ニュース
がん発症数が増加 はじめて80万人超 がんを予防するための5ヵ条
2014年05月21日
がんの発症数は25年で2.4倍に増加 高齢化が影響
がんの発症数と死亡数は、高齢者の増加を主な要因として、ともに増加し続けている。一方でがんの治療は進歩しており、生存率(あるがんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標)は伸びている。
2010年にがんを発症した人は、男性が46万8,048人、女性が33万7,188人の計80万5,236人。1985年の33万1,485人の約2.4倍に増えた。
発症した人が多いがんを部位別にみると、男性は(1)胃がん(18.5%)、(2)肺がん(15.8%)、(3)大腸がん(14.5%)、(4)前立腺がん(13.9%)、(5)肝がん(6.7%)となっている。
女性は(1)乳がん(20.2%)、(2)大腸がん(15.1%)、(3)胃がん(11.6%)、(4)肺がん(9.9%)、(5)子宮がん(6.9%)となっている。男性は2005年、女性は2003年より順位の変化はみられない。
一方、がんによる死者数は2012年の人口動態統計によると、男性21万5,110人、女性14万5,853人の計36万963人。1985年の18万7,714人からほぼ2倍に増えた。
がんで死亡する確率は男性4人に1人、女性6人に1人
累積罹患リスク(ある年齢までにある病気を発症する確率)をみると、生涯にがんに罹患する確率は、男性60%、女性45%となっている。男女ともに2人に1人はがんを発症するとみられている。
また、累積死亡リスク(ある年齢までにある病気で死亡する確率)でみると、生涯がん死亡リスクは男性が26%、女性が16%となっている。男性の4人に1人、女性の6人に1人は、がんが原因で亡くなっている。
「全国がん罹患モニタリング集計」は、全国の地域がん登録事業を実施している自治体のデータをもとに推計したもの。現在、がん診断時の登録は義務化されていないため、調査は任意の協力にもとづくものとなっている。2010年は総人口の47.1%に相当する28の自治体が登録した。
2013年12月に「がん登録推進法」が可決されており、16年以降は医療機関や都道府県の登録事業が義務化される見通しで、将来的にはがん罹患数が推計ではなく実数で把握できるようになる見込みだ。
がんを予防するための5ヵ条 生活スタイルを改善すれば健康寿命は延びる
喫煙は、がんをはじめとして、脳卒中や心臓病などの深刻な病気のリスクを高める。喫煙は、メタボリックシンドロームや糖尿病のある人では、特に健康への影響が大きい。吸っている本人だけでなく、周囲にも健康被害をもたらすので、なお注意が必要だ。最近は禁煙指導を行う医療機関が増え、禁煙に取り組みやすくなっている。たばこを吸う人は、すぐにでも喫煙をやめるべきだ。 2 飲むなら節度のある飲酒を
飲酒は、口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓などのがんのリスクを高める。女性では乳がんのリスクも高めることが分かっている。アルコールそのものに発がん性があり、少量の飲酒で赤くなったり二日酔いを起こしやすい体質の人は、アセトアルデヒドの分解が遅く、アルコールが食道がんの原因になりやすい。
したがって、節度のある飲酒が大切だ。適度な飲酒は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げる効果があるとされるが、飲む場合は1日当たりアルコール量に換算して約20g程度(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、焼酎なら1合の2/3、ウイスキーならダブル1杯、ワインならボトル1/4程度)の量を上限にした方が良い。 3 野菜や果物を食べる
食事については、これを食べていれば確実にがんを予防できるという食品や栄養素はない。ただし、野菜や果物がん予防に効果的であることを示した研究は多く、脳卒中や心筋梗塞の予防にもつながるので、1日当たり野菜を350g摂ることが目標とされている。 4 食塩の摂取を最小限にする
塩分の摂取量を抑えると、日本人でもっとも多い胃がん予防に効果的で、高血圧を予防し、循環器疾患のリスクの減少にもつながる。1日当たりの食塩摂取量としてはできるだけ少なくすることが望まれる。日本人の食事摂取基準では、1日の塩分摂取量を、男性は9g未満、女性は7.5g未満を目標としている。
また、ハム・ソーセージ・ベーコンなどの加工肉は塩分が多く、牛・豚・羊などの赤肉は大腸がんのリスクを上げるので、食べ過ぎには注意が必要だ。 5 運動不足を解消する
運動や身体活動をよく行っている人は、がんの発症が少なく、心疾患などの死亡のリスクも低くなるので、死亡全体のリスクも低くなる。身体活動量を保つことは、健康で長生きするための鍵だ。
厚生労働省のガイドラインでは、週に23エクササイズ以上の活発な身体活動(生活活動・運動)を行い、そのうち4エクササイズ以上の活発な運動を行うことを目標としている。
1エクササイズに相当する活発な身体活動とは、生活活動としては、20分の歩行、15分の自転車や子どもとの遊び、10分の階段昇降、7~8分の重い荷物運び、また、運動としては、20分の軽い筋力トレーニング、15分の速歩やゴルフ、10分の軽いジョギングやエアロビクス、7~8分のランニングや水泳などだ。
ほとんど座って仕事をしている人なら、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な身体活動に加えて、週に1回程度は活発な運動(60分程度の早歩きや30分程度のランニングなど)を加えよう。 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「がん」に関するニュース
- 2023年08月07日
- 【がん予防の経済効果】 がんのリスク要因を減らして1兆円超の経済的負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が重要
- 2023年07月31日
- どんな女性が乳がん検診を受けていないかを調査 がん検診の受診率を高めるために何が必要?
- 2023年07月10日
- 活発に体を動かしている高齢者は生活の質が高い 運動・身体活動は老化を遅らせる最適な方法
- 2023年07月05日
-
行政事業レビュー「がん診療連携拠点病院機能強化事業等」
「がんの死亡率減少」と「仕事と治療の両立」が議論の焦点に - 2023年06月26日
- 「高齢社会白書」2023年版を発表 高齢者の社会参加が健康や生きがいを生み出す 各地の取組みも紹介 内閣府
- 2023年06月19日
- 肺がんを検診で早期発見・治療すると生存率と医療費が改善 京都市が市民を対象に調査 肺がんは早期発見がカギ
- 2023年06月12日
- 【子宮頸がん】日本はHPVワクチン接種と検診の実施率が低い 子宮頸がんの罹患率と死亡率がともに増加
- 2023年05月19日
- 令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
- 2023年05月08日
-
「誰一人取り残さない」第4期がん対策推進基本計画が閣議決定
がん検診受診率目標60%、デジタル化の推進 - 2023年04月04日
- 乳がん検診の「マンモグラフィ」は効果がある 革新的なマンモグラフィ検査も開発 女性の負担を軽減