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高カロリー飲料に課税すると肥満が減少 飲料のカロリーを抑え健康的に
2013年11月15日

高カロリーの清涼飲料に課税することで、消費者はより健康的な食品を選ぶようになり、肥満が減るという研究が発表された。ソフトドリンクのカロリーを抑える動きは世界的に拡がっている。
高カロリー飲料が肥満や糖尿病を増やしている
高カロリーの清涼飲料の飲み過ぎや、ジャンクフードの食べ過ぎは、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病や脂質異常症などの発症につながる。
肥満は世界中で爆発的に増えており、世界保健機関(WHO)によると、14億人が太り過ぎだという。現在、世界的に高カロリーの清涼飲料の販売を規制する動きが拡がっている。
清涼飲料の多くは高カロリーだ。コンビニや自販機などで売られている炭酸飲料は、ペットボトル1本(500mL)に200~240Kcalのカロリーが含まれる。果糖を含むジュースには161kcal(190mL)、コーヒー飲料には72kcal(190mL)のカロリーが含まれる。これは角砂糖に換算すると6~20個分に相当する。
米ハーバード大学の研究チームによると、高カロリー飲料を1日に1~2本飲む食生活を毎日続けていると、2型糖尿病を発症する危険性が26%上昇するという(Diabetes Care. 2010; 33: 2477-83)。
また、約4万人の男性を対象とした大規模研究では、高カロリー飲料を毎日1本以上飲み続けると、心臓病の発症率が20%上昇することも判明した(Circulation. 2012; 125: 1735-41)。
高カロリーの清涼飲料の消費量が増えた背景に、食品企業の販売戦略があるという。清涼飲料は1950年代には190mL(6.5オンス)を基本単位として売られていた。それが、1960年代には350mL(12オンス)の缶入り飲料が、1990年代には570mL(20オンス)のペットボトル入りの飲料が売られるようになった。
飲料の容量が増えると販売量も増える傾向があり、食品メーカーは競うようにして容量を増やしていった。
高カロリー飲料に課税すると肥満が減少
英オックスフォード大学の研究チームは、高カロリーの清涼飲料に20%の税金を課すことで、消費者はより低カロリーの飲料を購入するようになり、結果として英国内の18万人の肥満者(肥満者全体の1.3%)を減らせるとの試算を、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表した。
この研究は、高カロリーの清涼飲料に課税した場合の、家庭での購買行動にどのような変化があらわれるかを調べたもので、英国の5,263件の一般家庭の1万2,196人を対象に調査した。
その結果、高カロリーの清涼飲料に20%の税金を課し価格が上がると、購入量が15%減ることが判明した。多くの人は代わりに、低カロリー甘味料を使用した清涼飲料や、無糖のお茶やコーヒーなど、より健康的な飲料を選ぶようになったという。
「高カロリーの清涼飲料の飲み過ぎは肥満の増加につながります。その影響が特に大きいのは若い世代です。16~29歳の若者は平均して1日に約300mLの清涼飲料を飲んでいますが、50歳以上の人は60mLしか飲んでいません」と、英オックスフォード大学「未来の食品研究所」の主任研究者であるマイク レイナー博士は言う。
この課税により毎年2億7,600ポンド(約433億円)が税金として得られる見通しだという。「得られた収入で、野菜や果物などの健康的な食品を購入しやすくしたり、市民の健康を増進するプログラムを開発する費用にあてると、肥満から引き起こされる生活習慣病の減少につながり、良い循環が生まれます」と、レイナー博士は指摘している。
食品企業は低カロリー飲料を増やして対策
「清涼飲料は嗜好食品であり、栄養素の摂取が期待されているわけではありません。実際に、高カロリーの清涼飲料の多くは、糖質以外の栄養素がほとんど含まれていません。清涼飲料を飲まないことで、栄養が不足するということはありません」と、レイナー博士は説明する。
こうした動きに対し、清涼飲料を販売する企業はいち早く対応している。米国の大手の清涼飲料メーカーは今年5月に、全世界で子供向けの広告を自粛し、低カロリーの甘味料を使用した商品の販売を増やし、肥満対策することを発表した。高カロリーの炭酸飲料が健康に影響を与えることへの批判が世界的に強まっている状況に対応するためだ。
また、同社が製品を販売する約200ヵ国すべてで、子供向けの広告を自粛し、テレビや雑誌、インターネットなど、12歳以下の子供を購読者に想定している媒体には広告を出稿しない方針だという。
さらに、「すべての市場で低カロリーやノンカロリーの飲料を発売する」、「すべての飲料商品のパッケージにカロリーを表示する」、「ビタミンやミネラルを加えた飲料を増やす」などの対策も打ち出した。
すでに3,500種類以上ある商品群の25%は低カロリーまたはノンカロリーで占められており、米国市場ではダイエット飲料やゼロカロリー飲料の販売比率は40%に達しているという。
Sugary drink tax could reduce obesity numbers by 180,000(オックスフォード大学 未来の食品研究所 2013年11月1日)
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