「働き方改革」の周知は十分ではない 労働時間の管理不足が高い業種も判明(日本労働組合総連合会)

日本労働組合総連合会(略称:連合)はこのほど、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の定着状況や効果について調査を実施した。
調査の結果によると、「働き方改革」スタートから5年が経過したものの、依然として周知は十分ではなく課題が残ることがわかった。
調査はインターネットリサーチで実施され、15歳以上の正社員や契約社員、派遣社員など1,000人の回答を集計した。
調査ではまず、「働き方改革関連法」で定められた「時間外労働(残業)の上限規制」「年次有給休暇5日取得の義務化」「勤務間インターバル制度の導入促進」という3つのルールについて認知状況を調べた。
その結果、理解率は「時間外労働(残業)の上限規制」が68.9%、「年次有給休暇5日取得の義務化」が76.4%、「勤務間インターバル制度の導入促進」が38.4%だった。中でも「勤務間インターバル制度の導入促進」については、「聞いたこともない・知らない」が39.9%で理解率の低さが目立った。
このうち「時間外労働の上限規制」に関連し、職場で残業時間を含めた労働時間が管理されているかどうか聞いたところ、「管理されている」は86.6%、「管理されていない」は13.4%だった。業種別で「管理されていない」と回答した人の割合を見ると、「教育、学習支援業」が23.8%、「公務」が23.2%と2割を超えており、ほかの業種に比べて高い傾向にあった。
なお労働時間の管理をどのように行っているか聞いた設問では、「勤怠管理システム等をつかって自動申告/自己申告する」が40.8%で最多。そのほかは「タイムレコーダーで管理する」(23.7%)、「ICカードで管理する」(12.8%)、「パソコンの使用時間(ログイン・ログオフ時間)で管理する」(12.7%)などで、「上司が直接確認して管理する」も9.2%あった。
また会社が労働者に残業を命じるためには、あらかじめ労働者の過半数が加入する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との間で、一般的に「36(サブロク)協定」と呼ばれる労使協定を締結する必要がある。
このことについて認知率を調査した結果では、「知っている」が49.2%、「知らない」が50.8%だった。世代別で「知っている」が最も多かったのは50代の58.9%だった。
残業しても残業手当がつかない不払い残業(サービス残業)の実態についても聞いた。不払い残業をすることがあるかどうかの質問では、「ある」が28.4%、「ない」が76.1%で、適切に賃金が支払われている人が多かった。
一方、業種別で見た場合、不払い残業をすることが「ある」と回答した人の割合が、「教育、学習支援業」では50%と半数を超え、次いで「医療、福祉」も43.9%で高かった。
年次有給休暇の取得状況については、「ほぼ100%取得」が30.9%。「7割程度取得」が20.1%、「5割程度取得」が19.4%などと続いた。「取得していない」は10.3%。これら「未取得の有給休暇がある」割合は69.1%にのぼる。
「未取得の有給休暇がある」と回答した人の割合を男女別に見ると、男性が76.6%で女性より12.5ポイント高い。同様に業種別では「建設業」が77.6%と最多で、「教育、学習支援業」(76.2%)、「公務」(75.0%)が続いていた。
年次有給休暇の年5日取得が義務化されることで、休み方にどのような変化があったかを聞いた設問では「法律で決められたことで、有給休暇を取得しやすくなった」は20.5%だった。逆に「5日取得できるが、その分夏季休暇や年末年始休暇などの特別休暇が減らされるなどがあって、あまり意味がない」(12.2%)、「法律で決められても、5日も取得できていない」(11.3%)といった回答の割合が一定数あり、課題が残る。
また契約・嘱託・派遣社員として働く人の中では「法律で決められたことで、有給休暇を取得しやすくなった」の回答が9%にとどまった。労働組合の有無で比べても、労働組合がない職場で働く人は「法律で決められても、5日も取得できていない」の割合が17.9%となっており、労働組合がある人の7.6%に比べて10.3ポイントも高かった。
厚生労働省でも特設サイトを開設し、働き方改革に関連する情報を集約している。動画も含め分かりやすい内容で、法律面の解説や中小企業向けの情報も充実している。
厚生労働省ではさらなる啓発で、「働き方改革関連法」の定着をさらに進めたい考え。


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