ニュース
ストレスはメタボ・肥満のリスクを高める 労働者の長期休職をストレスチェックで予測
2024年07月08日
ストレスは加齢にともない増えるさまざまな健康リスクを高める。ストレスは、体内で炎症を悪化させ、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高めることが分かった。
労働安全衛生法の改正にともない、50人以上の労働者がいる事業所ではストレスチェックの実施が義務付けられている。
6項目の質問票で構成されるストレスチェックプログラムを用いると、従業員の精神疾患による長期病欠を予測できることも明らかになった。
ストレスは炎症を悪化させメタボの危険性を高める
ストレスは加齢にともない増えるさまざまな健康リスクを高める。ストレスは、体内で炎症を悪化させ、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高めることが、米オハイオ州立大学の新たな研究で示された。 メタボリックシンドローム(メタボ)は、心臓病や2型糖尿病などの健康リスクを高める5つの要因[内臓脂肪の蓄積、高血圧、善玉のHDLコレステロールの低下、空腹時血糖値の上昇、中性脂肪(トリグリセリド)の上昇]が重なった状態。 血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効果を十分に発揮できなくなるインスリン抵抗性が、大きく関わっていると考えられている。不健康な食事や運動不足、睡眠不足などが原因で肥満になると、インスリンが働きにくくなる。ストレスが炎症を亢進 肥満・メタボのリスクを高める
研究は、米国国立老化研究所(NIA)などの支援を得て行われた。研究グループは、米国で実施されている全国調査である「米国中年期研究」(MIDUS)に参加した、平均年齢52歳の男女648人を対象に調査を実施した。 C反応性タンパク(CRP)、インターロイキン-6(IL-6)などの炎症バイオマーカーや、高値になると血栓ができやすくなるフィブリノゲンなどの値から、ストレスとメタボの関連に炎症がどのように関わるかを測定するモデルを構築した。 その結果、ストレスはメタボに大きく影響しており、炎症がその関連の61.5%に関与していることを明らかにした。ストレス管理によりリスクを軽減できる
「ストレスは心の病気に関わるもの、つまり心理的なものだと考える人が多いのですが、慢性的なストレスは炎症やメタボなど、さまざまな身体的な問題に関わっていることが示されました」と、同大学心理学部のジャスミート ヘイズ氏は言う。 「生活スタイルなどの環境因子や遺伝因子など、メタボに影響を与えるものは数多くあります。そのなかには、遺伝など変えられないものもありますが、変えられるものも多くあります」。 「今回の調査は、中年期の人々を対象に実施したものです。中年期は、老化の進行が速まる時期です。日常で簡単に取り組める、安価なストレス管理法をみつけることが、健康改善に役立つ可能性があります」としている。ストレスチェックで労働者の精神疾患による長期休職を予測
労働安全衛生法の改正にともない、50人以上の労働者がいる事業所では2015年より、ストレスチェックの実施が義務化された。
仕事や職業生活に関する不安や悩み、ストレスを感じている労働者は5割を超えるという報告もあり、事業場でのメンタルヘルスケアの実施は重要だ。
京都大学環境安全保健機構附属健康科学センターの川村孝教授らは、ストレスチェックプログラムを用いると、従業員の精神疾患による長期病欠を予測できることを明らかにした。研究は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載された。
対象となったのは、2016〜2018年に精神疾患の長期病欠を取得した大学職員。研究グループは、57項目の質問票より得られたデータを分析し、多変量回帰分析により6項目の独立した予測因子を特定し、予測モデルを開発した。
さらに、性別・年齢・職種が一致する職場に出勤している大学職員を対照群とし、予測モデルを検証した。研究には、22大学が参加し、2016〜19年度まで各年度で約4万500人(15万7,498人年)が参加した。
6項目の質問は以下の通り――。
▼ 職場の方針に自分の意見を反映できる (オッズ比 0.652)
▼ イライラすることがある (オッズ比 0.559)
▼ 非常に疲れを感じることがある (オッズ比 1.799)
▼ 落ち着かない気分になることがある (オッズ比 1.580)
▼ 悲しい思いをすることがある (オッズ比 1.590)
▼ 家庭生活に満足している (オッズ比 0.627)。
この予測モデルの受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、0.768(95%信頼区間 0.723〜0.813)だった。
「予測モデルのパフォーマンスは中程度であり、ストレスチェックプログラムのさらなる改良が求められる」と、研究者は述べている。
▼ イライラすることがある (オッズ比 0.559)
▼ 非常に疲れを感じることがある (オッズ比 1.799)
▼ 落ち着かない気分になることがある (オッズ比 1.580)
▼ 悲しい思いをすることがある (オッズ比 1.590)
▼ 家庭生活に満足している (オッズ比 0.627)。
Inflammatory biomarkers link perceived stress with metabolic dysregulation (Brain, Behavior, & Immunity - Health 2023年12月)
Predictability of the National Psychological Stress Screening for Subsequent Long-Term Psychiatric Sick Leave Among Employees: A Multicenter Nested Case-Control Study (Journal of Occupational and Environmental Medicine 2024年5月) 5分でできる職場のストレスセルフチェック (働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」、厚生労働省)
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム ダウンロードサイト
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年07月16日
- 慢性腎臓病(CKD)は健康寿命を損なう要因 生活改善で重症化予防できる 「若い世代の認知は不十分」という調査結果
- 2024年07月16日
- 職場の「燃え尽き症候群」にこうして対策 警告サインを知り早期に介入 「マインドフルネス」を導入
- 2024年07月16日
- 【タバコの最新情報】喫煙している人は食事が不健康 内臓脂肪も増えやすい 電子タバコは禁煙に役立つ?
- 2024年07月16日
- 「熱中症搬送者数予測サイト」を公開 1週間先までの熱中症搬送者数を予測 名古屋工業大学
- 2024年07月08日
- ストレスはメタボ・肥満のリスクを高める 労働者の長期休職をストレスチェックで予測
- 2024年07月08日
- サプリメントは効果がある? マルチビタミンは「効果あり」「なし」の両論が ビタミンDのサプリは推奨
- 2024年07月08日
- 自分の足や自転車を使う「アクティブ移動」のすすめ 運動量が増加 地球温暖化に対策しながら健康も改善
- 2024年07月08日
- 糖質の多い甘い清涼飲料が「うつ病」のリスクを高める ブラックコーヒーはリスクを低下 日本人8万人超を調査
- 2024年07月03日
- 「日焼け止め」のパラドックス 間違った塗り方をすると効果は半分以下に減ることが判明 日焼け止めの上手な使い方
- 2024年07月01日
- 魚を食べる食事スタイルが寿命を延ばす 小魚を食べるとがんなどの健康リスクが低下 魚の油が脂肪燃焼を促進