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高齢者向けのスマホの栄養改善アプリは効果がある 食品多様性が向上 フレイルを予防・改善
2024年11月25日

東京都健康長寿医療センターなどは、高齢社会での重要な健康課題のひとつであるフレイルの予防・改善を目指し、高齢者への栄養指導にスマホアプリを利用し、その効果を検証する約1年におよぶ臨床試験を実施した。
同アプリの使用と定期的な健康教室(栄養指導・軽運動指導)を組み合わせた介入プログラムにより、参加者の食品摂取多様性スコアが向上し、体格指数(BMI)や下肢機能も改善し、フレイル指標への効果が示された。
「介入プログラムは、無理なく実施できることが示されました。参加した高齢者はプログラム終了後も、毎日多様な食品を摂取することの意識と実践が継続しました」と、研究者は述べている。
高齢者の低栄養予防のための食事指導にスマホアプリを活用
東京都健康長寿医療センターなどは、高齢社会での重要な健康課題のひとつであるフレイルの予防・改善を目指し、高齢者への栄養指導に、スマホアプリ「バランス日記~10食品群チェック~」を利用し、その効果を検証する約1年におよぶ臨床試験を実施した。 同アプリは、スマホ画面に表示される食事に含まれる食品群をタップすると、10食品群の記録をつけることができるなどの機能がある。10食品群は、東京都健康長寿医療センターが高齢者の低栄養予防のために考案した食事指標で、バランスの良い食事を意識できるようになることを目指している。 その結果、同アプリの使用と定期的な健康教室(栄養指導・軽運動指導)を組み合わせた介入プログラムにより、参加者の食品摂取多様性スコア(DVS)の向上がみられ、体格指数(BMI)や下肢機能も改善し、フレイル関連指標への効果が示された。 介入した高齢者では、アプリ利用の継続性とユーザビリティも高く、健康教室に対しても高い満足度が得られたとしている。 研究は、東京都健康長寿医療センター、女子栄養大学、日清オイリオグループによもの。研究成果は、10月に札幌で開催された第83回日本公衆衛生学会総会、および11月に横浜で開催された第19回日本応用老年学会大会で発表された。54人の高齢者を対象に1年間の試験を実施
研究グループは今回、埼玉県内の自治体で、65歳以上の地域住民から参加希望者を募り、スマホアプリ「バランス日記~10食品群チェック~」を使用した毎日の食事記録と、2週に1回の健康教室への参加を3ヵ月継続してもらった。 参加基準に合致した54人を無作為に前期介入群(A群)と後期介入群(B群)の2群に分け、前期3ヵ月間はA群にのみに介入を行い、B群は待機群(対照群)とした。 次の3ヵ月間(後期)は、B群にのみ同様の介入を行い、この間A群は何も介入しないフォローアップ期間と位置付けた。それぞれの介入前後での食品摂取多様性スコア(DVS)やフレイル関連指標(CL15)などの変化を比較した。 約1年に及ぶ試験は、2022年12月~2024年3月に実施され、東京都健康長寿医療センターは「健康長寿と食・栄養に関する知見の提供」、女子栄養大学は「アプリを使ったヒト試験の実施」、日清オイリオグループは「アプリのノウハウおよび取得データの提供」をそれぞれ担当した。
スマホアプリの利用と健康教室の実施による介入

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2024年
アプリ利用と健康教室への参加により食品多様性が向上 下肢機能なども改善
その結果、フォロー期間中に、A群では8割以上がアプリの記録を継続し、食品摂取多様性スコア(DVS)では、A群は平均2.1点上昇し、B群は平均1.2点上昇し、両群とも介入後に有意な改善がみられた さらに、フレイル予防で望ましい水準としているDVS 7点以上(1日平均7食品群以上摂取)の割合も、A群で38.5%から73.1%に、B群で26.9%から61.5%に、それぞれ上昇した。 また、下肢機能の指標となる5回椅子立ち座り時間についても、両群で有意な改善がみられ、体組成については、フォロー期間を経たA群でBMIが有意に向上した。
高齢者の食品摂取多様性スコアやフレイル関連指標が介入により改善

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2024年
「介入プログラムは無理なく実施でき、プログラムの終了後も毎日多様な食品を摂取することの意識と実践が継続した」と、研究グループでは述べている。
研究方法 |
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主要評価項目 | 食品摂取多様性スコア(DVS) |
フレイルリスクをチェックする指標(CL15)、食品群別および栄養素別摂取量、体重、体格指数(BMI)、体組成(除脂肪体重指数、体脂肪量指数)、筋力(握力)、下肢機能(5回椅子立ち座り時間) |
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