ニュース
若いころの体重増加は心臓病と糖尿病のリスクを高める 若年期・中年期から健康的な体重を維持することが大切
2024年08月19日

20代以降に体重が増えて肥満や過体重になった人は、60代までに心臓の健康状態が悪化するリスクが高いことが、大規模な調査で明らかになった。
中年期に体重が増えた人は、年齢を重ねると糖尿病リスクが上昇することも報告されている。
「若年期・中年期に健康的な体重を維持することは重要です。健康を長期的に改善したいのであれば、若いうちから体重増加を防ぐことが大切です」と、研究者は述べている。
20代以降に体重が増えると健康状態が悪くなりやすい
20代以降に体重が増えて肥満や過体重になった人は、60代までに心臓の健康状態が悪化するリスクが高いことが、大規模な調査で明らかになった。研究は、欧州心臓病学会(ESC)が発表したもの。 「若年期や中年期の成人の体重増加と、心臓の血液を送りだす能力が低下する心臓肥大とのあいだに関連があることが分かりました。若いころから健康的な体重を維持することが大切です」と、ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン心臓血管生理学部のアラン ヒューズ教授は述べている。 研究グループは、イングランド・スコットランド・ウェールズの出生児を対象とした「全国健康・発育調査出生コホート研究」(NSHD)に参加した1,690人を、1946年から追跡して調査した。この研究は、英国医学研究会議(MRC)の支援をえて行われている。20歳以降に肥満になった人は心臓の健康が悪化
「これまで肥満や過体重が心臓の健康状態の悪化と関連することが分かっていましたが、今回の調査により若年期や中年期の太りすぎや肥満が、その後の心臓の健康状態と長期的に関連することが明らかになりました」と、ヒューズ教授は言う。 研究グループは、参加者を若年期から中年期、さらには高齢期まで追跡して調査し、BMI(体格指数)とウエストヒップ比の変化や健康状態について調査した。超音波を使用して心臓の構造や機能を調べる心エコー検査も行った。 BMIは、体重と身長により算出される値で、肥満や低体重(やせ)の判定などに用いられる。日本ではBMI 25以上が肥満と判定されるが、欧米では30以上が肥満だ。 研究グループは、心エコー検査で測定できる左室心筋重量(LVM)にも着目した。この値が高いと、心臓組織の量が増え、心臓の健康状態が悪くなっており、心臓病による死亡リスクが高まっていると考えられる。 その結果、20歳以降に太り、BMIが高くなった人は、60代になるとLVMの値が高くなり、心臓の健康状態が悪くなりやすいことが分かった。 たとえば43歳の人が、年齢を重ねてからBMIが5増え肥満になると、LVMは15%あるいは27g増加するという。若いときに比べて体重が増えている人は要注意
「若いときに比べて体重が増えて、肥満や過体重になっている人は、心臓にもダメージが生じているおそれがあります」と、ヒューズ教授は指摘する。 「逆に、若いころは肥満だったが、食事や運動などの生活スタイルを見直して、体重を減らすことに成功した人など、BMIを数十年にわたり改善した人は、心臓損傷や機能障害の予防や改善のベネフィットを得られる可能性があります」。 「健康的な体重を維持することは、成人初期の人々にとっても重要です。心臓の健康を長期的に改善したいのであれば、すべての年齢の人は、若いうちから体重増加を防ぐ必要があります。それが世界中で増えている肥満の対策につながります」としている。 研究グループは今後、体重増加と心臓の健康の関連について解明するために、糖尿病や高血糖への影響について調査する予定としている。中年期の体重増加や肥満は糖尿病リスクも高める
若いときから健康的な体重を維持することが大切
若いときから健康的な体重を維持することが大切

- 肥満度がもっとも高かった人は、もっとも低かった人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが2~6倍高い。
- 中年期に体重が9kg以上増えた人は、体重が増えずに安定していた人に比べると、糖尿病リスクが3倍高い。
- 中年期にウエスト周囲径が10cm以上増えた人は、2cm以下しか増えなかった人に比べて、糖尿病リスクが70%高い。
Adulthood adiposity affects cardiac structure and function in later life (European Heart Journal 2024年7月16日)
Obesity, weight gain in middle age associated with increased risk of diabetes among older adults (JAMA and Archives Journals 2010年6月24日)
Association Between Adiposity in Midlife and Older Age and Risk of Diabetes in Older Adults (JAMA 2010年6月23日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月28日
- 【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月22日
- 高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?