ニュース

日本救急医学会『熱中症診療ガイドライン』を改訂
残暑厳しいなか、職場での熱中症予防対策の確認を

 日本救急医学会の「熱中症および低体温症に関する委員会」は、2024年7月25日、『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。ガイドライン改訂は約10年ぶりとなる。

 『ガイドライン2024』では、熱中症の重症度分類に重症の中でもさらに注意を要する「最重症群」を新たに加え、診療アルゴリズムを変更したほか、熱中症患者の身体を冷却する「アクティブ・クーリング」の定義などを見直した。

観測史上最も暑い7月

 2023年7月、世界の平均気温が観測史上で最高記録を更新したことを受け、国連のグテーレス事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が始まった」と述べ、日本でも2023年の新語・流行語大賞にもノミネートされ注目された。

 実際に同月は、日本の観測史上125年間で最も平均気温が高かった。気象庁によると今年はそれを上回り、例年の気温より2.16度高く、昨年の記録を更新した。同庁は「向こう1カ月も引き続き、全国的に厳しい暑さになる見込み」とし、気温の予報や熱中症警戒アラート等への注意と適切な熱中症予防行動を促し、熱中症対策の重要性を訴えている。

 また、今年から熱中症警戒アラートの一段上の「特別警戒情報」もスタートした。

熱中症に「最重症群」追加 深部体温40度以上、意識障害

 東京都監察医務院によると、7月に東京23区内で確認された熱中症疑いの死者が123人(速報値)だった。2018年以来、6年ぶりに7月の死者が100人を超えたという。
 また、東京消防庁管内で7月に熱中症で救急搬送されたのは4,244人で、過去5年間の月別の搬送者数で最多だった。

 2023年の全国の熱中症搬送者数は91,467人に上り、死亡者数についても毎年1,000人を超える状況が続いており、この状況は改善傾向にはなく、重症例への対応は喫緊の課題となっていた。
 そこで日本救急医学会の「熱中症および低体温症に関する委員会」は、これまでに蓄積された知見を収集し、2015年に作成されたガイドラインを改訂、今後の診療の指針となる『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。

 熱中症の重症度はこれまで、めまいや大量の汗、筋肉痛などがある軽症(I度)、頭痛や嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感などがある中等症(Ⅱ度)、意識障害やけいれん発作などの重症(Ⅲ度)に分類されてきた。
 同学会は過去の論文や海外の重症度分類などを踏まえた上で、新たに最重症群として深部体温が40度以上で重篤な意識障害がある場合を「Ⅳ度」とすることを追加し、それにあわせて診療アルゴリズムを変更した(参考:「熱中症診療ガイドライン2024」P.7)。

 さらに同学会の調査では、救命救急センターに搬送された患者が表面体温40度以上で意識障害があっても深部体温を測定しないケースがあった。患者の体に水分をふきつけたり、扇風機などで気化熱を奪う、冷たいプールに入れるといった方法で、体を即座に冷却する「アクティブ・クーリング」の実施率は約63%に留まり、院内死亡率は37%と高かった。
 「Ⅳ度」と判断した場合は、迅速な「アクティブ・クーリング」が必要だとしている。ただし、医療者などの正しい判断のもとで行うことが必要で、家庭では無理に水風呂に入れたりせず、救急車を呼ぶことが第一だ。

 また、今回の改訂では「冷所での安静」を「パッシブ・クーリング」に、「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」を「アクティブ・クーリング」に記載を統一している。

[保健指導リソースガイド編集部]
side_メルマガバナー

「おすすめニュース」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年08月13日
小規模事業場と地域を支える保健師の役割―地域と職域のはざまをつなぐ支援活動の最前線―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈後編〉
2025年08月06日
産業保健師の実態と課題が明らかに―メンタルヘルス対応の最前線で奮闘も、非正規・単独配置など構造的課題も―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈前編〉
2025年08月05日
【インタビュー】2週間のデトックスで生産性が変わる?
製薬の『アルコールチャレンジ』に学ぶ健康経営
2025年07月18日
改正労働施策総合推進法が成立 ハラスメント・女性活躍・両立支援を強化
2025年07月07日
ノンアルコール飲料の活用が ''減酒支援ツール'' に?
特定保健指導・健康経営での活用法とは【産衛学会レポート公開中】
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月05日
【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)<受付終了>
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶