが、日本人を対象とした長期のパネル調査で明らかになった。 研究は、大阪大学大学院人間科学研究科 大阪大学感染症総合教育研究拠点の三浦麻子教授らの研究グループと、村山綾・立命館大学総合心理学部准教授(研究当時は近畿大学国際学部准教授)、北村英哉・東洋大学社会学部教授が共同で行ったもの。研究成果は、「Japanese Psychological Research」にオンライン掲載された。 研究グループは、政治経済などの社会状況の変化とそれにともなう人の心の変化を探るために、2,000人の日本在住者を対象にしたWeb調査を、2022年10月から実施している。 今回の研究では、日本人のマスク着用率の推移とそれに対する社会的規範の影響について、2023年2~10月にかけてのパネル調査データをもとに分析した。 その結果、以下の点が明らかになった――。- マスク着用率は、政府による着用ルールや行動制限全体の緩和後も、急減しなかった。
- マスク着用の動機の多くは、「私がしたいから」という個人の判断によるもので、「政府が推奨している」という命令的規範の遵守ではない。
- 「周囲が着用している」という記述的規範は、マスク着用率を高める方向に作用するが、同調圧力というほどは強くはない。
「政府の推奨」や「周囲からの同調圧力」によってマスクを着用しているわけではない
「社会的規範」は、社会のなかで共有される行動の基準で、ここでは「命令的規範」と「記述的規範」の2種類に分けている。 命令的規範は法律などによって強制されるルールのこと。一方、記述的規範は、多くの人が自然に従う慣習や行動パターンのこと。 もし命令的規範がマスク着用を促していたなら、マスク着用を政府が推奨していた当時は、システムを正当化する傾向が強いほどマスクを着用しようとすると考えられる。 しかし、今回の調査ではそうした傾向はみられなかった。つまり、コロナ禍でのマスク着用は、少なくともその終期では、命令に従おうとする心理によって説明できるものではないことが示された。 また、マスク着用に「周囲が着用している」という記述的規範が及ぼす影響を知るために、社会全体のマスク着用率を推定させる項目(現在の、日本の社会全体のマスク着用率はどの程度だと思いますか)への回答との関連も分析した。 その結果、記述的規範から個人の行動への影響は、統計的に意味のあるものではあったが、逆の(回答者自身のマスク着用率が社会全体のマスク着用率の推定に及ぼす)影響と比較すると相対的には小さいものだった。 これは、いわゆる「同調圧力」は声高に言われたほどのものではなかったことを示しているとしている。人間の行動と心理は周囲の状況の強い影響を受けている
マスク着用は、2023年3月より個人の判断にまかされるようになり、さらには同年5月には新型コロナが5類に引き下げられた。 今回の研究は、回答者自身のマスク着用率を問う項目(あなたは、現在、外出時にマスクを着用していますか)などに着目して実施したもの。 「"アフターコロナ"を決定づける時期を含むデータを取り出して分析することで、社会状況の変化が私たちの行動に及ぼす効果を検証することが可能になりました」と、研究者は述べている。 「私たち人間の行動、そしてそれを司っている心理は、置かれている状況の強い影響を受けています。平時はこうした状況の力が意識されることはあまりありませんが、コロナ・パンデミックのように激烈な状況の変化があると、多くの人は否が応でもそれを自覚させられたことでしょう」。 「本研究成果は、長期にわたるパネル調査データを用いることで、パンデミック終期の日本における社会的規範とマスク着用との複雑な関係を明らかにし、状況の力の一端を示すものであると言えます」としている。 大阪大学大学院人間科学研究科Behind the Mask: Analyzing the Dual Influence of Social Norms on Pandemic Behavior in Japan (Japanese Psychological Research 2024年4月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」