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サプリメントには心臓病やがんの予防効果はない 飲み過ぎに注意
2013年11月15日

「サプリメントには心臓病やがんの予防効果はない」という調査結果が発表された。不足している栄養素を補うために総合ビタミン剤などを利用する人が多いが、特定の疾患を予防する効果はないので、注意が必要だという。
サプリメントの効果を疑問視?
「総合ビタミン剤などは、食事で不足しがちな微量の栄養素を補えるという点では有用です。しかし、がんや心臓病の予防に役立つものではないので、注意が必要です」と、調査を行った米国予防医療作業部会(USPSTF)のマイケル ルフェーブル博士は言う。
この研究は、2005~2013年に行われた26件の研究をメタ解析したもので、β-カロテン、亜鉛、鉄、マグネシウム、ナイアシン、カルシウム、ビタミンB、ビタミンDなどのサプリメントの利用と、心臓病やがんなどによる死亡率との関連を調査した。
対象となった研究の参加者は最大で7万2,000人以上で、平均年齢は50歳以上だった。参加者を10年以上追跡して調査した大規模研究が2件含まれていた。
その結果、サプリメントを服用した人と服用しなかった人を比べ、心臓病やがんなどの発症率や死亡率を比較したところ、両者にはほとんど差がないことが判明した。
米国では毎年60万人が心臓病で、58万人がんで、それぞれ命を落としている。心臓病やがんの予防は、国民の大きな関心事となっている。
健康志向が高まると、サプリメントの消費拡大というかたちがあらわれている。米国人はサプリメントに毎年1兆1,900億円(120億ドル)を費やしており、国民の半数以上がサプリメントを利用しているという調査結果もある。
「サプリメントに頼るのではなく、食事のバランスを見直すことを優先すべきです。医療機関で定期的に検査を受け、治療をすることが大切です」と、ルフェーブル博士はアドバイスしている。
魚油など有用なサプリメントもある
緑黄色野菜などに含まれるβ-カロテンや、魚類やナッツ、植物油などに含まれるビタミンEには抗酸化作用があり、活性酸素の害から体を守ってくれるので、「悪玉のLDLコレステロール低下させる」、「老化を防止する」といった効果があるとされる。
β-カロテンやビタミンEのサプリメントは、米国では特に人気が高いという。しかし、これらのサプリメントを大量に摂取した場合に、がん予防の効果があるというエビデンスは得られていない。
がんや心臓病などの疾患の治療に共通するのは、抗炎症作用を抑える治療が効果的だが、ビタミンやミネラルを過剰に摂取しても、炎症を抑える効果を得られないことが判明した。
「健康な人が、食事で不足しがちな栄養素をサプリメントで補い、生活習慣病を防ごうとする場合と異なり、心臓病やがんなどの疾患をもつ人がサプリメントを服用するときは、その効果を過信しない方が良いといえます」と、ルフェーブル博士は指摘している。
サプリメントは、通常の食品から栄養素をとるのと異なり、特定の栄養素を過剰に摂取するという特徴がある。ビタミンなどの栄養素には、健康を維持するために摂取することが望ましい量(所要量)があるが、過剰に摂取するとむしろ健康障害が引き起こされるおそれがあるという。
サプリメントの中には効果が実証されているものもある。例えば、オメガ3系(n-3系)脂肪酸は、血中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を防ぐ作用をするとされている。
2011年に発表された研究では、オメガ3系脂肪酸のサプリメントが心臓病の発症を減らすことが確かめられた(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2011 ; 31: 1696-702)。米国心臓学会は心臓病のリスクの高く、食事で魚などを十分に摂取できない場合は、オメガ3系脂肪酸のサプリメントを利用することを勧めている。
副作用のある危険なサプリメントも
健康に良く、副作用が少ないと思われがちなサプリメントだが、深刻な副作用の可能性がある製品は予想以上に多いという調査結果も発表された。
米国・食品医薬品局(FDA)は、2004~2012年に回収命令を出した食品・医薬品の中で、危険度の高い「クラス1」に分類された製品を調査した。回収した465製品のうち、51%はサプリメントだったという、驚くべき結果が出された。
回収されたサプリメントのうち、大部分は筋肉増強、ダイエット、性的機能の強化をうたい、ステロイドなどの医薬品成分が添加されていた。特に性的機能の強化をうたった製品では、95製品(40%)で違法な薬物添加が検出されたという。
米国ではサプリメントの販売には、公的機関の承認は必要とされていない。また、日本の特定保健用食品(トクホ)のような、効果を科学的に実証する制度もない。危険なサプリメントが、野放しにされてるいのに近い状態だという
FDAは「サプリメントの宣伝文句を鵜呑みにせず、危険性のあるサプリメントは利用を控えるようにしましょう」と、メディア上でキャンペーンを展開している。
U.S. Preventive Services Task Force Issues Draft Recommendation Statement on Multivitamins for the Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer(米国予防医療作業部会 2013年11月12日)
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