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ウォーキングに住環境も影響 住む場所を選べば糖尿病リスクは低下
2014年07月04日

長時間のデスクワークが毎日続き、週末はどこに移動するのもマイカー、体を動かさない習慣が定着している――こんな人はいないだろうか? 運動不足が毎日続くと、2型糖尿病や肥満のリスクが高まるが、ウォーキングを続けていればリスクを下げられる。そのためには、「環境を整備してウォーキングに取り組みやすくすることも必要」という研究が発表された。
糖尿病を改善するためには車より徒歩
運動不足と住環境、糖尿病発症の関連性をデータで示した研究が発表された。カナダのトロント大学医学部准教授で内分泌専門医のギリアン ブース氏らによるもので、科学誌「プロス ワン」に掲載された。
研究チームは、トロント市在住の市民に協力してもらい、日常生活での移動の手段(徒歩、自転車、車など)と、それぞれの健康状態を10年にわたって調査した。予想通り、ふだんからよく歩いている人は健康を維持しており、肥満や糖尿病を発症する割合が低いことが判明した。
気になるのは、住環境と糖尿病は関連があることが明らかになったことだ。ウォーキングに適した公園や街路の多い地域の住民は、2型糖尿病の発症率が低く、そうでない住民に比べ、10年間の糖尿病発症率が13%低下することが判明した。
ウォーキングに適した地域の住民は、歩くか自転車に乗る頻度が3倍高く、乗用車を使わず公共交通を利用する頻度が2倍高かったという。65歳未満でこの傾向は強かった。
「ウォーキングに適した生活環境が身近にあると、自分の足で歩く頻度が増えます。反対に、移動手段として車に頼っている人ほど、糖尿病や肥満になる確率が高くなります。歩いて10分くらいの距離であれば、車を使わず意識して歩くべきです」と、ブース氏は言う。
ブース氏は2012年に、「それまでよく歩いていた人が車に依存する生活に切り換え、運動不足になると、糖尿病を発症する割合が50%上昇する」という調査結果も発表している。
「健康長寿社会を築くためにも、子供から大人までもっと歩くことを奨励する計画を都市開発に盛り込む必要がある」とまとめている。
ウォーキングに適した地域に住むことが糖尿病対策に
運動不足は、血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性をまねき、筋肉量の減少や、骨粗鬆症の原因になる。運動には心肺機能も高める効果がある。
日本でも「駅の近くに住む暮らし」が人気を集め、「移動はもっぱら車で」という人も少なくない。食料品や日用品の買い物も駅前スーパーで済ませ、オフィスも駅から徒歩数分以内で1日の大半がデスクワーク、おまけに週末はマイカーでショッピングやドライブという生活は、運動不足をまねきやすい。
移動を鉄道などの公共機関を使い、「毎日ひとつ手前の駅で電車を降り」、「努めて歩くようにする」といった生活が、肥満や糖尿病のリスクを低下させる。研究者が勧める住環境の選び方は次の通り――
ウォーキングに適した街の選び方:・ 近所に歩くのに適した大通りや、運動ができるスポーツセンターがある。
・ 商業地に隣接しており、公共の交通機関が発達している。
・ 多くの人が集まれる公園など公共施設が充実している。
・ 住宅と商業施設の線引きがはっきりしており、ウォーキングや自転車用に歩道が整備されている。
・ 職場や学校が歩いていける場所にある。 Studies show more sprawl associated with higher incidence of poor health outcomes(米国糖尿病学会 2014年6月17日)
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