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くるみはα-リノレン酸の優れた供給源 心血管疾患を予防

 最近の研究には、くるみなどに含まれるα(アルファ)-リノレン酸(ALA)に、心血管疾患を予防・改善する効果を示唆しているものが多い。α-リノレン酸は、植物性の脂肪酸のひとつ。血中の中性脂肪を下げる作用や、血栓ができるのを防止する作用、高血圧を予防する作用などがあるとされている。くるみは特にα-リノレン酸が多く含まれる食品で、ひとつかみ(約28g)のくるみには、約2.5gのα-リノレン酸が含まれる。
くるみ
くるみのα-リノレン酸が心臓病を予防・改善する
 魚類に含まれるオメガ3脂肪酸、特にDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)に、冠動脈疾患を予防する効果がある可能性を示した研究はよく発表されている。しかし、植物性のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸が、心血管疾患に対しどのように予防効果を発揮する可能性があるかを調査した研究は少ない。

 米ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームは、27件の研究を系統的に評価し、合計25万1,049人の被験者を対象に、α-リノレン酸の摂取量と心血管疾患のリスクについて検討した。その結果、心筋梗塞などの心血管イベントは1万5,327件が報告されたが、α-リノレン酸を多く摂取していた人では発症が少ない傾向があることが分かった。食事に関する統合分析では、1日当たりのα-リノレン酸摂取量が1g増えるごとに、冠動脈疾患による死亡リスクが10%低下するという結果になった。

 研究によるとα-リノレン酸には、コレステロール値を低下させ、血栓症に良い効果をもたらし、血管内皮機能を改善し、炎症を抑える働きがありそうだとしている。不整脈は脈拍が不規則になるなど異常があらわれ、心臓の血液の流れが悪くなる病気で、人によっては血栓ができやすくなる。α-リノレン酸には、直接的または間接的に不整脈を改善する作用もあると考えられている。

 この研究は米国栄養学会が発行する「アメリカン ジャーナル オブ クリニカル ニュートリション」に2012年10月17日付けで発表された。

くるみはα-リノレン酸の供給源 ひとつかみのくるみにα-リノレン酸が2.5g
 α-リノレン酸は必須脂肪酸で、体内では合成されないため食物から摂取する必要がある。そして体内に入ったα-リノレン酸は一部DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変換される。くるみは特にα-リノレン酸が豊富に含まれる食品で、ナッツ類ではもっともα-リノレン酸が多い。ひとつかみのくるみで、α-リノレン酸を2.5gも摂取できるので、毎日の規定量を満たしてくれる。

 くるみにはα-リノレン酸以外にも、強い抗酸化力をもつ天然のビタミンEであるγ-トコフェロールなども含まれる。体に良い天然の脂肪酸がバランス良く含まれる食品であり、くるみ約28gに含まれる脂肪酸のうち2.5gは一価不飽和脂肪、13gが多価不飽和脂肪で、うち2.5gがα-リノレン酸だ。

 心臓専門医のジェイムズ・ベッカーマン博士は、今回の研究はきわめて注目に値するもので、心臓の健康増進と致死的な心血管イベントの潜在的リスク低減のために、α-リノレン酸の豊富な食品をもっとたくさん食事に取り入れるべきだと提言している。

 「一般的には魚由来のオメガ3脂肪酸と比べて、植物性のα-リノレン酸のほうが安く利用でき、多くの人にとって入手も容易です。今回の研究は心疾患と戦うための武器を増やし、生活に容易に取り入れられて安全で受け入れやすい食事介入という手段を与えてくれます」とベッカーマン博士は指摘している。

8月10日は健康ハートの日
 日本心臓財団では、1985年に8月10日を「健康ハートの日」と定め、また8月10日から16日を「健康ハート週間」とし、心臓病に関する正しい知識の普及啓発を進めている。無料の検査測定や、検査データをもとにした循環器専門医による健康相談、誰でも使えるAED(自動体外式除細動器)の無料体験などが各地で実施される。

 高齢化が進むにつれて増える心臓病への対応に必要なのは、1人ひとりの「自分の健康は自分で守る」という心構え。適切な食生活と運動を通じた予防が疾病の発生リスクを最小限にする鍵だ。

 サラダやスープのトッピングはもちろん、麺類のタレなど、くるみは和洋中どんな料理にも合わせやすい。風味と食感を添えるくるみを日ごろから積極的に取り入れ、心臓病の多発する冬に備えてはいかがだろう。

[保健指導リソースガイド編集部]
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