ニュース

地域住⺠のフレイルに産官学民が連携して対策 フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言

 医療経済研究・社会保険福祉協会 フレイル予防啓発に関する有識者委員会(委員⻑:葛谷雅文)は、「フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言」をまとめ公開を開始した。

 「フレイル予防の考え方は、決して65歳以上の高齢者になってから意識するものではなく、壮年層および若年層も視野に入れ、全世代を対象として、十分な国⺠啓発を行うべき」としている。

コロナ禍で高齢者のフレイルが進行 対策が必要

 医療経済研究・社会保険福祉協会のフレイル予防啓発に関する有識者委員会(委員⻑:葛谷雅文)は、「フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言」をまとめ公開を開始した。

 2020年初頭からはじまった新型コロナウイルス感染症の流行下で、とくに高齢者の自粛生活⻑期化による生活不活発が助⻑され、結果的に心身機能と認知機能が低下してしまう(フレイル状態がさらに進行する)状況が確認されている。

 声明・提言では「フレイルには可逆性がある。行政や産業界など産官学民が連携して、地域住⺠の集団(健常な人とフレイルに該当する人すべて)に対して行うフレイルの啓発(一次予防)から環境整備(ゼロ次予防)にいたる、一連のフレイル予防の対策の展開が必要」などとしている。

地域住⺠に対する啓発と環境整備 行政や産業界などと連携

フレイル予防住民啓発用パンフレット
(フレイル予防推進会議)

 フレイルは、日本語にすると「虚弱な」という意味で、健康な人と要介護の人のあいだにある、「介護が必要になる一歩手前」の状態のこと。

 具体的には、(1) 体重減少、(2) 筋⼒低下、(3) 疲労感、(4) 緩慢さ(歩行速度低下)、(5) 身体活動の低下の5項目のうち3つ以上が該当する場合をフレイル、1つまたは2つ該当する場合をプレフレイル(フレイル予備群)としている。

 健康に生活できる状態で少しでも長くするために、フレイルをしっかり予防し対策していくことが重要と、近年注目が集まっている。

 そこで同委員会では、「国⺠自身の努⼒次第で大きな可能性を切り開くことができる。世代間連携を含めて、住⺠自身の⼒でその住む町を快活なコミュニティにしていくなど、"自助・互助"の生み出す⼒を重視した健康⻑寿のまちづくりの実現を目指すべき」などと提言している。

具体的な行動指針を提示

 同委員会では、フレイル予防のポピュレーションアプローチを、「行政や産業界などがそれぞれあるいは連携して、地域住⺠の集団(健常な人とフレイルに該当する人すべて)に対して行うフレイルの啓発(一次予防)から環境整備(ゼロ次予防)にいたる、一連のフレイル予防の対策の展開の体系」としている。

 フレイル予防のポピュレーションアプローチを担当する専門職などに向けて、具体的な行動指針として、主に次のことを挙げている。

食事の行動指針 体格や適正体重、摂取エネルギー、食品多様性、摂取タンパク質、ビタミンDなどに対する具体的な推奨内容など
口腔機能の行動指針 フレイルと口腔機能の関係など
身体活動(運動を含む)の行動指針 身体活動・運動の行動指針など
社会参加(社会活動)の行動指針 人との交流や社会活動への参加など

地域でのフレイル予防の実例も

 声明・提言では参考資料として、フレイル予防のポピュレーションアプローチの体制の例として、それぞれの地域でのフレイル予防拠点の設置についての実例も掲載されている。

 たとえば、東京都豊島区はフレイルサポーターを養成し、2019年には全国ではじめてフレイル対策センターを開設した。

 神奈川三浦市もフレイルチェックを導入し、フレイル予防の拠点としてフレイルサポートセンターを開設。いつでも誰でもフレイルチェックを受けられる体制を整備している。

 声明・提言ではさらに、「フレイル予防住民啓発用パンフレット説明問答集」「フレイル予防のポピュレーションアプローチの推進に関する地方公共団体担当者向け基本問答集」なども公開している。

フレイル予防啓発に関する有識者委員会
フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言

主な目次

  1. はじめに
  2. フレイルの概念及びその特徴と構造
  3. フレイル予防のポピュレーションアプローチの重要性
  4. ポピュレーションアプローチに主眼をおいたフレイル予防の体系的かつ統一的な声明
  5. (1) フレイル予防及びフレイル予防のポピュレーションアプローチの概念と考え方
    (2) フレイル予防のポピュレーションアプローチにおける行動指針
    (3) フレイル予防のポピュレーションアプローチの展開の手法
    (4) フレイルに関するデータの解析やポピュレーションアプローチの効果の計測などの調査研究の重要性
  6. おわりに ― 幅広い関係者によるフレイル予防推進活動の展開への提言
フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言(別添)
フレイル予防のポピュレーションアプローチにおける行動指針
第一部 一般向け
第二部 フレイル予防のポピュレーションアプローチを担当する方向け
フレイル予防のポピュレーションアプローチに関する声明と提言(参考資料)

医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶