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ソーシャル・メディアは高齢者の認知能力を改善する
2013年02月27日

楽しみながら手軽に脳を活性化するなら、フェイスブックなどの「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」の活用はとても効果的だ。SNSを活用する高齢者は、認知能力が向上し、認知症の予防につながる可能性があるという研究が発表された。
ソーシャル・メディアは脳のトレーニングに最適
SNSを利用するにはルールを理解して、論理的に考えたり、試行錯誤したりすることが必要となる。他人との社会的交流の要素も含まれており、思考、意思、創造に関する前頭葉の動きが活発になる。
高齢者に人気のある「クロスワードパズル」は一般に、言語力や記憶力などを鍛えることができるといわれる。与えられたヒントから適切な言葉を考えて思い出し、再確認できるクロスワードパズルは、言葉や記憶のトレーニングになる。
フェイスブックなどのSNSは、これに創造性や社会交流の要素も加わる。「SNSの効果はクロスワードパズルを超えています」と、研究者は述べている。
アリゾナ州立大学の研究チームは、68~91歳の高齢者14人を対象に、パソコンの活用が認知能力にどのように影響するかを調査した。
研究の参加者を(1)SNSに取り組むグループ、(2)パソコンで日記をつけるグループの2つに分けて比較した。
(1)のグループには、フェイスブックの使い方をレクチャーした。参加した高齢者はそれまで、インターネットでのSNSの利用経験がほとんどなかった。グループ内でSNS上の「友人たち」を作るよう指示し、1日1回以上の投稿をするよう依頼した。
8週間後に、認知能力を調べるテストを行ったところ、(1)のSNSに取り組んだグループでは認知能力が25%も改善していた。(2)のグループでは変化はみられなかった。
パソコンのオンライン日記とSNSの間には大きい違いがある。SNSの利用者は、項目を作成し、それをセーブする。常に新しい情報を追加し、古い情報を見直したり、書き直したり、削除する作業を加えることもできる。
「SNSで作成したコンテンツは不特定多数の他人に読まれ、他人の発信した情報も見ることもでき、双方向的な交流ができます。こうした作業により認知力、記憶力、観察力、注意力が鍛えられ、脳のトレーニングになります」と、アリゾナ州立大学のジャネル ヴォルトマン氏(心理学)は説明する。
SNSに似たメディアとしてオンライン・ゲームがある。よくできたオンライン・ゲームであれば、SNSと同様に認知力の向上に役立てられる可能性がある。「ただし、単なるゲームだけでは、しばらくプレイすると退屈してしまうでしょう。ソーシャル機能が追加されれば、より興味が持続し精神的な活動が活発になる可能性があります」と、ヴォルトマン氏は指摘している。
脳の健康のためには、毎日少しずつでも脳の活性化に取り組むようにするのがポイントだ。今後は、認知症対策のための高齢者向けSNSの開発も視野に入れる必要があるという。
「多くの高齢者は、フェイスブックなどのSNSに慣れていません。高齢者が扱いやすいSNSを開発し、適切な教育とサポートを提供できる環境をつくる必要があります。同時に、個人情報の流出を防止するセキュリティなども整備しなければなりません。高齢者が扱いやすいSNSが実現すれば、利用者は増えていくでしょう」(ヴォルトマン氏)。
Should Grandma Join Facebook? It May Give Her a Cognitive Boost, Study Finds(アリゾナ州立大学 2013年2月18日)
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