子どもの自殺が2年連続500人超え、急がれる対策強化-「令和6年版 自殺対策白書」より
厚生労働省はこのほど、閣議決定された「令和6年版 自殺対策白書」を公表した。
この中で、令和5年における小中高生の自殺者数が、過去最多だった昨年と同水準の513人だったと明らかになり、子どもの自殺対策強化が急がれる結果となった。
自殺統計(警察庁の自殺統計原票を集計した結果)によると、令和5年における自殺者数は2万1837人。令和4年に閣議決定された第4次自殺総合対策大綱では、子ども・若者、女性の自殺対策の強化が図られてきたが、依然として年間自殺者数は2万人を超える状況が続いている。
年次推移を見ると、統計開始以来、自殺者数が最多だったのは平成15年の34,427人。平成10年からしばらく3万人台で推移した後、平成22年からは減少傾向となり、令和元年には2万169人となっていた。令和2年以降は2万1000人台で推移している。
男女別では男性の自殺者数が女性を大きく上回っている。男性の自殺者数は平成22年以降、令和3年まで減少を続けてきたが、令和4年以降は再び増加に転じている。女性の自殺者数は令和2年から増加傾向にあったが、令和5年は4年ぶりに減少した。
令和5年における自殺死亡率(10万人当たりの自殺者数)は17.6。G7各国の自殺死亡率の中では最も高い。
年齢階級別の自殺死亡率は令和2年以降、多くの階級で上昇傾向にあったが、中でも「40〜49歳」は令和5年まで連続して上昇している。「50〜59歳」は令和3年・4年で大きく上昇し、令和5年についても前年と同水準。また「10〜19歳」は近年、ゆるやかに上昇傾向が続いている。
職業別では、平成19年から令和5年まで、「無職者」が最も自殺者が多い、という状況が続いている。令和5年の内訳は、「無職者」が1万1466人、「有職者」が8858人、「学生・生徒等」が1019人だった。男性だけで見ると、「有職者」が「無職者」を上回っていた。
「無職者」の中で最も自殺者の多い分類は「年金・雇用保険等受給者」という状況が続いている。
また「学生・生徒等」の内訳では、平成19年から令和5年まで「大学生」が最も多い。令和5年における小中高生の自殺者数は513人で、過去最多となった前年の514人とほぼ同じ水準。
「高校生」は令和4年に統計開始以来最多となる354人になり、令和5年も347人と高い水準。「中学生」は令和5年に統計開始以来最多の153人となった。特に令和5年における女子の「大学生」153人、「高校生」166人、「中学生」80人はいずれも統計開始以来最多だった。
『自殺統計白書』ではこの状況を重く受け止め、小中高生の自殺の増加と原因・動機について分析。自殺未遂をした経験がどのように影響しているか、また長期休暇明けの自殺増加についてなど、多方面から考察し、令和5年6月にまとめた「子どもの自殺対策緊急強化プラン」の内容なども紹介している。
同プランでは、自殺要因の分析や専門チームの設置、当事者のヒアリングなどについて取り組みを継続。法務省の相談ダイヤル「こどもの人権110番」や、内閣官房・孤立対策担当室によるWebサイト「あなたはひとりじゃない」の18歳以下向けページを通じた情報発信など、電話やSNSを活用した相談体制の整備にも力を入れている。
ほかにも、夏休みに集中的な啓発活動を行うなどしており、今後も身近な大人が子どもたちの微妙なサインに気づき、必要な支援につなげることや、地域のネットワークづくり推進に取り組み、子どもの自殺対策を強力に推進する方針。
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