食事療法の個別化・多様化するニーズ 病態栄養セミナーを開催
武蔵野フーズ(埼玉県朝霞市)は、食事療法への理解を深める目的で、10月に都内で「第12回病態栄養セミナー」を開催した。

糖尿病腎症は、病期別に指導のポイントが異なる。第3期A(顕性腎症前期)ではタンパク質質の制限が行われる。軽度の制限がされる顕性腎症前期では、タンパク質質は0.8~1.0g/kg体重/日になり、腎症の病期が進行するとタンパク質質は0.6~0.8g/kg体重/日にまで制限を強める。
タンパク制限が進むと、結果として総摂取エネルギー量も減ってしまうため、炭水化物や脂質の割合を多くし、摂取エネルギーを補う必要が出てくる。糖尿病腎症の食事療法は、それまでの糖尿病の食事療法に比べ考え方が違うので、多くの患者が戸惑いなかなか実践できないでいる。エネルギー不足による低栄養状態に陥る危険もある。
糖尿病食から糖尿病腎症食へ上手に移行させるには、患者の食事療法に対する考えを変えることが重要となる。
「実際の指導では、なぜ食事療法の変更が必要なのか、病態や栄養との関連性を説明し、食事療法の必要性を理解してもらうことから始めます。現在の食事の摂取状況から問題点を抽出し、的を絞って取り組んでいくことが重要です」と、鈴木氏は話す。
腎症の食事療法では、摂取エネルギー量と塩分の是正を行い、タンパク質の適量摂取と、エネルギー確保のための炭水化物や脂質の増やし方などを、調理を工夫して取り入れていく。低タンパク質でエネルギー量を適正にとる食事療法は、これまでの食事指導と大きく異なるところがあり、患者にとっては受け入れるのがなかなか困難だという。
これを避けるために、宅配食を取り入れる方法がある。具体的には、タンパク質を1日30~50gに制限し、エネルギー、塩分、カリウムを調整した日替わりメニューの宅配食に置き換える。タンパク質制限が厳しくなる第3期以降では、宅配食を1日3回利用し低タンパクごはんや低タンパクパンなどを組み合わせることで、食事量を減らすこともなく、おかずのバリエーションも豊かになり、アミノ酸の高い食品を増やすことも可能になる。

これまでに6万人以上が利用しており、当日の試食会でも「おいしいと思う」という感想が大多数を占めた。衛生管理が徹底された工場で製造されており、メニューの種類も豊富に用意されている。
糖尿病の食事療法について、頭では分かっていても、実践がともなわないという人や、忙しくて勉強している時間がないという人は多い。そんな人には、糖尿病治療食の宅配システムを利用し、専門家が作った本格的な治療食を在宅のまま手軽に体験する方法が効果的だ。宅配食を1~2ヵ月間続ける、毎月10日間だけ利用してみるといった方法で、ほとんどの人は治療食のノウハウをマスターして、無理なく安全に減量することが可能となる。

最近では、宅配食メーカーの努力によって、プロの管理栄養士によりエネルギー量や栄養のバランスが調整された治療食のメニューが豊富に用意されている。「すこやか膳」は、1日のエネルギー量を1,400kcal、1,600kcal、1,800kcalに、塩分を6?9gに調整した冷蔵の宅配食だ。国の定める「食事療法用宅配食品等栄養指針」にもとづき、管理栄養士が献立を作成している。
宅配食は調理いらずで、面倒なエネルギー計算の必要もない。とくに、食生活の改善を、「忙しいから」「面倒くさいから」といった言い訳で避けてきた人たちにとっても、大きな助けとなる。摂取エネルギー量を満たす食材のボリュームや味付けなどを具体的に体験できる点では、宅配食は強力な「栄養教育」の教材となる。
宅配食の利用は、始めたらずっと続けなければいけないわけではない。食事療法のノウハウが身についたと感じたらいったん中止し、しばらくして食事が乱れてきたと感じたら再開して食事内容をチェックする、いわば「食事療法の定期点検」として利用するのも効果的だ。頭であれこれ悩んでいるよりも、まず本物の「治療食」を目と口から体得してしまうのが、成功の近道といえる。
税所氏は「食事療法を長期にわたり継続するためには、安全性とともに日本の食文化や患者さんの嗜好性についても配慮することが必要です。大切なのは、カロリー、バランス、続けやすさであり、決められた食事療法をひとつだけ患者さんに求めるのは無理があります」と指摘した。
日本人の食に対する価値観や食品・食習慣・食環境は、多様化してきており、食事指導でも患者の病態や嗜好性により柔軟に対応することが必要となってきている。最近では、炭水化物について、血糖に対する直接的な影響ばかりでなく肥満への影響から、その摂取量に関心が高まっているが、栄養素についてはエネルギー代謝に関する全体的な視野に立って評価すべきであり、個々の栄養素に限定して考えるのは誤った方向だという。
2型糖尿病の食事療法は、総エネルギー摂取量の適正化によって肥満を解消し、インスリン作用からみた需要と供給のバランスを調整し、高血糖および高血糖から引き起こされる糖尿病合併症を予防することを目的としている。インスリンの作用は糖代謝だけでやく、脂質やタンパク質代謝などにも及んでおり、これらは相互に密接な連関をもっている。
「体重の適正化をはかるためには、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の調整が優先されるべきです。総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限するのは、患者さんが食事療法を長期的に守れなくなるおそれがあり、脂質が悪化する可能性もあります。患者さん1人ひとりに合わせた食事療法を、根気強く提案していくことが重要です」と、税所氏は強調した。


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