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きまじめな「タイプD気質」 心臓病やメンタル面での不調に注意
2014年01月10日

岡山大学は、日本の高齢者における「タイプD気質」について調査した。タイプDの性格をもつ人は、心理的な苦痛を4倍以上感じやすく、自分が不健康だと感じる割合が2倍以上に上昇することが判明した。
タイプD気質の人は健康問題を抱えやすい
タイプD気質は、「否定的な感情や考えを抱きやすい傾向(negative affectivity)」と「他者からの否認や非難などをおそれるため、否定的な感情を表現できない傾向(social inhibition)」をあわせもった気質。
タイプD気質の判定は、対人関係や社会との関わりについての14項目の簡単な質問票によって行われる。「人付き合いが好きな方ではない」、「自分が不幸だと感じることがある」といった項目が該当する人は、タイプD気質である可能性がある。
オランダのティルブルフ大学の研究によると、欧米ではタイプD気質の人の割合が全人口の20%に上るという。6,000人以上を対象とした解析で、タイプD気質の人ではそうでない人に比べ、心血管疾患の発症が3倍に上昇することが明らかになった。(Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes. 2010; 3: 546-557)
また、タイプD気質の人は、心血管疾患に加えて、メタボリックシンドロームや肥満、うつ病なども発症しやすいという研究が報告されている。
研究者によると、タイプD気質の人はストレスを過剰に受けやすく、ストレスホルモンであるコルチゾールが多く分泌されている傾向があるという。コルチゾールは血圧値や血糖値を一時的に上昇させ、炎症にも関連している。また、定期健診の受診や、医師との円滑なコミュニケーションを妨げる要因となっている可能性があると指摘している。
日本人は4割以上がタイプD気質 欧米人の2倍
タイプD気質の健康への影響は、年齢層や人種、文化的背景によって異なるが、日本人ではどの程度影響するのかはよく分かっていなかった。そこで岡山大学の葛西洋介氏ら研究チームは、高齢者を対象に、タイプD気質の心理的・身体的な健康影響についての検証を行った。(PLoS ONE. 2013; e77918, doi:10.1371/journal.pone.0077918)
2010年8月に岡山県内の3市町に居住する65歳以上の全人口を対象として調査票を郵送し、回収された1万3,929名を分析した。自記式の調査票を用いた調査票ながら、答えがなかった質問項目を、統計学的手法である多重補完法を用いてサブ解析した。
その結果、タイプD気質をもっている65歳以上の人の割合は46.3%と、欧米の研究に比べて高いことが判明した。
また、年齢やアルコール、喫煙、肥満、教育歴、社会経済的地位、同居人数を統計学的に調整し解析した結果、タイプD気質のある人では、心理的苦痛を感じるリスクは4~5倍、自分で不健康だと感じるリスクが2倍に上昇することが示された。
特に、65~74歳でタイプD気質のある人の場合、気分障害などの精神的疾患に関する重篤な心理的苦痛へのリスクは9.92倍と高くなり、より注意が必要だということが判明した。
タイプD気質の人では、ストレスをコントロールし、メンタル面でのケアが重要とされる。今回の調査結果を受けて研究グループは、高齢者にどのように社会的なサポートをしていくかを考慮することが重要で、ケアのための効率的な資源の投入が求められていると指摘している。
糖尿病や高血圧症などの慢性疾患の予防的なサポートも重要だが、まずはどのような人たちのリスクが高いかを知ることが有用であり、こうした研究を進めていくことが、今後の効果的な社会的サポートの提供を検討する上で重要になると考えられるとコメントしている。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科Type D personality associated with higher future heart risk(米国心臓学会 2010年9月14日)
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