ニュース
ストレス対処法を知ることがストレスマネジメントの第一歩
2013年08月29日

ストレスの対処法を事前に知っておくと、ストレスの原因を取り除けない場合でも、体のストレス反応を軽減できる可能性があるという研究が発表された。
ストレスの対処法を知れば不安感を軽減できる
「ストレスが増えると心身のストレス反応をコントロールするのが難しくなることを、多くの人が経験しています。自分のストレスをチェックし、コントロールする方法を知ることは、ストレス対策として効果的です」と、米ニューヨーク大学のエリザベス フェルプス教授(神経科学)は言う。
「ストレスを認知し、感情をコントロールする技術は、訓練すれば誰でも鍛えることができます。ストレスの原因になっている事柄についてよく考え、対応策をつくっておくことが大切です」と、フェルプス教授は強調する。
「ストレスの感じ方は人によってさまざまです。例えば、半分だけ水の入ったコップを見て、"もう半分しかない"と感じる人と、"まだ半分ある"と感じる人では、ストレス反応は変わっていきます」(フェルプス教授)。
フェルプス教授らは、78人の男女を対象に実験を行った。参加者に軽いストレスを与える状況を設定した。参加者に不快感を与えるクモなどの害虫の写真を見せ、指先に装置を取り付け、写真を見ている間に弱い電流を流した。
参加者は不快な刺激に対して生理的に過敏になり、ストレスに反応する際に放出されるホルモンであるコルチゾンが唾液中に増えた。
参加者に、実験後に温水に指をひたして電気ショックをやわらげるストレス対処法を教えると、コルチゾンの分泌が減り、ストレスが低下することが分かった。ストレス対処法を知った参加者では不安感も軽減されていた。
ストレスを客観的にみてマネジメント
ストレス対処法を事前に知っていると、不安感を取り除くのに役立つ理由は、脳の働きによって説明できるという。
「脳の前頭前野と呼ばれる領域は、記憶や学習と深く関連しており、脳の活動の調節に重要な役割を果たしています。不安や恐怖に関わる感情も前頭前野でコントロールされると考えられています。しかし、ストレスを受けているときは、前頭前野の働きが阻害されて、不安を抑えにくくなる可能性があります」と、フェルプス氏は話す。
米ミネソタ州ロチェスター市に本部を置くメイヨークリニックのブレント バウアー博士は、ストレスを軽減するために、次のことをアドバイスしている。
・ストレス反応に気づく自分自身で心身の緊張などのストレス反応に気づき、その原因について考え、ストレスをマネジメントすることから始める。自らのストレス状態を客観的にみることは、ストレスマネジメントの第一歩だ。 ・リラクゼーション法を取り入れる
ストレスを解消するための具体的な行動として、心身の緊張を緩めるリラクセーション法を身につける。
もっとも手軽なのは、腹式呼吸を取り入れリラックスする方法だ。自宅や職場の自席などでも短時間で簡単に行える。ヨガもリラクゼーション法のひとつだ。
筋肉をゆっくり伸ばすストレッチは、心身のリラックスに効果がある。長時間おなじ姿勢でいると筋肉が収縮した状態が続き、筋肉の血管を流れる血流が滞ることがある。ストレッチによって、体のこりをほぐしてみよう。 ・運動を習慣化する
適度な運動にはストレス解消の効果がある。運動によって交感神経の興奮が抑えられ、副交感神経の働きが優位になり、リラクゼーション効果が高い。「1日30分歩く」など無理のない目標をつくり、楽しむという感覚で運動を始める効果的だ。 ・快適な睡眠
ストレス解消法のひとつに、快適な睡眠がある。睡眠時間を十分にとり、快適な睡眠を得られるよう工夫する。睡眠の問題が解決しない場合には医師に相談する方法がある。
また、アルコールはストレス解消に役立つこともあるが、量と頻度のコントロールが必要となる。楽しく節度をもって飲酒しているうちは、良い気分転換といえるが、だんだん酒量が増していくと、心身にさまざまな問題が起きるおそれがあるので注意が必要だ。 ・ストレスについて相談する
ストレスについて他人に相談できるようにすることが対策になる。人に話すことで、自分のストレスを客観的に捉えられるようになるだけでなく、他人の視点を知ることでストレスの別の面を発見し、新たな解決法をみつけられるようになる可能性がある。 ・上司や医療スタッフに相談する
大きな問題を抱えた時には、自分ひとりで解決するにはかなりの時間と労力を要することになり、結果として心身の不調を招くことになりかねない。
自分で対応しきれないストレスに対しては、ひとりで解決するよりは、周囲の人たちの力を借りて、よりよい解決の糸口を見出すことが必要となる。問題解決のために協力してもらえる人間関係の構築が重要だ。
仕事のことで行き詰まった時には上司や同僚に、心身の異常であれば医療の専門家に相談することを考えよう。職場の環境改善についてであれば、勤務先の産業保健スタッフに相談する方法もある。職場の改善には多くの人が関心をもっているので、前向きに取り組んでもらえる可能性がある。 Even Mild Stress Can Make it Difficult to Control Your Emotions, NYU Researchers Find(ニューヨーク大学 2013年8月26日)
Stress relievers: Tips to tame stress(メイヨークリニック 2016年4月21日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「メンタルヘルス」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 緑茶やコーヒーを飲む習慣は認知症リスクの低下と関連 朝にコーヒーを飲むと心血管疾患リスクも低下
- 2025年02月10日
- タバコを1本吸うごとに寿命は20分短縮 若い世代はタバコ規制を歓迎 「タバコ広告も禁止すべき」
- 2025年02月04日
- ラジオ体操などにより要介護や認知症のリスクが低下 高齢化社会の健康施策に体操を活用
- 2025年02月03日
- 良い睡眠は肥満や高血圧のリスクを減らす 日本人の睡眠は足りていない 3つの方法で改善