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卵を1日1個食べても心臓病や脳卒中のリスクは上昇しない

 卵はコレステロールを上げる元凶のように言われることの多い食品だが、最近の研究では、健康に有用な栄養素を多く含む食品であることが分かってきた。「1日に1個」であれば、卵を食べる便益の方が勝っているという。
卵は1日1個程度なら心臓病や脳卒中のリスクを上昇させない
 卵には脂質やタンパク質に加えて、カルシウム、鉄分、ビタミンB群、アミノ酸など多くの栄養素も含まれている。必要な栄養素をまんべんなく摂取できる優れた食品だが、コレステロールが多いので、食事療法では「卵は1日に1個しか食べてはいけない」と言われることが多い。

 卵(鶏卵)1個にコレステロールは250mg含まれる。血中のコレステロールを増やしやすい飽和脂肪酸は1.7g含まれる。

 コレステロールは脂質の一種で、脳や神経、血管壁の細胞膜を作ったり、ホルモンの材料となる大切な栄養素だ。しかし、血液中のコレステロールが多すぎると、動脈硬化の進行が促され、血管障害や心筋梗塞、脳卒中の原因になる。

 日本の治療ガイドラインでは、脂質異常症の患者では、コレステロールを多く含む食品を控える(1日300mg以下)ことが勧められている。悪玉(LDL)コレステロールの値が高い患者では、1日の摂取量は200mg以下に制限される。

 ということは、卵1個を食べると、1日に必要なコレステロールをほぼとってしまうことになる。卵以外の食品からもコレステロールをとることが多いので、卵を「1日1個」食べると、それだけでコレステロールをとりすぎてしまう可能性が高い。

 ところが、最近発表された国際的な研究で、卵を1日に1個以上食べても心臓病や脳卒中の発症リスクは増加しないことが明らかになった。

 この研究は、中国湖北省にある華中科技大学のイン ロン氏や、ハーバード大学公衆衛生大学院のフランク フー教授らが、英医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表したものだ。

 卵を含む動物性食品は、コレステロール値を上げやすい食品だ。これらの食品を食べ過ぎている人では、心臓病や脳卒中の発症が増えることは、過去に行われた研究で確かめられている。しかし、卵が本当に心臓病の発症リスクを高めるかは、よく分かっていなかった。

 研究チームは、日本や米国で行われた17件の研究をメタ解析した。対象となったのは、冠状動脈性心疾患に関しては308万1,269人年、脳卒中に関しては414万8,095人年だった。

 「結果として、卵を1日に1個食べても、血中のコレステロールはあまり増えないことが分かりました。高コレステロールと関連の深い心臓病などの発症も増えませんでした」と、ロン氏は話す。

卵を1ヵ月食べないと血中コレステロール値が変化
 体内にあるコレステロールの3分の2以上は体内で合成されている。健康な人が食事でコレステロールをとり過ぎると、体内での合成が減り、それでも多すぎる場合は肝臓などにためられ、血中コレステロールは一定に保たれる。

 コレステロール値が高くなっている人は、このシステムに乱れが生じて、コレステロールを蓄積しやすくなっていている。体内で合成されるコレステロールの方が多いとはいっても、安心はできない。動物性食品を多く食べると、コレステロール値は上昇しやすくなるからだ。

 「心臓病や脳卒中を予防するために、血中のコレステロールを適正に管理する必要があります。しかし、高コレステロールの原因を、卵などの特定の食品の求めるのではなく、食生活全体を見直すべきかもしれません」と、フー教授は話す。

 肉の脂身や霜降り肉、バター、生クリームやアイスクリームはなどの動物性食品には、飽和脂肪酸が多く含まれる。飽和脂肪酸をとりすぎると、血中のLDL(悪玉)コレステロールを上昇しやすくなる。逆に体内のコレステロール値を下げる働きをするのは、不飽和脂肪酸を多く含む食品だ。

 ベーコンやソーセージ、バターを塗ったトーストなど、動物性食品を多く摂取する食事スタイルが定着している米国人は、心臓病の発症率が高い。しかし、日本人は平均すると1日に1個ぐらいの卵を食べているにも関わらず、不飽和脂肪酸も比較的多く摂取しているので心臓病の発症率が低いという。

 「もしもあなたが、米国式の食事スタイルをもっていてコレステロール値が高いのなら、卵を控えた方がよいかもしれません。そして、野菜や果物などの食物繊維を多く含む食品を増やすべきです」と、フー教授はアドバイスしている。

 卵が高コレステロールの原因として疑われる場合には、卵を1ヵ月食べるのを控えて、コレステロール値に影響があるかを確かめてみる方法があるという。コレステロール値が下がった場合は、卵を食べるのを控えた方が良い。

 卵は脂質やタンパク質以外にも、体に良い栄養成分を豊富に含んでいる。米国農務省農業研究局は、現在の卵は昔に比べてコレステロールが減少しており、ビタミンDは増加していると報告している。

 卵には13種類の必須ビタミンとミネラルが含まれる。これらの栄養素は、他の食品には十分に含まれていない。卵はサプリメントのように有用な栄養素を濃縮した、効率的な食品といえる。

 卵黄に多く含まれるレシチンは、細胞膜や神経組織を構成するコリンの供給源で、老化やボケ防止にも役立つとされる。また、免疫力を高めるビタミンAや、新陳代謝を活発にするビタミンB群も含まれる。

 その他に、骨や歯を丈夫に保つのに必要なビタミンDや、脳機能を正常にするのに必要なコリン、抗酸化作用をもつルテインとゼアキサンチンも含まれる。ゼアキサンチンは、黄斑変性症や白内障の予防に対する効果があるとされる。

Egg consumption and risk of coronary heart disease and stroke: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies(BMJ 2013年1月7日)
Egg Harvard School of Public Health(ハーバード大学公衆衛生大学院)

[Terahata]
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